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森と林業の本

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2018/06/27

国有林の実質売却計画?

森林経営管理法によって、民有林の皆伐が進む……と警笛を鳴らしてきたが、どうも波は国有林に及びそうだ。

 
国の未来投資会議で、これまで立木販売システムは短年度で行われていたが主だったが、長期・大ロットに広げることになったようだから。それがちょっと桁違いで、面積では4000~4万ヘクタール規模、期間も30年~60年のスパンを考えているらしい。そして年間25万立方メートルの木材生産をできるようにする……。
 
つまり、「民間の素材生産業者が国有林で作業する」というより、大面積の国有林を民間業者が丸ごと借り上げるようなもの。60年間委託して経営させるのなら、もう実質的に国有林ではなくなるように思う。国有林の売却みたいなものか。なんでも、竹中平蔵のアイデアらしい。
 
ある意味、東南アジア各国が伐採業者に伐採権(コンセッション)を売り渡してバンバン伐っていた時代を思い出す。安倍政権は同じように国有財産を叩き売りするつもりらしい。
 
民有林より作業道などの整備が進んでおり、山林も一元化されている国有林は、業者にとっては民有林よりはるかにオイシイ。森林経営管理法による委託なんか手を出すより、こちらに殺到するんじゃないか。
 
これまで官邸種痘の「新たな林政」に唯々諾々と進めてきた林野庁だが、それが国有林に及ばされるとなると、顔が引きつっているのではないか。民有林を伐っても国有林は温存しておく心づもりがぶち壊されたみたい。
 
 
ちょっと歴史を振り返る。
 
明治の初年度に、大蔵省の次官だった井上馨は、国有林の民間払い下げを画策した。大久保利通が岩倉使節団で欧米に言っている間に、幕府や藩の所有していた森林を取り上げてつくったばかりの官有林を、民間に無制限払い下げを行った。しかも買い取った後は何をどうしてもよいというお墨付きで。
 
それは2年後の大久保の帰国と井上の失脚で止まったのだが、どれほどの官有林が売り飛ばされたか。
 
それら約15年後、農商務大臣になった井上馨は、再び官有林の払い下げを画策する。今度は市町村へ移管しようとしたのだ。よほど国が森林を持つ必要はないという信念があったのかも。森林を環境とか国土保全という目ではなく不良財産と見て、さっさと売り飛ばして金に換えることばかり考えていたのである。
これも井上の大臣交代というか、更迭で止まったが、なんか今の政府のやることは井上馨の発想に似ている。
 
明治期のそうした動きは、幸いにして各地の自治体が反対し続けて、最終的には政権交代によって瓦解させた。
太平洋戦争直後でも、民有林は乱伐で荒れていたが、国有林は比較的木材資源も残っていた。それは国有林であったからだろう。ところが戦後は、国有林を自ら大伐採を進めた。
 
 
今度は自らの伐採ではなく、民間委託という形で経営権を譲り渡すことに近い。果たして国有林を守りきれるか……。
真正面から反対できないのなら、取る手は「サボタージュ」だな(笑)。あれこれ問題点を指摘して、足を引っ張り続けて、どうしてもやるには新たな法制度が必要~とかなんとか言って、ひたすら先延ばしにする。そして政権交代するのを待つか。なんか、得意そう。
 
 
 
 
 

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コメント

これですね。http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keiki/171226.html
「ニュース」でも見ましたが金融機関から提言があったようですよ。ヤバイと思います。

60年間も委託されたら、なんでもやりたい放題じゃないですかね。やることとは伐採しかないし。再造林は手抜きで十分……。

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