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2019/03/12

「早生樹・エリートツリー」と年々戦勝論

林野庁は伐る話ばかり、というと、「いや、植林も考えている」という中で、よく話題に出すのが「早生樹とエリートツリー」だ。
 
スギやヒノキなど従来の植林木に比べ、生長が早く植栽から収穫までの期間が短い木を植えようという発想だ。この場合、「早生樹」とは、生長が早い樹種のことであり、とくに推薦されているがコウヨウザンにセンダン、チャンチンモドキ……など。一方で「エリートツリー」とはスギやヒノキ、カラマツなどの品種の中でとくに生長のよいもの。
 
たとえばコウヨウザンなら20年~40年とスギの約半分、センダンも20年で直径30センチを超える。エリートツリーでも30~40年で収穫できる。 これなら、植えた人が生きているうちに収穫できる、というわけだ。 とくにコウヨウザンは、収穫(伐採)したら、萌芽が伸びるので、次の植樹をしなくても2世代目が育つから低コスト! とはしゃいでいる。
 
3  
 
コウヨウザン。根元からわさわさと映えているのが萌芽。伐採していないのに2世代目が映えている。
 
なんだかなあ、という気分になる。ものすごい大発見したような書き方をしているが、そんな樹種や品種は、大昔から取り上げられてきた。
 
コウヨウザンなんぞ、江戸時代に清国から持ち込まれて植えられている。明治になってからも幾度も導入された。東京の林試の森公園にも植えられているから、山林局(現在の林野庁)も導入したのだろう。
 
でも、根付かなかった。材質が日本人好みでない以外にも理由はあったのだろう。 
 
エリートツリーも、今から20年以上前に「3倍速のスギ苗」が生まれている。
 
Photo  
 
 
なんと植えて10年で直径30センチ近くなるのだ。
 
だが、広がらなかった……場所によってはそれほどの成長力を発揮できなかったこともあるし、10年を超えると急に生長が衰えたとも言われる。結局、普及しなかったのである。
 
そのほか林地肥培、つまり肥料を与えて早く太らせようとしたり、あの手この手を試しているがことごとく討ち死にしている。
 
今のブームは、そうした過去の失敗を振り返っているのかね。
 
 
そもそも「樹木を生長させるのは時間がかかるから採算に合わない」という言葉も、昔から言われたことだ。
三井物産の初代社長・益田孝もそう言って山林経営を忌避していたが、土倉庄三郎に「木は毎年生長している」と説得された。ここで「年々戦勝論」が出てくる。
 
庄三郎は日清戦争後に「戦争なんて、莫大な戦費を費やして有為な人材を死なしめるだけ。木を植えたら毎年育って、毎年戦争に勝っているも同然」と喝破した。
つまり一本の木の生長を見るから遅い、年数がかかると思うが、山全体を見て順々に木を育て順々に収穫すれば、毎年収益を上げられると唱えたのだ。
 
それを期に山を買いだした三井物産は、今や日本第4の山主である。
 
樹木の生長速度を早めようという姑息な発想をせず、経営システムで補うのが王道なのではないか。
 
 
私自身は、植栽する樹種・品種の多様性を作る点では早生樹もエリートツリーも試してみる価値はあると思っているが、植栽する適地や採算性などわからないことが少なくない。早く生長する分、どこかにしわ寄せが行くように思うが、それが何かつかめない。
 
何より早く育つと言いつつも、20年もかかるんだぜ。これが5年ぐらいならなんとかなるが、20年後の経済状況や社会事情、そして流行り廃りが読めるわけない。木材が気嫌いされているかもしれないし、コウヨウザンの花粉症が登場しているかもしれない(笑)。
 

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コメント

外来種の問題が色々言われる中で、わざわざコウヨウザンを入れると言う矛盾、、、。
なんだかんだ言って日本の早生樹はスギだと思っています。最近新たな品種も開発されましたし、富山のボカ杉も植える場所を工夫してやれば立派に育てられるんじゃないかと考えています。

花粉症?それはスギをどうこうするより、都市環境の改善や新薬の開発で対応した方が比較的早く、皆が幸せになれると思います。

コウヨウザンの花粉症は現れるでしょうね。植えすぎが問題なのだから。

都合の良い樹種の植林といい、除草剤散布といい、どこまで行っても自然を支配下に置こうとする日本政府、日本林業のおこがましいこと。とにかく短期的に今すぐ成果の出ることばかり求めるのは典型的な日本人の思想です。

ヨーロッパによく視察に行ってるのに、何を学んでいるんですかほんと。

コウヨウザン、外来種なんですよね。。。同じく早生樹と言えるニセアカシアは特定外来種に指定して駆除対象なのに。。
今やヨーロッパの方が自然によりそう農林業を進めていますよ。

スギも、在来種の中では生長が早い方です。学生時代、なぜスギが造林樹種に選ばれたのか、という問いに「成長が早いから」という項目が入っていたのを覚えています。

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