無花粉の在来スギ品種から「品質」を考える
これ、本来なら春先の花粉症真っ盛りのシーズンにYahoo!ニュースにでも記事にしたいところなんだが……メモがわりに。
北山杉の産地で、花粉がほとんど出ない固有品種のシロスギを全国に広める活動が始まった、というニュースを読んだ。シロスギは、北山杉の古い品種の一つだが、近年はあまり育てられていない。なぜなら絞り丸太づくりには向いていなかったからだ。
ところが花は咲かず、花粉をほとんど出さないという特徴があった。これまで挿し木で増やしてきたのだ。
地元「中川村おこしの会」が、林野庁や各地で花粉の出ないスギ品種づくりに必死になっていることを知り、そんな無理に育種しなくても昔からあるよ、と普及活動をすることにしたというのである。現在約1500本を植え、順調に育てば約2年後には全国各地へ無料配布することを計画しているのだそう。
シロスギは、床柱にする北山杉としてはあまりよくない品種だったのかもしれないが、台杉のような庭園木としてはすで各地に植えられている。材質とか各地域の気候でよく育つかなど今後の検証は必要だろうが、ゼロから新品種を開発するより遥かに簡単だし、シロスギを母樹として花粉の出ないスギを開発することも可能なはず。
そういや、九州では花粉症が少ないという話も聞いた。なぜなら九州で植えられているスギは花粉の量が少ないからだそうだ。
そもそも生長が早いのが九州のスギの特徴だが、早く生長するためには花粉のような生殖器官づくりにエネルギーをあまり割けない。より幹の木繊維を作ることに力を注ぐわけだ。つまり早生の品種ほど花粉が少ないことになる。研究所では生長の早い品種「エリートツリー」づくりも一生懸命やっているけど、一石二鳥?
なんだ、花粉の少ないスギ品種は各地にあるんじゃないか。なぜ、そうした地方品種を吟味せずに「花粉の出ない品種づくり」に各地の研究所が狂奔しているのだろう。意外と研究現場でも情報交換が行われていないのか?
おそらく、これは花粉だけスギだけでなく、さまざまな遺伝資源が、各地に眠っているのではないか。遺伝資源も足元から発掘できることがあるような気がした。そういや紀州のごく一部で栽培されていた柑橘類ジャバラも、今では果汁が花粉症に聞くと評判だが、これも一地域品種。何が有効な資源になるかわからない。
木材の品質だって、思いもしない性質に価値が生まれるかもしれない。そう考えると、「質のよい木材」をつくるのではなく、今ある資源から有効な使い道を考える方が先決ではないだろうか。
こんな、足元の庭園木(北山杉の台杉)にも、意外な遺伝資源があるかもしれない。
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