熊野古道と作業道
昨日に続いて熊野の話題になるが、こんな新聞記事がある。
朝日新聞の「経済季評」というコーナーだが、松井彰彦・東大教授の執筆だ。これが噴飯もので、熊野古道を歩いたときに、道沿いが針葉樹林(ようするに人工林)になっていたところがあって、そのために世界遺産登録が危ぶまれたというのだ。そこから人工林が増えた状態に話は移り、花粉症の経済損失を訴える。そこに明治神宮の森の造営を持ち出したりして「花粉症は公害」だから人工林を天然林にもどせ、とのたまう。
目を覆いたくなるほどの浅はかでレベルの低い記事だ。林業のことも花粉症のこともネット検索で済ませたんじゃないかと思えるほど薄っぺら。ティッシュペーパーに火をつけたような熱のない内容だ。「百年の計」を語る前に、せめて100分でも深く考えてくれ。
神奈川県の花粉症対策を褒めているが、どこに実効性があるのか。間伐を進めて花粉を増やしているだけだ。そして天然林に戻して花粉症をなくせという素人発想。研究者というのが信じられない。
ただ一点、熊野古道に関しては、別の危機があることを伝えておきたい。
今、古道を囲む人工林の皆伐が進んでいる。それが古道を実質的に破壊しているのだ。それだけで世界遺産登録を取り消される事態である。
上記の写真のように、古道の横に作業道が開かれている。まあ、この作業道もかなりひどいもので法面が高さ5メートル以上ありそうな代物なのだが、古道に平行して延びているのだからたまったもんじゃない。古道そのものにも土砂が流れ込んでいるが、ここを歩いた人は失望しただろう。すでにこの事態は多くの参詣者からユネスコのイコモスに報告が送られているそうで、それに文化庁がいかなる言い訳をしているやら。
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