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森と林業の本

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2019/05/09

「クローズアップ現代+」のアーバン・イノシシ

昨夜のNHKクローズアップ現代+を見た方はいるだろうか。

タイトルが「アーバン・イノシシ物語」。都会に出てくるイノシシの話題だ。我が町でもイノシシは激増しているし、わりと身近なテーマだった。

詳しい内容は上記リンク先をたどれば、かなり詳しく紹介されているから任せるが、基本的には良番組だった。
イノシシが都会に出るのは、山で数が増えて、バッファーゾーンである里山の衰退により町に出やすくなったこと……これだけならありきたりだが、都会の餌が非常に高エネルギー食で、麻薬みたいな美味しさがあり、今更山にもどれなくなっているとまで紹介していた。しかも餌が豊富なので体格も山のイノシシより数回り大きくなっているという。山では成獣で体重80キロぐらいが限界なのだが、町に出没する中には150キロクラスまで生育しているのだ。

さらに出没しやすくした背景には、都会人が野生動物の怖さを知らずに近づき、馴化(人馴れ)を進めたことや餌を与える輩までいる点にも触れている。出くわしても追い払おうとしない人間は、むしろ襲っても良い対象と思っている。そして、目先の駆除では解決しない(駆除数以上の速度で増殖する)ことも説明した。

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都会の食事(残飯や、人を襲って奪う弁当・お菓子など)がイノシシにとっての麻薬と表現したのは上手い。その前にアーバン・イノシシという命名も上手いな。これで惹きつけられるし、ことの本質を伝えることができただろう。

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さらにこの写真は、なかなかショッキング。都会のイノシシは牙が山イノシシより数段長く鋭いのだ。横に飛び出しているから、接触するだけでザックリ切り裂かれる。しかも走ると2秒で時速40キロぐらいまで加速するそうだから、もはや人間が逃げるのは不可能ではないか。。。

ただコメンテーターがつまんない。人とイノシシは共生できないのか、とかキレイゴトしか語っていない。それにオオカミがいなくなってイノシシが増えたかとのような描写があるのも噴飯ものだろう。オオカミが消えて80年間は、イノシシは増えなかったよ。

むしろ私が気になったのは、こうした現象が日本だけでないことも示していることだ。

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ヨーロッパにトルコ、そのほか韓国でも町に出没するイノシシが問題になっているらしい。おそらく世界的な傾向なのだろう。つまり、里山の衰退、ハンターの減少などの日本的理由だけでは説明がつかないのは間違いない。もしやイノシシの“進化”か? 都会に順応し、都会の方が生きやすいと生息域を変え始めたのか?

実は拙著『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』で“奈良の鹿”を追いかけた際も、奈良の鹿とは山の鹿とは別の文化を持つ、いわば別種ではないか、と思ったことがある。遺伝子ではなく習性が別物になっているのだ。生態的亜種とでも言えるか。奈良の鹿も残飯あさって数を増やしているからね。(ただし、体格はむしろ小さくなっている。)

シカもイノシシも、人と人間社会に対する姿勢を変えつつある。人間側もこれらの野生動物との向き合い方を変えないと、エラいことになるかもよ。

 

 

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