長崎県に「スーパー林業特区」なる構想があることを知った。国家戦略特区に採用されるよう政府に提案中のようだ。
長崎というと、あまり林業県のイメージはないが、対馬を中心にそこそこ木材生産はしている。旧鍋島藩の森も残されている。
そこでどんな特区を望んでいるのかというと。
【提案】固定資産課税台帳データ活用による林地台帳の整備促進
【提案】新たな森林管理システムによる所有者不明森林の流動化促進
【提案】外国貿易船の不開港への直接入港を可能とすることによる
原木、製材品等の輸出
【提案】検疫官の臨船が不要な無線検疫を拡大することによる
原木、製材品等の輸出拡大
【提案】農業法人等が共同出資するグループ運送会社の新設による
農林水産物の安定出荷体制の整備
【提案】特殊車両輸送の許可手続き一元化による大型CLTパネルの需要拡大
前半は新たな森林経営管理法などに基づく所有者不明山林などの整理だが、興味深いのは後半。主に貿易に関する項目が並ぶこと。
韓国で日本のヒノキブームが起きているが、長崎県ヒノキ産地でもあるし、もっと輸出を拡大したいのだろう。対馬材を、いったん九州本土に運ばず、そのまま韓国に輸送したら随分手間もコストも下げられる。
そして、CLTの大型パネルを運ぶ車両の緩和というのも面白いところに目をつけた。
欧米では、CLTはかなり巨大なパネルのまま輸送している。一辺が10メートルもあるパネルを巨大トラックで輸送するそうだ。そんなパネルが使えるからCLTも有効だと言えるし、コストも下がるが、日本だと最大何メートルまでだったか。6メートルを超えるのは難しいだろう。道路関係や運送事業法関係で制限されている。だいたい道路事情も悪い。
<経済効果> 県全体を森林整備した場合 年間売上164億円 新規雇用900人
※年間輸出額 21億円 (中国、台湾、 韓国、ベトナム 向け)
この見積もりがどこまで正しいのかわからないが、目のつけどころとしては悪くないと思う。ただ提案にある緩和案が本当に正しいのかもわからない。
たとえば関税法や、検疫法の用件を緩和するのはどうかなぁ。
松くい虫(マツノザイセンチュウ)が日本に入ってきたのは長崎港からだった。それが日本のマツを枯らしているのだから、検疫には万全の体制で臨むべきだと思うが。
巨大CLTにも、それほど需要があるのか首をかしげる。
この特区のコンセプト自体は、政府が掛け声上げている「林業の成長産業化」路線にぴったりと合っている。だが、その路線の正否を怪しく感じるのだから。気がついたら、木材輸出もCLTもしぼんでしまい、残されたのははげ山だけになりませんように。
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