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森と林業と動物の本

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2019/03/11

「撤退の林業計画」再び

昨日は「森と環境保全活動の10年」というテーマのシンポジウムに顔を出してきた。演者は川北秀人氏。(人と組織と地球のための国際研究所代表)

 
てっきり森林ボランティアとか木育、環境教育などに関わる団体の10年間の変遷を語るのかと思いきや、もっと広い分野から切り込む。それは日本の人口減と年齢構成である。
そう書けば想像できるとおり、今後猛烈な勢いで日本の人口は減少し高齢化が恐怖を感じるスピードで進行する。
……こうした点は、すでに一般の社会でもよく語られる話題なのだが、これまでとこれからの差は大きい。なぜならイマドキの高齢者は元気、といっていられるのは75歳まで(前期高齢者)で、その年をすぎる(後期高齢者)と多くが要介護に陥るからだ。そして今後は前期高齢者さえ減少して後期高齢者が激増する。
 
当然、林業で働く人も減る。現在の担い手(4万5000人)を維持しようとすると、毎年1万2000人以上の新規就労がないと無理だそうだ。これもアマアマの計算だと思うが、現在は3000人程度であるから、絶対不可能。
当然ながら趣味的な森林ボランティアも減少する。むしろ今後は介護ボランティアに模様替えも必要かも。。。
 
 
……そんな話を聞いていて私は思い出した。かつてYahoo!ニュースで「撤退の林業計画 」を論じたことを。(2013年2月)
この時の世間の反応は批判ばかりだったが、再び論じるべきだろう。 
 
簡単に論点を言えば、「日本の林業は、絶対に現状を維持できない」「絶対に活性化できない」を前提にする。
ただし、この場合の維持とか活性化というのは林野庁のお好きな「量の林業」である。数字で測る発想では、林業は絶対に崩壊する。木材生産量は増やせないし、就業者は激減する。
だが質で捉えると、山主は少ない生産で十分な収入を得られるとか、市民の暮らしの場に木材がいっぱい目に入る社会を築くことはできるだろう。
 
まず林業からの撤退、規模の縮小を前提に考える。木材生産林の面積も就業者数も半分以下を目安にしたい。木材生産量は効率化によって3割減ぐらいに留められるかな。一方で、林業を続ける山主の収益を2倍になるようめざす。木材の供給過剰を消し価格を上昇安定させれば不可能ではないはずだ。
またスギ・ヒノキの一辺倒から針広混交林化することで広葉樹材の生産も見込む。
 
 
問題は、まず森林所有者の振り分けと、林業から撤退を決意した所有者の処遇がある。
次に林業をしない人工林の植生をどのように誘導するか。基本的には、手を入れずに防災機能を保てる森になるまでの移行期の管理だろうか。
 
それらを真剣に研究していくべきだ。全国の有意の人々よ、「撤退の林業計画」研究会を立ち上げないか(⌒ー⌒)。
また全国から矢が飛んできそうだな。。。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

私、研究会参加します。
建築の世界から見ると、そんなにたくさんの木材なんて必要としていません。
ほんの一握り、所有者の思いがこもった質のいい木材があれば足りるのだと。
少し違った視点で森林林業を議論してみることで、その本質を問うことができるのかと思って参加を呼びかけてみました。
ご参加ありがとうござい!

おお! 早速反応が\(^o^)/。
 
この研究会は、たった今、「今日のブログは何を書くかなあ」と考えつつ思いついたもので、どのように運営するか何も考えていないのですが、なんとか実現したい。どこかネット上で場を設けるか、いっそ合宿するか。
ともあれ、真面目に林業が考える人には避けて通れない課題だと思っています。

花粉症の記事にコメントしたのですが、返事がないということは、なんの感想もないということですね。
わかりました。
まあ、ジオのサイトは今月で消えますしね。

? 記憶にない。そもそもコメントに返答する義務もないし。とくに匿名者にはね。

ひょんなことからこちらのブログが目に留まり、夢中になって過去記事まで読みふけってしまいました。
どれも大変面白かったです。田中先生の文章も小気味よくて、勉強になりました。
さかのぼり、たくさん読ませていただきました。ありがとうございました。

