福岡県篠栗町にある九州大学の演習林が人気を集めているようだ。正確には、その中の一角、「篠栗九大の森」だが。観光客が押し寄せて、マナー違反やルール違反が目立って森を荒らす元になるほどだという。。。
なぜ人気を呼んだかというと、インスタグラムで紹介された森の風景が美しかったから。いわゆる「インスタ映えする」ということらしい。
「まるでジブリ」なんだそうだ。おかげで観光バスまで来るというのだから……。
具体的には、森の中のラクウショウが池の水面から生えている風景だそうだ。
ラクウショウは別名沼杉で、水に強い。気根を出すので、水没しても元気という種だ。湿地帯に生える針葉樹という面白さもあるし、幹の周りにニョキニョキと地面から盛り上がってくる気根が不思議な光景をつくる。
ただ植物園などではわりと植えられていて珍しい木ではない。
それがインスタなどSNSで紹介されることで、我も我もと見たがる人が現れたということだ。、結局、ヴィジュアルに反応したのすぎないのだろう。ラクウショウという植物に興味を持ったわけでもなんでもない。写真の裏にあるラクウショウの特徴・魅力なんかどうでもよいのだ。
そこで思い出したのは、先日の朝日新聞のオピニオンページ。
「ネット言論」を3人が論じているのだが、その内容に興味のある人は改めて読んでいただきたい。WEBRONZAの延長であるから、ネットにも転載されているだろう。ここでは、3人の記事のタイトルだけ読んでおいてほしい。
私が興味を持ったのは、このうち香山リカの話の一部。
そう、SNSでは理屈やデータより「一枚の写真」なのである。タイトルも一瞬で目に入ることから、一種の画像だろう。
私も最近はネット言論に参加している身なので、気になるところである。いかなる理論を読みやすく、理解しやすく、工夫して書いても、実はたいしてアクセス数に反映されない。誤読も多い。というか、そもそも本文を読まずにタイトルや画像だけで内容を判断する読者?が多いというのは、日々感じている。
だからYahoo!ニュースでも、トップ写真のあるなしでアクセス数が変わる。タイトルの付け方でも変わる。とにかく読んでもらうための写真を選び、タイトルも気を引く言葉を探す。しかしこれは、内心忸怩たる思いなのだ。もっとも力を入れているのは本文なのに。
だから、たまにタイトルと内容が合わない記事をわざと書いている(^O^)のだが、それに気付いている人はどれだけいるかな。
また両論併記もあまりしない。というか、旗色鮮明が基本姿勢である。流言にはツッコムが、ていねいではない。勝手に誤読させてやろう、という気持ち。
ともあれ、頭を使わず、一瞬で目に飛び込んでくる情報だけが第一の時代になってしまった。なんとかファーストとか言うのが流行語だが、セカンドはない。
しかし、それによって生じる感情と振る舞いにはご用心。
<トップ写真のあるなしでアクセス数が変わる。
<タイトルの付け方でも変わる。
<忸怩たる思いなのだ。もっとも力を入れているのは本文な
のに。
書き手が読者の反応に敏感に且つ、著者の思いと違う反応に恨めしく思うお気持ちがよく理解出来ました。
古くは大宅壮一がテレビを見ることで白痴化すると喝破しまし
たが、文字情報よりも、画像情報の方が物理的な情報量が
多い事実と、そこで得られる情報からの思考力と如何つなが
るのか。
情報洪水の中では、1/1000あるいは1/1万の気に入った情報を瞬時に拾うのだとすれば、新たな情報操作の達人が現れるのかもしれません。恐ろしいことです。
投稿: 仁藤浪 | 2018/08/27 13:17
ある意味、諦めています。この傾向はずっと変わらないだろうと。
ちゃんと本文読んで、こちらの言いたいことを理解してよ、と書いているこのエントリー自体にも、トンチンカンな反応が出ています(笑)。
ネトウヨ系の理解力なんて、その程度なのでしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2018/08/27 16:36