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森と林業の本

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2019/01/07

国際年「家族農業の10年」を考える

年末年始のテレビドラマ「下町ロケット」では、無人農業機械をテーマにしていた。
後継者難に苦しむ農家を救うため、無人トラクターや無人コンバインをつくる話なのだが、私が気になったのは、その無人機の価格である。おそらく、結構な値段がするだろう。それを導入できる農家はどれほどの農地を持っているのか。
 
その点には、ほとんど触れられなかったが、台風の直撃を受ける新潟の農家を救うため、無人コンバインが投入されるという局面で、「50町歩」の水田を持つ農家が登場していた。そこに4台5台の無人コンバインが出動して、一晩のうちに稲刈りを済ませるという筋立て。しかし、50町歩……約50ヘクタールの水田を持たないと、あまり役に立たないのかもと思わせる。
 
そもそも50ヘクタールの農地を持つ農家は日本では少ないだろう。しかも、緊急事態でなければ一晩でやる必要性もない。結局、組合か農業法人などで農地を集約化しないと出番がないのではないか。そこでは大規模化が指向されるわけだ。
 
 
そんなことを考えたのは、国連総会で2019年から2028年までの10年間を「家族農業の10年」に選ばれたからである。国連の国際年である。
このブログでも、年初に「国際年」を取り上げることが幾度かあった。
2010年の国際生物多様性年や、11年の国際森林年……15年は国際土壌年だったから、私は土壌ジャーナリスト宣言をしたのだった(^o^)。
ただ18年は何の国際年も決められなかった(謎)ので、忘れていたのだが……今年はちゃんとあった。
 
国際先住民言語年、国際節度年、国際元素周期表年
なんかよくわからない。とくに「節度(Moderation)年」ってなんだ?
 
ともあれ、家族農業が10年間の目標とされたのだ。実は2014年が「国際家族農業年」だったのだが、それを再び10年に延長したことになる。
 
「家族農業」とは、農場の運営の大部分を、1戸の家族で営んでいる農業のこと。大規模・企業的な農業とは一線を画した農業経営形態である。
 
現在、世界の食料生産に関わる農業のうち約8割が家族農業によるとされているが、大規模化の指向が強まって全体的には衰退している。まつさに日本も同じ状況だ。
だが国連が取り組む2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」には、家族農業という農業形態は持続性があるとして注目されているのだ。また貧困や飢餓の撲滅という目標に家族経営の方が向いていると考えられたらしい。
 
このことは、農業だけでなく林業も水産業も、自然を利用した産業には共通しているのではなかろうか。大規模化し、利益の共同体が経営の主体になると、長期的視点を奪い目先の利益に左右されることが多い。その際に自然を相手にした場合、持続的になりにくいと国連も認めたのだ。
 
林業も、そろそろ大規模化に見切りをつけた方がよい。世界中で行き詰まりを見せているのだから。日本が今頃になって時代後れの大規模林業に参入しようとするなんて、馬鹿げている。家族とか自伐という言葉が合っているのかどうかはともかく、小規模・多様な林業の展開を描くべきではないか。
 
現在では100ヘクタールの山林があっても自立できないと言われるが、せいぜい10ヘクタールぐらいの山林で維持できる経営形態を模索すべきだ。少面積ゆえに丁寧な施業ができて、高く売れる木材商品を生産できるという考え方を研究してほしい。
 
日本家族林業年なんてのを設けないかね?
 
 

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コメント

自然に同じ場所なんて無い。だからこそ、その場所の自然にしっかりと向き合って、どのような形態が適しているのかを考えるべき。
何でもかんでも真似して取り込めばいいって話じゃない。
自然を舐めるな。

と、私は言いたい。

自然に同じ条件の場所はない……。だから、それぞれに最適に対応するには小規模にならざるを得ないはず。それは家族農林業ではないか、と思うのですがねえ。
大規模に、画一的に、したがるお上が多すぎる。

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