(以下、浅学なので間違っている箇所が多々あるかと思います。もしトンチンカンなことを申し上げてたらすみません。。。)

拝読していて思ったのですが、特に針葉樹林の山元や林業従業員の収益性・給料が上がる可能性は非常に低いと感じました。価格が上がる見込みがないですし(需要減・代替物の増加・供給増など)。

私は株式投資を長年やってきて、趣味も仕事と同じく企業分析なのですが、林業以上に厳しい環境におかれたビジネスはあまり見たことがありません。
悪条件が多すぎて、勝ち筋が全く見えないですね・・・。ビジネスモデルとして完全に破綻してると思います。

個人的には、本質的にビジネスとして成立し得ない産業を、無理に事業化しようとして補助金などつっこんでおかしくしているようにすら見えます。
少なくとも、森林は、事業用用途として見るより、水源確保や地盤維持など公共財としての位置づけが強くなってるのだろうか・・・と思いました。もはや道路や空気などに近い公共財なのかなと。

現状の解決は難しいとは思うのですが、ソリューションとしてたとえば

・花粉症対策の文脈とからめ税金を投入し、杉や檜を切る(有権者からは大賛成されるはず)。
・そのあとの伐採跡地に、早く成長して環境にも適し、木材としても使える樹種で、土地に馴染んだ在来種であり、世界的に資源が枯渇していて高値の広葉樹種を選び植える。これも治水や水源確保の文脈で行う

あたりなのかなぁ・・・?と思っています。

私自身はずっとビジネス・金融畑で生きてきた人間であり、どちらかというとリバタリアンで政府が進める事業というものはうまくいきにくいとは思っています。
ただ、林業についていえば、ビジネスに乗せるのはどうしても無理だと思うんですよね。
それなのに下手に事業化しようとして、中途半端に補助金入れたり、制度をいじったりして、現状をさらに歪めてしまっているように見えます。

花粉症対策や治水・地盤維持などの観点から、当面は公共財として政府やNPOが担いつつ、数十年たってスギなどの針葉樹が減り収益性の高い広葉樹林が増えてきたら徐々に事業化を探っていく、というのが筋なのかなぁ・・・と思いました。

あと、林業とは関係ありませんが、”思索ゲーム「日韓中が一つの国になったら」”という記事もすごくおもしろかったです。
また、この記事の最後のほうに書いてある、「そこで、むしろ壮大な将来の理想の林業を描いてみたらどうか。バラ色、夢物語のようなみんなが幸せになっている林業。各者がウィンウィンの林業。環境と経済が上手くかみ合って両立している林業」という部分も目をひかれます。

もしよかったら、林業についての反実仮想の記事も書いていただきたいです!
(たとえば田中先生が日本政府の最高指導者で、制度をなんでも自由にいじれる立場にあったとして、どのようなシステムを作られるのか・・・とかです)

「ビジネスモデルとして完全に破綻」「ビジネスとして成立し得ない産業を、無理に事業化しようとして補助金などつっこんでおかしくしている」はまったくそのとおり。私自身は、補助金を全廃したら、きっと林業は復活すると思っています(笑)。
 
ただ、花粉症や防災を持ち出して森林を維持するのも、結果的に同じ補助金行政ですね。それに人間社会は木材を必要としているから、どこかが供給しないといけない。
従来の林業界のシステムから撤退して、新たな形に再構築するリストラクチャリングすべきだと思います。

実は、現在そんな著作を執筆中。徹底的に悪いところを表に出して、その上で反実仮想の林業を描こうと悪戦苦闘中。題して「絶望の林業」(笑)。絶望のまま終わるか、希望を生み出せるか。今年中に出版できればいいなあ。

