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2018/12/16

二条通りの木の格子

京都二条通りを歩くと、古い町家が点在している。点在、というところが今風なのだが……。

 
そこで私の目に止まったのが、木製の格子だ。多くの家の通りに面した窓や戸に格子が入っている。つまり細い木材を檻のように並べて作られた仕切りの意匠である。
 
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なかでも気になったのが、これ。 
 
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なぜか、って? アップするとわかる。
 
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どうだ。この格子の材料は丸太なのである。ほかのはみんな角材だったが、これはと直径1~2センチの丸いまま。皮を剥いて磨いたものだ。
これこそ、銭丸太か。以前は、奈良の今井町で見かけたが、京都にもあったか。
 
吉野なら、植林後5~7年生で採取される間伐材だ。もちろん切り捨てずに商品化してわりと高い価格で売れたはず。今は、この太さで出荷される木は少ないだろうけど、江戸時代から明治・大正当たりはよい商品だった。もう少し太くなると、垂木などの海布丸太として化粧材になる。
 
私は、この銭丸太を今また流行りの素材にできないかと思っている。丸太のままだから加工は手間がかからないし、廃棄物も樹皮しか出ない。製材しないゆえ強度も保てる。だから丸さを活かしたデザインを考えてくれないかと。ある程度、大量生産も可能であることも条件。
 
これを売れるようにしたら、初期の間伐材を切り捨てにせずに収入源に変えられると睨んでいるのだけどな。
 
 

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木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

表皮の下は伐られる前まで水分と栄養分が行き交う層なので
皮付きの意匠で用いられる数寄屋建築以外では使わない、
いや、可能な限り使わないのが建築の世界では常識です。
仕上がった部材の、硬度、変色、腐りやすい、縮み幅が大きい等のネガティブな要素を抱える事になりますからね。
先の数寄屋建築での皮付丸太など、後に虫が食わないように
事前に防虫材を含侵させている場合が多いです。
一見、自然感満載の意匠の裏には、自然の営みを人間目線のみの勝手な思惑で支配しようという思い上がりが含まれている訳ですね。

おや、そうですか。しかし磨き丸太を始めとして、皮を剥いた丸太を使った建築や木工は珍しくないと思うのですが。むしろ角材に製材すれば繊維の断裂を起こして強度的には弱まるのが普通です。
何より、乾燥等の技術で不都合な部分は克服するのがイノベーションですよ。

初期の間伐材を切り捨てにせずに収入減に変えるためには、単に木材の用途を開発するだけでは十分ではないと考えています。柱材にとれる木材であっても単価が安い現在、それ以下の細い材に高い価格が付くことは考えられません。
間伐材を切り捨てずに収入減に変えるためには、木材利用の歩留まりを高めることと、林業での副業で付加価値をつける工夫が必要と考えます。小径材まで利用できるようにすることと、木材価格以外の付加価値を林業地に落とせるようにすることです。
もはや木材だけを売って林業を成り立たせるのは困難な時代です。

たしかに価格が安ければ話になりませんね。
その点からも、林業家は単なる小径木として売ったら意味がない。ただデザイン的には面白いので、高く売る方法はあるはずです。皮を剥いて磨き丸太にするのも手だけど、やはり銭丸太の使い方の見本も示して、直接ユーザーを見つける努力が欠かせない。
これを林家だけで全部するのは難しいだろうな。販売に協力する(そして利益を適正配分する)協力者が必要です。

銭丸太とは違いますが、合板製造時にこのような形状のものができるのではないでしょうか?
丸太をかつら剥きにした時に残った芯材です。実際には捨てられているのでしょうか?

たしかに最近のベニヤ板をつくるロータリーレースでは、最後の芯は数センチまで剥けるそうですね。あれはどうしているのか。たいていチップでしょうが、小径丸棒になりますね。
その利用を模索するのもよいかと思います。ただ、それでは初期間伐材の用途が狭まる(^^;)。

磨き丸太など、いわゆる化粧材という「見てくれ」の要素を務める部分に持ちいるのみが実際ですからね
だから「そういう要素」が構造の強度などより美観として求められる数寄屋建築を持ち出した訳です。

なのでそのような、そもそも軟弱かつ、寸法的にも狂いを生じ易い白太、特に皮下直ぐの辺材がそのままのような木材に
強度を云々を持ち出すのは、いささかい無理が有る話の様に思います。
間伐材には間伐材に担った役を負わせるべきであり、
さすがにそこに強度、特に建築の構造に関わるようなものは求めるべきでは無いという事です。
やはりどこまで行っても、あくまで「みてくれ」界隈に落ち着くべきの存在であり、乾燥ごときの小手先で「ああすりゃこうなる」といかないところが、人間が創り出した鉄骨等の建材と違い、
そのような人間のエゴ等の思い通りに行かない自然に対し、尊厳が生まれるのでは無いでしょうかね。

また、「繊維の断裂」とありますが
それこそが丸太材特有に「自然勝手」に起きる現象ですね。
床柱を始めとして、店舗インテリアに用いられるような2寸径の杉磨き丸太でも、大抵がもれなく“背割り”と呼ばれる鋸による「割り」が元から末までの距離で事前入れられている状況で「強度」を語るのはいささか方向的に難しいと思われますが。

材の外周という、一番寸法の影響を与える部分が
白太、辺材等と呼ばれる、我々人間で言えば内臓部分に値する柔らかな部分なのですから、それが乾燥して縮む具合は
骨である赤身、心材の比では無く、「もったいない」で残した事が、建築部材的に見ると、狂いや虫食い等の多々のトラブルを引き起こす要因となり易いです。
特に、後の乾燥に伴うヒビ割れは、カジノのルーレットの目のごとく丸太外周360度のどの部分に発生するか事前の判断が付きにくく、まさにバクチといった様相もあって、ある意味、興味深いですが、さすがに構造を伴う柱で此れが起きたら、正面を向いていた柱が右や左を向く事になりますから、厄介どころか危険ですね。
竪穴式住居のように、縄で互いの材を組む工法ならまだしも
現在のように部材の縦横が仕口で精密に組まれた家屋ならば、割れが引き起こした狂いの影響が、家屋全体に伝播する恐れが出てきます。
あらゆる面や線が、まるで定規に使えるがごとく直線と平面で構成されている現代の建築は、このような狂いを決して許容しないまま、必ずトラブルとして表に忌々しくさらけ出す事でしょう。

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