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森と林業と田舎の本

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2018/11/15

薄利多売、赤字多売の林業

先日、林野庁およびOBなど関係者と簡単に話をする機会があった。

 
そこで私が振った話題が「近頃は薄利多売の林業になっている」という点だ。ようするに単位当たりの利益が薄くなって、それを量でカバーする林業。当然、私は批判的に述べたのだが……。
 
なんと、彼らは肯定的に捉えていることに気づいた(゚д゚)。
 
そして“質の悪い木材”は、施業(生産)を低コストにして利益を確保し、量を出荷するのが最善の方法だという。 
 
バカなのか? 
 
そもそも「薄利多売」の経済学的な条件をわかっているのか。
 
まず多売するほどの商品量が確保できること。工場生産なら稼働日数を上げるとか、残業を増やすとか、生産効率を上げ生産期間を短くするという手もある。そこにはスケールメリットの論理も入ってくる。同じものの大量生産は効率を上げ、コスト削減になるという論理だ。
ただし、原材料を確保できるという前提が必要になってくる。原材料がなくては商品も作れないし、仕入れも大量に行うことで安くする=コストを下げる。
 
次に、多売できるほど需要があること。薄利、つまり安いものが大量に売れることで利益を増やすのだ。売れないと、薄利少売、いや赤字だろう。そのために安くすると売れる商品でないとできない。
 
 
さて、これを林業に当てはめると、大量生産というのは単に伐採量を増やすことではない。原材料の生産、つまり植林から始める育成も多くなくてはならない。だが、樹木の生産、つまり生長は長くかかるため何十年も前からの準備が必要だ。成長速度を人間が早めることはできない。結果的に大面積を確保するしかないのだが、それでも50年以上という期間を短縮するのは不可能だ。
早生樹植林とか林地施肥なんて考える人もいるが、基本的に失敗例ばかり。あえて言えば伐期を短くして細い木を収穫し、それを集成技術で使えるようにする……という方法があるのだが、これも加工コストが上がってしまう。
 
さらに木材生産の低コスト化のために機械化推進というのは矛盾していることに気づいていない。機械化は高コスト化なのだ。機械を使えば人件費を圧縮できる現場だったら一時的に低コスト化できたように見えるが、それも一過性。作業面積を延々と増やしていかねば機械の稼働率が落ちてコスト高になる。
つまり林業の場合、機械の価格とランニングコストは人件費より高くつく。ましてや人員そのものも削減するのは至難の業だ。機械化で伐採量を増やしてもかさばるものの処理には人手が多くいる現実がある。結果的にコスト増を招いている例が多い。
にもかかわらず低コストを無理やり進めれば、林地を傷めたり施業技術を失って将来の生産に悪影響を与えるだろう。工場でもコスト削減した結果、故障が続発するようなものだ。
 
そして需要はどうか。これも縮み続けている。木材消費量は基本的に右肩下がりなのだ。それを増やすために取っているのがバイオマス発電の燃料なんだが、これは完全に捨て値販売だ。鳴り物入りで仕掛けたCLTも全然売れていない。ここで薄利多売ではなく多売薄利(多く売っても利益は少ない)いや赤字多売(売れば売るほど赤字)を余儀なくされている。
 
 
こうした林業の経済構造を、彼らは理解していないらしい。目先の(自分たちが管轄する)林業家(山主ではなく素材生産業者=伐採業者)が儲かるだけなのだ。その陰で赤字に沈む人々が数多くいるのに。それを「薄利多売の林業がよい」と思っているのは度し難い。
また設備などのコストは補助金で補うという発想だが、これは日本の財政にとって赤字。つまり林業界のごく一部を設けさせるために、日本という国を売り飛ばしているようなものだ。
 
税金を投入してつくる需要は、しょせん一過性の色物だ。公共施設に木材を使うことを強いるのも反則だろう。量的には2割に達しないから民需なくして真の需要とならない。
さらに商品価値を落とす需要も赤字の元だ。バイオマス燃料が典型だろう。それは商品自体のブランドイメージを落とし、将来のじり貧につながる。
 
薄利多売のビジネスモデルは、どんな業界でもリスクを伴うのだが、林業は、とくに向いていない業界だ。もう少し、頭を使ってくれ。

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コメント

30年ぐらい前から、人工林の間伐問題が表面化した時から林業に対し関心を持ってきました。
しかし、当の昔にその関心はなくなりました。もはや林業に対し諦めたというのが今の気持ちです。
海に囲まれれ恵まれた漁業、山ばかりで雨量が多く自然に恵まれた林業、これらがこの国の基幹産業になるのが当然なのですが、どういうことなのか頭が悪いためにそれらはもはや産業として成り立たなくなりつつあります。
林業関係のブログで閲覧しているのは今はこのブログのみでしょう。とうの昔に林野庁や地方自治体関係などは見向きもしなくなりました。
国が駄目になるのは理由があるということが良く分かる昨今です。
このブログの通りです。今さら意見はありませんが、荒廃した国土を知った時にどの様な気持ちになるのか、また以前と同じように知らされていなかったとか騙されたとか責任転嫁をするのかもしれません。

林業に思い入れが強い人ほど絶望するんじゃないですか(ーー)。
それも業界ぐるみですから、一部をいじっても逆に齟齬が出るだけで事態が余計にややこしくなる。
そのせいか、たとえ改革の処方箋を示しても、見事に実行しないのが習い性になったようです。

高性能林業機械も外国を真似しただけですもんね。平で面積のある森ならコストを大幅にカット出来るでしょうが、日本じゃまず無理ですよ。まず機械が森には入れない。入るために林道作っても細いから機械が活躍出来ない。結局人力が一番ってなるんです。

誰か人形伐採ロボット作ってくれないかなー

人形伐採ロボットって……なんか怖い。
 
林業用アシストスーツが、もうすぐ実用化するんではないかな。

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