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2019/01/06

古代の筏流しと砥石

正月は平城宮跡記念公園を訪れたのだが、そこの資料館で見かけたもの。

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この中がくり抜かれている大木は、水道管、木樋である。なんとも贅沢な……。が、もっと気になるのは、その端にある穴だ。
 
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これは「エツリ穴」と呼ばれるが、木材を運び出すために筏にして川を流すが、その際に丸太を結びつけるための縄を通すためのもの。後世になると、金属製のカンと呼ばれる金具を取り付けてそこにロープを通すが、奈良時代の筏流しでは、丸太に穴を空けていたのだ。当然、使う際には切り落とすことが多くて、その分木材の寸法が短くなる。
 
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これは京都の大堰川(保津川)で行った筏流しの再現実験の様子だが、丸太が細いし、カンを使っているからエツリ穴は開けられていない。
 
しかし、大木をくり抜いたり貫通した穴を開けるには、どんな刃物を使ったのだろうか。
 
ここで登場するのが、これ。 
 
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砥石なのだ。平城宮跡から砥石が出土しているのには驚いた。見たところ粒子は荒いが、研いだ痕を確認して砥石と鑑定したのだろう。
 
つまりこの時代に金属製の刃物が存在して、砥石で研いでいたことがわかる。
 
が、これで治まらない。実は、この木樋は、奈良時代のものてはないことがわかってきたからだ。つまり、最初から木樋にするために伐られたのではなく、まず柱として使った痕が見つかっている。それは、藤原宮の宮殿だったらしい。
つまり建設時期~伐採時期はさらに数十年遡る。西暦で言えば700年以前だろう。 
 
この時代に、金属刃物で伐採して、筏流しして、加工したのか。しかも砥石もあったのか。。 
 
石器だって刃を尖らすには研いだはずだが、何を使ったのかよくわからない。やはり硬い石だろうか。ただ金属に対して砥石を使うケースはそんなにない。金属には金属で研いだのではなかろうか。実は世界的に見て金属刃物に砥石を使っていた記録は意外と少ない。むしろ日本は例外的に砥石が発達した地域だ。
 
古代遺跡の遺物を見て、そんなことを考えたのであった。

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