先日、元林野庁関係者とお会いして多少の意見交換をしたのだが、そこで話題になったのが、クリーンウッド法。
私はザル法と言い切ったのだが、その理由として罰則もなく、そもそも違法木材の取引禁止を謳っていないことを上げた。しかも登録した業者のみに適応するという。わざわざ登録するメリットもないのに……。(法の趣旨は、合法木材の推進である。)
それに関して、「こちらの気持ち」はわかってもらえたものの、「仕方なかった」というのである。
なぜ罰則を付けられなかったか。それは業界から圧力がかかったわけでも、政治家の横車があったわけでもない、らしい。
日本の法体系では、違反と決めつけるまでが大変なのだそうだ。そうすると立証責任が生まれてしまい、とても一件一件輸入する木材の素性を追いかけて違法性を立証できないから。
結果的に努力義務のような、あってもなくても構わない法律になった。
なるほど。だがその理屈は、しょせんは内輪の論理だろう。そんな理屈を厳しい違法木材の取締法を設定した欧米諸国に説明して理解を得られるだろうか。しかも、その理屈を外向きに発表もしていない。
森林経営管理法のように、個人の財産権・所有権の侵害を疑われ憲法違反かと言われる法律を山賊のごとく力業で成立させておきながら、クリーンウッド法はおとなしいお公家さんのようなことを言われても納得できない。
本気で違法木材を取り締まる覚悟があれば、いくらでも手はある。ようはやる気の有無だ。
そんなことを思い出したのは、森林・林業白書を読んでいて、またもや“内輪の論理”があるんだろうなあ、と思ったから。
日本の木材輸入状況を確認していると、いずれも木材量(立方メートル)で表現されている。
丸太、製材、チップ……それぞれの輸入量の増減が示されている。これ、金額的にはいくらになるんだろう、と思って読んでいくのだが、全然金額は登場しない。金額は貿易統計などに任せているのかな? と思うが納得いかない。
次は、木材輸出の状況だ。こちらは……いずれも金額ベースなのである!
今度は、木材量の数字はないか探す。ない。これでは、国産材何万立方メートルを海外に送ったのかわからない。木材生産量全体の何割が輸出なのかもわからない。各品目の単価も概算できない。
なぜ輸入は材積で、輸出は金額なのか。理解できない。
もしかして、輸出が増えた、これぞ日本林業の復活の気運!と煽りたいのに材積を示したら、そのしょぼさがばれるからでとないか? まあ、金額にしても326億円なんて貿易の中では木屑みたいなもんだが。
おそらく、それぞれの単位を変えたのは何がしかの“内輪の論理”があるのだろう。「ウォーリーを探せ」みたいに、各省庁の発表している白書や統計の中から該当する数字を見つけてご覧、とでもいうのだろうか。
本気で情報発信するつもりなら、単位を揃えるのは常識というか最低限の義務だ。白書を発表しておきながら、日本の林業事情の本質を読み取られては困ると言わんばかりの不遜な態度である。
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