台風がやってくる今晩、『小笠原が救った鳥』(有川美紀子著 緑風出版)を手に取った。
珍しく書店で見かけて即買いだった。
なぜなら内容が「小笠原諸島のノネコが、海鳥や天然記念物のアカガシラカラスバトを食べて絶滅へと追い込んでいるので、ノネコを捕獲して守った成功例」だと知ったから。
小笠原諸島は、私が学生時代に通った島であり、母島でアカガシラカラスバトも目撃している。同時にノネコが増えていることも気付いていて、ノネコの死骸(ほとんと骨化していた)も発見した。私はそれにオガサワラノラネコと名付けたりもした……。(もちろんイリオモテヤマネコの洒落)
ただ当時はアカガシラカラスバトよりも、すでに絶滅したオガサワラカラスバトに興味があったし、アカガシラは、そんなに珍しくないように思えたのである。それに我々は、オガサワラオオコウモリを観察することをテーマにしていた。洞窟調査の片手間だから、何も成果は生まなかったが……。
時代が流れて、アカガシラがわずか40羽ぐらいまでに減り、ノネコ害がハンパなくなっていたとは。そして小笠原諸島あげてノネコ捕獲に乗り出し、かなりの成果を上げたというのは驚きである。しかも捕獲した800匹近いノネコは殺処分するのではなく、全部東京に送って里親探しをしているのだそうである。
今ではアカガシラカラスバトも数百羽まで増えて街角でも見かけるそうだ。(もっとも、これは父島であり、母島はまだ部分的にしか行っていないそうである。)
ノネコ捕獲は沖縄のヤンバルでも課題となっているが、なかなか進まないと聞いている。その理由はいろいろあるが、逆に小笠原で上手くできた理由は、やはり規模が小さいこと、そして住民の多くが公務員と移民であること、年齢も若いこと……などだろう。また新住民の多くは自然を仕事にしている(ダイビング、ネイチャーガイドなど)こともあるかもしれない。
とはいえ、“外来種”であるノネコ駆除に大きな成果を上げた事例としては出色である。この点は、本の最後に「ネコは外来種ではない」という論が出てくるのであるが……。
著者は、小笠原諸島に30年来通い続けて母島に住んでいたこともあるそうで、関係者とは懇意で密着取材している。ただ本書を読んでいると、すべての計画がとんとん拍子に進んだかのように思えて、ちょっと違和感を覚えた。
民間NPOで手がけた取組が,あっと言う間に東京都(支庁)はもちろん、環境省も文化庁も林野庁も巻き込んで協力的に推移して行くのである……。信じられない(笑)。
そのほか、本書から連想して幾つものことを考えた。それについては改めて。
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