「木のルネサンス」(熊崎実著・エネルギーフォーラム刊)を読んでいると、ちょっと面白いイギリスの施策が紹介されていた。
まあ、この本には、日本のバイオマス発電がいかにダメダメかを詳しく書いているのだが、成功例とされがちなドイツでもバイオマスでも問題は山積みだそうだ。
とくつに問題は、FIT(固定価格買取制度)だ。バイオマスなど再生可能エネルギーとされたもので発電された電気料金を固定価格、つまり事前に定めた高い金額で買い取ってくれる制度で、日本はその制度の不備だらけのため、バイオマス発電が森林を破壊し、さらに海外から石油を使って輸入するバイオマス燃料を高く買い取る有り様だ。
日本の場合、未利用材から一般木材、建築廃材まで区分けするという世界に類を見ない大馬鹿な方法を取ったが、これは一部の業界に金を回す裏施策だったのだろう。
そもそもバイオマスエネルギーのうち電気に変えられるのは1~2割なんだから、そこにFITを当てはめたのが間違いなのである。8割方、熱としてエネルギーは放出されるのだから。
で、イギリスが考えたのが「熱のFIT」のような再生可能な熱の生産コストと化石燃料の差額を政府の補助金で埋める政策。これをRHIというそうだ。2011年にスタートした。
電気料金に上乗せするのではなく補助金なのだが、熱利用を進める方が意味があるのはたしかだ。実際、イギリスではバイオマス熱の利用が一気に拡大したそうである。
ま、その結果、補助金の底はついて、痛い目にあったそうだが……。ちょうど石油の値段が下がって、差額が大きくなりすぎたのである。
何をやっても、バイオマスエネルギーは上手くいかないというわけだ。それでも電気のFITよりは熱のFITの方が意味あるように思える……。
それでも熱を固定価格にした方がよかったような気がする。発熱なら小型ボイラー中心になって、大規模な燃料木材の調達に走ることはないからだ。しかも熱が届く範囲という地域経済に金が回るのである。
はじめまして。バイオマス問題初心者です。教えていただきたいのですが、
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日本の場合、未利用材から一般木材、建築廃材まで区分けするという世界に類を見ない大馬鹿な方法を取ったが、これは一部の業界に金を回す裏施策だったのだろう。
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とはどのような意味でしょうか。詳しく知りたいです。ご教示のほどよろしくお願い致します。
投稿: うめ | 2018/08/09 09:56
バイオマス燃料の出自によって固定価格に差をつけています。
山に残された木を未利用材としてもっとも高い価格を付けていますが、おかげで燃やすためにわざわざ木を伐って運び出すことが行われます。また価格が安いはずの産廃を「未利用材」だと言えば、高い価格に化けます。
ようは不正の温床です。
まあ、詳しく説明したサイトもありますので、調べてください。
投稿: 田中淳夫 | 2018/08/09 23:42
おはよう御座います。俗に言う、バイオマスロンダリングですね。
地元にも噂のある業者が居ますが、不正行為以上に国民の血税を騙し取る行為です。
国民の敵!万死に値すると私は思いますよ。
投稿: 山のオヤジ | 2018/08/10 07:25
バイオマス発電は、最初の理念から離れたものになっていますね。そもそも未利用材の価格は、業者が望んでいないほど高すぎる価格に設定したのは、最初から金の横流しを狙っていたようにしか思えません。
投稿: 田中淳夫 | 2018/08/10 09:12