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森と林業の本

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2018/12/28

「フォレスターズ・シンドローム」を考える

以前も少し紹介したが、「フォレスターズ・シンドローム」という言葉がある。

 
ここでいうフォレスターとは、森林行政官のことだが、そのシンドローム(症候群)とは「樹木を愛し、人々を嫌う」性向だそうだ。主に熱帯諸国の森林関係の役人に向けた言葉で、批判的な意味合いが強い。
フォレスターは、たいてい森林を専門に学んだエリートで、また法律なども詳しく遵守傾向が強いから、「森を守る」(正確には、守らせる)意識を持つ。そのため科学的知見や技術、制度を地域に導入して、森林を守ろうとする。
 
一方で、そのフォレスターが向かい合う森林地域の住民は、科学知が弱く、目先の利益(というか住民の都合)を優先しようとするから、森林を持続的に利用せずに森林を劣化させてしまう……。
 
だから樹木(森林)を愛しているゆえに、地域住民の存在はその森林管理を制約してしまうやっかいな存在と感じて嫌いなのである。
 
ま、こんな理解でいいかな? 『人と森の環境学』(執筆は井上真氏の担当部分)より。
 
Photo
 
フォレスターは知識を持っているだけでなく、権力も持っているわけで、住民を森林から切り離した方が森林のためになるとする。しかし、実際には住民の方が経験知を持っている場合も多い。それはえてしてフォレスターに対して恨みと不信感を持ってしまうだろう。 しかも経験知は科学知を上回ることもあるわけである。フォレスターのいう通りにしたって上手くいかないと住民は感じるケースもあるだろう。
 
このような点が途上国の森林管理の問題点と指摘されるわけだが……。
 
 
これは日本に当てはまるだろうか? 
 
私は反対のような気がしてならない。日本の森林行政官は、人におもねり、実は森林・樹木の方が嫌いなのかも、と思ってしまう。もっとはっきり言えば、人とは地域住民ではない。おそらく行政組織の同僚や上司、さらに言えば政府の官僚ではないか。
 
当の本人も、どれだけ身近に森を見ているか。机上だけだったら遠くの森が劣化しても痛みを感じないだろう。それより身近な上司の顔の方がよく見える?
さらに言えば行政官だけでなく、民間のフォレスターも、地域の経済、企業の経営優先で動いていないか……。
 
日本のフォレスターを自認している人は、もっと(本来の)フォレスターズ・シンドロームになるべきじゃないかと感じてしまう。少なくても森林を扱うことを自分の仕事として選んだのなら、まずは森を、木を愛することを優先して世界を見る目を持つべきだろう。もちろん住民と対立したり彼らの経験知を軽んじてはいけないが、樹木を愛することが長い目で見て人のためになる。そうした視座を持てないか。
 
そんな気持ちになることが多かった1年であった。
 
 
さて、今年のブログは今日でオシマイにする。
毎日、書きたいことは汲めども尽きないのであるが、年末年始ぐらいは休ませることにしている。さもないと自らブラックな領域に落ち込んでいきそうだから。(……と言いつつ、多分、別のSNSとかHPとか、メールやら原稿やら書き続けるのだろうなあ。。。)
 
※今、昨年末は何を書いたのかと思ってチェックしたが、なんとまあ、今年と似たことを記しているよ。全然進歩していない……。

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コメント

おつかれさまでした。 そして今年もありがとうございました。
また来年も ブログ楽しみにしてます!(^з^)-☆
田中様の想いをばんばん 伝えて下さい(o^^o)

ありがとうございます<(_ _)>。

なんで林業に従事するかって、森が好きだからなんですよね。
最後までこと気持ちだけは大切にしたいです。

そう、まず「森が好き」という気持ちを持って林業に向き合ってください。それを失わなければ、今のような惨状にはならないはず。

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