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2019/02/06

「森林サービス産業」を謳う前に

先日、「“森林サービス産業(仮称)~新たな森と人のかかわり『Forest Style』の創造~”キックオフ・フォーラム」が開催された。もちろん、会場は東京なんで私は参加していない。そんな気軽に東京には行けないのよ。
 
それでもウォッチングはしている。
 
なんでも意図は、「森林空間の新たな利活用を通じた新産業創出を目指す」ことだという。
 
「国民の価値観や余暇活動のあり方、ライフスタイルが多様化するなかで、医療・福祉、観光・交流、教育・学習支援、娯楽等の分野において、森林が有する多面的な価値を積極的に引き出したアクティビティや、森林空間が有する豊かさを活かした利活用のニーズの高まりを見ることができ、こうした取組を通じた山村振興への期待も高まっています。」
 
どうやらすでに「森林サービス産業(仮称)」検討委員会というのがあって、医療・福祉、観光、教育等の分野の業界団体等の参画しているらしい。
 
1 こんな森林リゾートのイメージ?
 
……、ま、意図にさしたる異論はないが、なんか聞いたことがある。そう、森林セラピー事業の時も同じようなことを言っていなかったっけ。今回は森林セラピーについて触れていないが、内容的に重なるだろう。
 
そもそも森林セラピーの元は森林療法であり、これは医療・福祉・教育などへ森林空間を活かす話だったのだが、いつしか観光などを上書きされて、地域起こしネタにされてしまった。その点今回は始めから観光と地域振興に触れている(^^;)。
 
 
実は、同じような話は別の分野でも聞いている。それは環境省からだ。具体的には、国立公園を利用したインバウンドだ。2020年までに外国人の利用者を年間1000万人にするというのだ。これを名付けて「国立公園満喫プロジェクト 」。
そのためには、環境整備と利用規制のルールづくりが必要だとしている。が、なかなか進まない……。 
 
なぜ進まないのか? 地権者たる林野庁が反対しているから(笑)。国立公園の管理権限は環境省だが、その土地は国有林が多く、そちらの管理権限は林野庁が持っている。しかも、林野庁は国立公園に被せるように森林生態系保護地域などに指定している。(加えて世界遺産などもあるんだけどね。こちらは自然遺産なら環境省……なんだが、実は外務省が力持っていたりする。)
 
ようするに省庁間で管理権限のつばぜり合いをしているわけだ。 
 
実際問題として、環境省には予算も人員も少ないことがある。レンジャーが少なすぎてボランティアみたいなアクティブレンジャーまで作っている。だから、林野庁に予算と人員を譲れ、という声まで出ているわけだ。
私も国立公園特別保護区の部分は環境省に任せてもよいかと思うが……人員を譲れというのは、林野庁職員が環境省に移るということ? とりあえず森林専門家は林野庁の方が圧倒的に多いだろう。ある意味、乗っ取れるんじゃないか(笑)。環境省の森林保護の発想は古くさいので、それもいいかな、と思ったりもする。
 
ともあれ、環境省の動きと張り合うように「森林サービス産業」を打ち出した林野庁の裏事情というのを探ってみるのも面白いと思うよ(⌒ー⌒)。
 

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