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森と林業の本

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2018/07/09

東京の木で家を造る会が解散

協同組合東京の木で家を造る会が、6月末をもって解散したという。
 
この会は、東京西多摩の木材で家造りをすることで、林業を活性化し、都市環境の保全に役立つことを目的として設立された。一時期ちょっとした全国的に広がった「顔の見える家づくり」や「近くの木で家をつくる運動」の先駆けである。
 
そんな会が解散したのである。結成は平成8年とあるから、かれこれ20年以上続いていたことになる。
 
なぜ、解散するのか説明はない。ホームページには、「諸般の事情により6月末日を持ちまして協同組合を解散いたしました。」と記してあるのみだ。「突然の解散でご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げる次第でございます。」ともあるから、本当に突然なのだろう。前々から計画的に進めていた解散ではなさそうである。ちょっと不親切。
 
 
私は、この会も含めて、同じような「顔の見える家づくり」を行っているグループをいくつか取材したことがある。その理念や方法はシンプルで、林業家、製材所、建築家、工務店、そして建主が、 おたがいに顔の見える関係で家造りに取り組むというものだ。“川上”と“川下”を結び、産直方式で家を造る……とも表現されている。
 
これによって国産材の需要を増やすことが目的だった。建主も家の材料となる木の素性を知ることができることを売り物にした。そして、たいてい音頭を取っているのは建築家であった。
 
 
そして、私は「上手く行かないだろうな」という結論を抱いた。
すべてではないが、林業に寄与したいという割には、「買いつける木材の値段はどうやって決めるんですか」という私の質問に、建築家は「時価」と応えたからだ。つまり木材市場価格を参考に、というのだ。
市場価格を参考に、その1割増2割増にする、というならわかるが、市場価格と同程度とは何?と思ったのである。それでは林業家は何も得るものがない。フツーに市場に出せばいいことになってしまう。
 
建築家や工務店は、このシステムで「木が生えている山にも見学に行けますよ」と営業活動に使っている。しかし、ほかの参加者に目立った利益はない。
建主にしても、この会の建築家の設計しか選べないのでは、相性が合わないかもしれない。
もっとも建築家を複数そろえた会の場合、受注に差がつくと、仕事が取れない建築家は不満を持って会から離れてしまうのだが。
 
案の定、数年で多くの会が解散もしくは休業状態になった。多くは疑心暗鬼になって仲間割れである。続いているのは、木材価格を上乗せして林業家に配分している会だけである。東京の会は20年以上続いたのだから、それなりの仕組みはあったのかもしれないが。
 
利益配分というもっとも基本的なところをないがしろにしては意味がない。
 
今回の解散で、私は一つの建築システムの終わりを感じたのであった。
 

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