娘から、いきなりLINEがきた。
「墓石がある樹木葬って樹木葬なんかな?」
こんなことを娘に問われたら、樹木葬評論家の私としてはマジに応えなくてはなりませぬ。
「それはエセ樹木葬だ」
なんでもマンションの広告に入っていて、疑問に思ったからだそうだ。「石を木に変えることに意味があるような気がして」。
うんうん。そのとおり。本来の樹木葬とは、そうなんだよ。土に還ることが重要なのであり、墓石はいらない。せいぜい木製名札までである。さらに「森になる」ことが重要なのだが、残念ながらそうした樹木葬墓地は全国にいくつもないのが現状だ。おそらく10数カ所だろう。
そもそも樹木葬とは……と私が解説し始め、本当の樹木葬が見られるところを紹介し出したら、
「とくに樹木葬を見たい訳じゃない」と拒否られてしまった。。。。(泣)。
ま、その後娘とは話題がどんどん変わり、「カードキャプターさくら」のあの終わり方はなんだ!とか、「ポーの一族」を読み返しているとか、「半分、青い。」見ている?とか(笑)。
さて、それで思い出した。我が家にも広告チラシで樹木葬墓地の案内があったことを。
それは生駒に近い大阪なんだけど、国内最大級とか、樹木葬専門墓地とか、千年オリーブの木がシンボルツリーだとか派手な文言が並ぶ。
チラシを読む限り、私の願う・本来の樹木葬墓地とは違うのだけど、ものはためし、見学に行ってみるか、という気持ちになった。どちらかというと千年オリーブの木が見たいというのが動機である。
車で30分もかからないところだった。
田園風景の中に墓石の並ぶ広大な墓地がある。どうも一つのお寺に幾つもの業者が入って、それぞれの墓地を作っているらしい。「墓地公園」というコンセプトなのだ。
なかには「樹木葬さくら」という看板もあって……チラシとは別の業者の「樹木葬」を謳う一角もあるようだ。
ようやくチラシの墓地にたどり着く。なんだか洋風。森どころか緑が少なく、大理石を敷きつめている。しかも、狭い。せいぜい10アール……0,1ヘクタール。これで国内最大級?
ちなみに樹木葬の原点・岩手の知勝院は、いくつかに分かれているが、全体で数十ヘクタールの墓地敷地を持ち、そこに1万人は埋葬できるほどの規模だ。ほかにも、ここより広い樹木葬墓地をたくさん知っている。シンボルツリー方式のところでももっと広いところがある。最大級どころか、中級以下の規模だろう。これだけで誇大広告決定(笑)。
車を止めて見学しようとしたら、いきなり事務所から人が出てきて、私に張りつく。う~ん、少し一人静かに見学させてくれよ。
それでも、彼ら(二人)も仕事なんだから、と思って話を聞く。ただし、私は「千年オリーブ」を見たかったんですよ、とあまり期待させないように事前に伝えた。
それでも、私が歩くとピッタリ着いてくる。しょうがなしに、この墓地の概要を聞くのだが、オリーブ以外の樹木はなくて、むしろ石が目立つ。小さな石板の墓石もあるのだよ。2000柱は収容できるらしい。しかも1カ所に何人か入ることもできる(だいたい3人分の遺骨)。「遺骨を粉にするともっと入る」とか。。。
これで樹木葬なのか……。肝心のオリーブも幹はごついんだが、葉は少ない。ちなみにオリーブはスペイン産で中央部に2カ所3本(1000年と500年2本)あったが、乾燥地帯の樹木だから、みずみずしさは感じない。オリーブの回りの敷地は値段が高い……。
これ、プラントハンターの西畠清順の仕事だろうなあ……と思わせる。彼、こうした木を輸入するのが得意だから。ちなみに、彼の仕事かどうかはともかく、千年オリーブを名乗っている木は、結構日本各地にある。本当に1000年の樹齢があるとは思えないが、スペインは古くからのオリーブの産地で、古木もあるのだろう。
ただ、話の端々から、墓地に対する認識のズレを感じた。「チガウだろ~」と思わず口に出しそうな面があった。
墓地というのは、遺族が亡くなった人と向き合う場として、心地よく過ごせることが重要なのに、それをおろそかにしている。墓地の存在意義がわかっていないようだ。樹木葬に関する知識も弱いよなあ。全然由来も何も知らない。
しかも「管理費不用」を売り物にしているんだが、「墓石の回りに草が生えたら掃除してもらえるんですか」と聞いたら、それはしないというのだ。それって何?いわゆる墓守不用ではないのだ。
それでも「せっかくだから(オリーブの)写真撮らせてください」と行ってカメラを出しかけた。すると「墓地の購入を考えていない方はお断りさせていただいております」だと!
(・・?) エッ。なに、それ。
一気に冷めた。せっかく、このオリーブを宣伝してやろうと思ったのに。そうしたら、オリーブ目当ての客が来て、その中には成約する人も出たかもしれないのに。
不満はあっても、珍しい木を見られる穴場として紹介しようと思っていたが、撮影拒否で、一気にイメージ悪くなったよ( ̄ー ̄)。
せっかくだから、西畠清順さんの別のオリーブの大木の写真を。
某展覧会に出展されたものだ。 この展覧会は、写真撮影お構いなしだった(笑)。
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