国有林の再造林は「大丈夫」か?
国有林野管理経営法改正案は、衆議院も通過していよいよ成立しそうだ。
そこで議論の的となっているが、私もYahoo!ニュースに書いたような「再造林が担保されているのか」という点と、原則10年、最大50年という長期の樹木採取権が必要か……という点に絞られているように感じる。
ただ、どうも法律論争に陥っていて、伐採業者に造林を植林しなくて天然更新という手法もあるのに義務化できるのかとか、苗を植えさせたら所有権が移ってしまう……といった意見が目立つ。あるいは伐採者側から見て使いやすい制度か、真っ当な利益は出るのかという点から是非を論じる人もいるだろう。
私自身は、そんな小手先の法理論に興味ない。業者の都合なんかどうでもよい。ようは、ちゃんと伐採後に森林はよみがえることを誰が担保するのか(その前に大面積皆伐するなよ、という気持ちが強いが、その点は別とする)という点に尽きる。法律の文面や整合性等の理屈ではなくて、伐った跡地を森にもどせるのか。それを誰が責任持ってやるのか。失敗した場合の責任は誰が負うのか。そのための制度設計をどのようにするのか、という点からこの法改正に疑問を持っている。
で、格好の記事を読んだ。
以前にも紹介した宮崎で会った毎日新聞の寺田記者が25日朝刊に記した記事だ。
ネットでも出だしは読めるが、後半は有料。もっとも上記の写真の細かい字を読むのは辛いかもしれない。
そこで前半だけ(笑)、拡大してみる。
これは今回の法律改正とは関係なく、8年前に皆伐した国有林のケースだ。8・7ヘクタールになる。
ここは、おそらく伐採業者とは別の業者に国が造林を発注したのかな。だが、見事に失敗。今や苗はどこにも見えず、今も斜面崩壊が続く。林道さえ寸断されたという。地形・地質上の問題のほか、シカの食害もあったのだろう。
しかし、業者にしてみれば一度は植えたのだから違反ではない。ちゃんと仕事はこなしたのだ。だから責任はない。補植……というかやり直しの義務はない。では、発注した国の責任は? やはりないのである。こうした山も、再造林済みであり、森林にもどる(はず)とカウントしているから。日本の森林面積の計算には、こうした不成績造林地も含まれているはずだ。
文中によると、まともに治山して造林し直すには数千万円かかるそうで(伐採権の入札額は590万円だったそう)、その金を工面できないらしい。
この現場に私も訪ねてみたい。不成績造林地ツアーを催さないか。7月に群馬へ行く予定があるから、計画しようかな……。
今回の法改正では、1地域の契約で1年20ヘクタールずつ、10年で200ヘクタール皆伐させるそうだ。不成績地は必ず出る。さぼる業者も出るだろう。シカ害を完全に防ぐ手だてもない。「国が責任を負って再造林(もしかしたら再々造林も)させる」というが、赤字になったらやるのだろうか。(やるという担保はないのが、今回の法律だ)。
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