ミスの次は酒だ……というわけではないが、久しぶりに行きつけのバーへ。
週末なのに雨が降っていたからか客は少なく、私が入ってすぐに彼らも席を立つ。私は疫病神か(泣)。
ともあれ、ゆっくりとバーにぶら下がることができた。 実はコンサート帰りで、なかなか幸福な気分に浸っていたのだ。
カウンターの真正面。このボトル群を眺めつつ、その中身を想像するのが好きなのだが、ふと気づいたのは、ジャパニーズウイスキーが増えていること。
それなりに棚にも流行はあって、かつてはバーボンが多かったりスコッチが目立ったりしたのだが、今はジャパニーズウイスキーがキテる。
バーテンダーと話しても、次々と各地に新たな醸造所が立ち上がっているようだ。そして品質がなかなかよいのである。世界的な賞も毎年取っているし、世界的ブームと言っても過言ではないだろう。その代わり、原酒のストックがヤバいらしい……。
若い頃、酒蔵の取材をよくやっていて、それは日本酒だけでなく洋酒やビールメーカーも含むのだが、ジャパニーズウイスキーの評判は芳しくなかった。実際、あの醸造所にはサツマイモを積んだトラックが出入りしていたという噂もあって、イモをどうするのかと思えばカラメルを作るのだそうである。それでウイスキーの色を付けているのだ、とまことしやかに語られていたこともある。
が、現在のブームはそんなまがい物ではなく、数十年の精進が稔ったのだろう。
そこで面白いのは、日本の風土はウイスキーが熟成しやすいとのこと。原酒は最低5年は樽で熟成させないといけないし、シングルモルトを売り物にするなら、さらに長い年月がかかる。
ところが、日本の湿潤温暖な風土は、スコットランドを始めとするヨーロッパより熟成が早く進むのだそう。その分、「天使の分け前」も多くて、早く蒸発して減ってしまうのだが、3年5年の若い原酒でも、意外とヨーロッパ産に対抗できる……らしい。
そうはいっても、将来売れるかどうかわからないまま、5年先10年先の売れ行きを読んで生産しなけれはならないのは大変である。その間の経営は、副業も含めて支えねばならない。だがジャパニーズウイスキーメーカーはそれをやり切って、今の興隆があるわけだ。
……ふと、日本の樹木も熟成というか生長は早いのではないか、と思いついた。ヨーロッパより短い伐期がそれを物語っている。
ただ5年10年先を読むどころか、目先の利益に走っているのだから、いつまでたってもジャパニーズウッドにブームは来ないわな。と酔った頭で考えて苦笑したのであった。
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