西日本大水害(と名付けられたのかどうか……)が発生している5日から7日にかけて、私は風邪で臥せっていたわけだが、ふと気になるニュース。伊勢新聞に掲載されている。
5日に三重県で開かれたという三重、奈良、和歌山の3県知事による紀伊半島知事会議である。
会議では、災害対応などについて議論したという。この場合の災害とは、主に平成23年の紀伊半島大水害に関するもののようだが、まさかこの会議が始まった日からの雨が大災害を引き起こすとはタイムリーといっては不謹慎だが、ズバリ議題が的中したとも言えるかもしれない。幸い、今回は紀伊半島では大きな被害につながっていないようだが……。
私が目を止めたのは、
会議では、奈良県が導入を検討中の「恒続林」について、3県で情報共有を進めることで合意。恒続林は防災などを目的に、針葉樹と広葉樹を混交させて木材を生産する森林。仁坂知事も針葉樹の環境林に広葉樹を混交させるための間伐を進めていると紹介した。
こんな会議の場に「恒続林」という言葉が登場していることに、目を見はったのである。
この記事の説明ではわかりづらいが、恒続林とは、まず字のとおり、常に森林である状態が継続することが大前提だ。伐採して木がない状態にはしない、という意味だ。
その上で木材生産も、防災にも最大限の力を発揮させるとするもの。さらに生物多様性やレクリエーションも賄える森だ。基本は針広混交林で、択伐施業をしつつ、更新する。当然、皆伐はしない。
これまで恒続林という概念は、学術的な場面で登場することはあったが、政策面で使われることはなかったと思う。奈良県はスイス林業を取り入れた研修を行っているから、そこでスイス林業を説明する言葉として恒続林という言葉は使っていたが、明確な政策方針として掲げるのは初めてではないだろうか。
奈良県の計画は、こんな具合。(ホームページより)
この中では、めざす林型として「恒続林」のほか「適正人工林」「自然林」「天然林」がある。適正人工林は、スギ・ヒノキが健全に育っている人工林。自然林は適正里山林・雑木林と言い換えてもいいかもしれない。天然林は、完全に手を入れず保護する森。ここまでは従来の森林分類でも収まるが、これらに加えて「恒続林」が入ったのだ。
目標林型に恒続林があることは、日本の林政史上、稀な事例だろう。
記事はさらりと流しているが、記憶に留めておいてほしい。
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この記事に感激します。
数十年に一度という大水害を目の当たりにし、数十年が数年に一度に変わっていく予感を持ちながら、嬉しいこの記事をしっかり記憶にとどめます。
投稿: 後藤恒男 | 2018/07/08 22:21
そう感じていただい幸いです。
災害を目にして、目先の砂防だ治山だと山と川をコンクリートで固める対策ばかりに走りがちですが、数十年先を読んで、災害の起こりにくい森づくりを掲げるのも大事かと思います。
投稿: 田中淳夫 | 2018/07/09 09:18