先日、娘が帰省したので『パパ活』をやった。パパの活力増進運動(^_^) である。
で、私としてはいただいた活力を発揮しようと娘に何がしたい?と聞いたら「カニが食べたい」との答。ならば、とカニが食べられる店を探したのだが……ズワイガニの解禁日は大方11月6日だった(つまり、今日だ)ので、今手に入るのは店でも冷凍ものになってしまう……そんなわけで、料理店に行かずにスーパーで買ってきた冷凍カニで鍋をしたのだった。
冷凍なのは、よい。というか仕方ない。が、そもそもカニはいつ、どこで食べても密漁品なんじゃないか、と思わせられたのが、この本である。
『サカナとヤクザ』(鈴木智彦著 小学館刊)
日本の漁業がどーにもならなくなっているのは感じていた。スーパーに行けば、やけに小さなホッケの干物が並ぶし、サケもサバも多くのサカナが外国産だし。水揚げが落ちているとか、従事者が激減したとか、資源が枯渇しかけているとか。が、その裏にヤクザが絡みつきグダグダの関係が築かれているとは思わなかった。
本書で描かれているのは、主に三陸地方のアワビに始まり、北海道のナマコ、九州~台湾~香港のウナギ密輸シンジケートだが、その間に暴力団に支配されていた銚子の街や、北方領土を含んだカニやウニ、サケなどの分捕り合いの歴史的な事情も詳述されている。
ま、その具体的な様子は本書に目を通していただきたいが、すさまじいの一言である。禁漁期間や禁漁区域、量制限など、まったく無意味とも言える密漁の常態化。そして産地偽装のオンパレード。もはやカニやアワビの過半は密漁品だろうという。ウナギにいたっては、シラスウナギの段階で大半が怪しい。いくら国内で丁寧に養殖しても(丁寧じゃない養殖が大半だが)、すでに薄汚れている。
しかも、これがヤクザのせいとばかり言えないのだ。密漁に加担しているのは、漁師や漁協、市場、水産会社、そして水産庁も含まれるからだ。そして、それらの連鎖の最後に連なるのが消費者だ。出所がなんであろうと喜んで食っているのだから。
「おわりに」にある文章をいくつか引用すると、
「漁業をちょっと取材するだけで、密漁や産地偽装などの諸問題がごろごろ出てくる。叩けば埃どころではない。こびりついた垢に近い」
「その前に魚がいれば全部獲るのが漁師の本能だ」
「ほとんどの人間は水産物を金としか思っておらず」
「漁獲高が右肩下がりで落ち込んでいるのは、先進国の中で日本だけだ」
「日本の漁業を知れば知るほど、密漁など大した問題ではないと思えてくる」
きりがないが、東京オリンピックで提供できる食(水産物)が、国際基準ではほとんどないので、独自のゆるゆる基準を設けた(しかも審査するのが水産庁の外郭団体)……という下りで、思わず笑ってしまった。
それって、木材とまったく同じ!
そう、国際的な森林認証から逃げるように独自の穴だらけ基準を設けたのだから。
林業・木材産業界と、まったく絶望的な状況まで同じだ。業界内でつるんでいることも、規制破りも、産地偽装も、みんな重なる。私は常日頃から「絶望の日本林業」と口にしているが、実は「絶望の日本漁業」でもあったのだ。
幸か不幸か、現在の日本の林業で一攫千金を狙えるほどの高価格の商品はない。木材価格は落ち続けているし、銘木の需要も激減した。だからヤクザが付け入る隙はない……かと思えば、そうでもない。何しろ補助金という名の打ち出の小槌がある。とくにバイオマス発電は、極めて危険だろう。私のところにもたらされる情報だけでも、えぐい非合法行為と、合法的補助金詐取が蔓延している。
結びに「これこそが日本の食文化なのだ」という言葉があるが、「これこそが日本の木の文化なのだ」と言い換えてもいいんじゃないか。
コメント