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森と林業と動物の本

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2019/04/15

獣害のある自然

再びタナカ山林へ。今回もタケノコは見つからなかった。

だが、犯人の証拠を発見。

Dsc01559

このとおり、かじられたタケノコの穂先。さすがにイノシシだとわかる。地下茎の下をくぐるように掘り出して食べたか。

こんな置き土産もあった。

Dsc01561

しっかり糞をしていった。今年もタケノコ堀りはイノシシとの競争で厳しそうだ。今やイノシシは尋常でない増えようだ。

と書いて、ふと疑問に思った。イノシシ、そしてシカの激増で農作物だけでなく森林そのものも荒らされて生態系が乱されているというが、本当だろうか。乱されない自然とはどんな状態なのか。イノシシもシカもいない自然はおかしくないか。生態系は植物だけでなく動物も含めて成り立っているものだからだ。
これが外来種なら、本来いなかった動物が生態系を攪乱しているなどと言えるのだが、シカもイノシシも古来より日本の野山に生息していたわけである。そしてシカもイノシシも繁殖率は高い。なんでも食べて、たくさん出産する。増えて当然なのだ。オオカミが生息数を抑える効果は極めて小さい。ハンターだって農地を守るが精一杯で、生息数を左右する力はない。

たとえば江戸時代の山は自然豊かだったのか。いやいや、相当荒れていたようだ。風景画などにはスカスカだった状態が描かれている。一般には、人間が燃料にするため伐りすぎたせいだとされているが、そこにシカなども関わったのではないか。事実、里人は入れなかった聖域・奈良の春日山も同じだったからである。それなのに明治以降に植生が急速に豊かになって、今では「春日山原始林」として天然記念物であり、世界遺産に指定されてしまった。

むしろシカやイノシシに荒らされた自然の生態系が正常なのかもしれない。植物が繁茂して生物多様性の高い自然は異常と考えたらどうだろう。

明治期から昭和50年代までは、野生動物がひどく減少した異常な時代だった。そのおかげで植物が異常に繁殖し多様で豊かな森林になってしまった……このように解釈できないか。ところが自然を回復(この場合、シカやイノシシの生息数が以前にもどった状態)したために、また植生も昔の姿を取り戻そうとしている。。。

本来の自然は、植物が繁茂していなかった! 生物多様性の高い森林生態系はニセモノだ!

 

この仮説、誰か検証してみないか。(袋叩きになっても知らない。)

 

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ナラシカ・動物・獣害」カテゴリの記事

コメント

生物が多様な森林は偽物
たしかに、それはあるかもしれません。
実際、原生林は雑木林に比べ生物多様性は低いです。
しかし、原生林は原生林のよさが、雑木林には雑木林の良さがあります。
そこに偽物や本物など存在してはいないと思います。そもそも本来の自然の姿とは何でしょうか?生物は進化しています。そして環境も変化しているのです。
そして、シカやイノシシが増えてしまっているのも事実です。
本来平地で暮らすはずの彼らが追い出され、高標高域にまで追いやらてしまっています。
私たち人間側も農林業被害で苦しんでいますが、彼らも生きにくい状況にあるのではないでしょうか?
野生動物リハビリテーターの方は栄養失調で弱っているシカが増えているとおっしゃってました。
彼らが暮らしやすい環境を整えるためには、個体数調整なども大切なことだと私は思います。


森と近代日本を動かした男を読ませていただきました。
作者の方の土倉さんに対する敬愛が伝わる面白い本でした。
またブログも日本の森林だけには収まらず様々な分野について書かれているので読み応えがあります。
日本で唯一の森林ジャーナリストとしてこれからも執筆、ブログ更新の程よろしくお願いいたします。

カナダの鹿は圧倒的に雌が多く、雄はハーレムを形成するそうです。(ちょっと羨ましい?)
理由は厳しい冬を越せないからだそうです。
日本の鹿や猪も冬の気候の変化に伴って増減しているのではないでしょうか?
人間が介在しなくても一定の個体数を安定して維持するようなことはないと思います。

あくまで仮説として「シカやイノシシは数が多くて植生にインパクトを与えているのが常態」であり、「健全な自然」(これが何を意味するのかはまた考察が必要ですが)に戻そうと考えるのが不自然と考えてみました。

よくよく調べたら、各地にシカが繁殖しているのに自然は保たれている地域はあります。たとえば屋久島とか。また離島で海鳥が増えて植生を破壊しているケースもある。もちろん人間は関係なく。

そのバランスはどのように取っているのか考えると獣害対策の糸口にもなるかもしれません。それこそ、数十年に一度、気象などの関係で生息数を激減させることが起きているのかも。生息数が乱高下すると、人間は自然が乱れたと思いがちですが、そんな激動も長い目で見たら自然界のバランスを取る摂理と考えることができます。

こんにちは。以前Facebookで友達申請をさせていただいた、千葉県で地域おこし協力隊「有害鳥獣対策担当」をしているものです。
千葉県ではイノシシは一度絶滅したのですが、イノブタを趣味のハンティングのために野に放ったものが繁殖し、千葉県全体に広がっている状態です。
もともとイノシシはいたので、野に放たれたイノブタは自然?不自然?どちらにしても、食害や掘り返しなどの被害が多く、千葉の人たちは困っているのが現実です。
動物と人間の共存、難しい問題ですね・・・

生駒山のイノシシも、イノブタ説があります。戦前にイノシシは駆逐されていなくなった時期があるので。ただ私はイノシシそのものだと思っていますが。
少なくても、一つの「生態的地位」を占めている動物がいるのは間違いないですね。

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