ご返信ありがとうございます。
補助金の全廃、とても面白いですね。
金融の世界でも、政府が変な介入しておかしくなってる例は、ほんと多いです。
役所は自分から権限を手放さないし、経路依存でちぐはぐな制度ばかり作るしで、困ったものです。

「従来の林業界のシステムから撤退して、新たな形に再構築するリストラクチャリングすべき」というご指摘、まったく同感です。
何とかしないといけませんね・・・

おお~!「絶望の林業」、とても楽しみです!
私も本を出版したことありますが、本って書くのほんと大変ですよね・・・
応援しています!!

金融の面で言えば、いわゆるポートフォリオがありますね。分散投資という意味で。林業もポートフォリオの一角だと思えばいい。
それは長期運用が基本で、安定した投資先です。大きな利益は出ないけど、数十年?に一度は化ける……こともある。そのほか短期運用・中期運用の投資先と組み合わせて、全体で利益を生むポートフォリオと思えば、一時的に林業は赤字でもほかの産業が支えて、いざとなったときに(たとえば短期投資先が乱高下した際に、林地資産が安定させるなど)林業で利益を上げる。そのためにもリストラ林業を描きたい。
さて、「絶望の林業」1冊売れそうだから、頑張って書きます!(笑)

「撤退の農村計画」の林です。おおっ、いいですね!いずれにしても、5年10年すれば、そういう研究会がたくさん出てくると思います。やるなら今です(^^)。「撤退の林業計画」といえば、「反撃の林業計画にしろ」「未来の林業計画にしろ」などと、いろいろ文句が出てくると思いますが、そうなると何でも林業研究会になるので、「撤退」が最善かはさておき(わたしとしては撤退がうれしいですが)、会の前提が一目でわかる名前がいいですね。「切り捨てではない。従来の価値観からすれば後退だが、新しい持続可能な形への移行だ」ということがちゃんと伝われば文句は出ないと思います。

(補足)すみません、「「切り捨てではない。従来の価値観から…」の部分は、会の名称ではなく、研究会の内容面の話。趣旨について、です。ひとことでそれが表現できる用語はまだないと思います。

研究会名は、いろいろ思いつきます(笑)。
たとえば、林業リストラ計画研究会\(^o^)/。
サバイバル林業研究会。
林業打ち止め研究会。

私自身は、「切り捨て」でもよいと思います。今後、林業は自ら再構築に動くものだけが生き残る。補助金依存症の方々は退場してもらった方がよい。

興味深い研究会ですね!私も入会希望です。
会合は夜にして頂ければ参加しやすいです。
ノンアルコールでも問題御座いません(笑)

おおっと、なかなか過激な名称ですね。でも、ここに斬り込むならそのぐらいの勢いが正解だと思います(^^)/。

いっそ「林業安楽死協会」いや「林業尊厳死協会」にしたらどうか(^^;)。リストラも、本来は再構築という意味なんで、わりとあっているように思いますよ。

まあ、冗談のように提案していますが、そのうち本気で政府が金を出して審議会を作るかもしれませんよ。「現代日本における林業の安定的発展形態を考える委員会」とかなんとか(笑)。

補助金を全廃したら林業は復活する…それもありかもしれませんね。現場に少し身を置いただけでも、全国一律的なやり方は山では無理だと感じています。一方で補助金は全国一律でなきゃまずい… 山と補助金は、そもそも相性が悪いのでしょうか。
農業も多分同じような状況なのかなーと想像しています。

本を楽しみにしています。

いきなり補助金を全廃したら、多分業界は壊滅的になると思いますが、その中で自力で立ち上がる林業家が現れるでしょう。それぞれの地域でそれぞれの方法を模索して。
本当は補助金も、きめ細やかにケースバイケースで対応すれば効果的な使い方ができるのでしょうが。

そんな過激な方法を取らないと、もはやにっちもさっちも行かない状況にあるように思います。

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