シカの食性について調べたことがある。
シカは草食性であるのは間違いないが、具体的には何を食べるのか。一般には草や樹木の葉だろうが、ときに枝や樹皮まで齧ることがある。
奈良公園のシカの場合は、芝が主食らしい。もちろん草木も食べるのだが、圧倒的に芝が多いのだ。鹿せんべいの材料は小麦粉と米ぬかだが、穀類も食べていることになる。ただし生米は食べると危険だとか。腹の中で膨らんで死ぬこともあるらしい。
ただ、外国ではシカが生きた小鳥をくわえて飲み込んだとか、動物の死骸の骨を齧っていたという記録もあって、完全な草食性なのか疑いたくなる。これはちゃんと画像・動画がネット上にあるから、検索して探してみたほしい。
その点をYahoo!ニュースで記事にしたこともある。
さて、もったいをつけるようだが、私が先日見かけたのは、こんなシカ。
若草山である。今は一面草が繁りだしていて、シカにとっては周囲が全部食べ物状態。人が近づいても、全然気にすることなくムシャムシャ食べ続けている。
ただ、そこで気付いたのだ。このシカの食べている草の中に、シダが混じっているぞ。
シダは植物ではあるが、通常シカは食べないとされている。不味いのだろう。その点、アセビやナギ、ナンキンハゼ……といった、奈良公園でもシカが食べない植物の一つである。
だが、明らかに食べていた。ほかに食べる草がないのなら仕方ないとも言えるが、この季節、さまざまな草が伸び盛りなのに? シダばかり食べるわけではないが、たまに口の中に入っているのを目にしたのである。
シカの食性は融通無碍……。
そして、もっとすごいものを目撃してしまった。
これ、若草山山頂のカップル。セーラー服姿なんだから高校生……と思いかけたが、どうも違う。外国人のよう。つまり、この二人(正確には彼女だけ)は、コスプレとしてセーラー服を着ているのだ!
いや、それがスゴイんじゃなくて、私が驚いたのは、彼らの荷物であるバックをシカが堂々と物色していることであった。。。なかにお菓子でも入っているのだろうか。あるいはバックそのものを狙っているのだろうか。
しかし、カップルが呆然として手を出せないのが見ていて笑えた(⌒ー⌒)。
サイドバーに本書を掲載しました。
こんにちは。本日、yahooニュースの「奈良の鹿、慢性的に栄養失調?」を拝読しました。
偉そうにすみません。概ね間違ってはいないんですが、
・鹿の体重
・アセビを食べる
・妊娠鹿は出産のため保護されている
この三点が気になりました。
奈良公園のオス鹿の体重が30kgというのは、かなり若い場合です。本当の成獣であれば今でも70kg級が珍しくありません。50kgは、ホンシュウジカ成獣のメスの体重です。ただ、昔はいた100kg超えのオスが減った事は確かです。
猛毒の馬酔木は流石に食べていないように思います。公園の随所にありますが、食べられた跡も見たことがありません。
妊娠鹿は、出産後に気が荒くなり観光客を攻撃(故意・偶然を問わず子鹿に人間が近づくため)することがあるため、鹿苑で出産させています。保護されているのは人間の方なんですよ。
奈良の鹿愛護会にお問い合わせになれば、詳しく教えて下さると思います。
投稿: 奈良在住 | 2018/07/04 19:54
Yahoo!ニュースの記事に関しては、別の項目にコメントしていただけた方がよいのですが……。
鹿の体重は平均値です。もちろん大型の70㎏超えの大物もいます。
アセビもナンキンハゼも食べられています。毒性を分解するバクテリアが鹿の胃内にいる、という研究結果も出ています。
妊娠鹿の扱い、および理由に関しては本書に詳しく書いています。
本記事、そして『鹿と日本人』は、愛護会はもちろん、鹿の研究者など幅広く取材し、また論文も読み込んだ上で書いています。
ご心配なさらぬよう。
投稿: 田中淳夫 | 2018/07/04 21:34