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森と林業の本

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2019/06/06

「改正国有林野管理経営法」の目的は何か

国有林野管理経営法の改正案が参議院で可決して成立した。

これまでの林業関係の政策としては、この改正法に対する反応はわりと大きくて、一般紙の一面や大きな特集紙面で記事となった。で、私のところにもいろいろな声が届く。

私はすでに記事化もしたとおり意見は述べているが、改めて考えるところもある。これまでアチコチから得られた情報を元に、何を狙っているのか考えてみた。(裏情報もあるから、厳密な証拠は示せないよ。)

まず、業者視点で見ればこの“改正”は喜ばしい。民間業者が国有林に参入して大規模に伐採できるようになったのだから。
これまでの短期契約で面倒な書類をいっぱいつくって入札することを考えれば、一度契約してしまえば格段に楽になる。しかも長期だから経営の目算が立ちやすい。この場合、1年で20ヘクタールずつ皆伐させる(10年で200ヘクタール皆伐する)計画らしい。

次に林野庁側は、最初嫌がっていた。森林経営管理法は民有林を伐採業者に開放する手だてだったが、庁の管理下の国有林は手を付けさせない思いではなかったか。それを未来投資会議の鶴の一声?で開放させられたように感じる。何とか骨抜きにしようとしていたように思う。

だができあがった法案の条項をよくよく読むと、実は全然管理を手放していないわけだ。細かく施業内容を国側で決めて契約を結ばせる。つまり、骨抜きに成功したのではないか。民間に国有林を自由に経営させるのではなかった。むしろ国の労働力としての民間業者の囲い込みのように見える国の森林保育管理部門の労力は減少の一途で消滅寸前。そのため使える労働力を確保するという労務対策だ。民間でも林業就業者は減り続けているのだから、先に長期契約で縛りつけるのだ。

……というのが私の読み。

森林経営管理法では、委託を受ける民間業者は、わりとその森林をどのようにするか自分で決定できる要素があるから、もし性善説に立てば、業者が理想の森林経営を行うことができる。しかし今回の国有林の場合は、そんな自由度がない。

これで国有林周辺の民有林を手がけられる業者はますます人手不足になるだろう。

とはいえ、国には管理の手が足りないということは、監視もあまりできないということで、少々暴走してもバレないかな? 10年後に返すときにどんな状態になったか初めて目にするケースも出てくるだろう。

 

これで国有林の借金を返せるという声もあるが、無理だろう。そもそも国有林の借金は3兆円を超えたのを、全部一般会計に付け替えている。その時点で借金は消えたのも同然だ。1兆3000億円だけは国有林野からの収入を当てにしているというが、これも嘘くさい。返す気などないと見た方がよい。
なんなら林野庁の返済計画を見たらよい。年々、あり得ないほどの金額を債務返済額に繰り入れている。平成29年度まで90億円だったのが、30年度からいきなり200億円に跳ね上がり、その後も増額。平成60年には470億円まで増やせて返済が終了するという見込み(夢物語)だ。まあ令和に変わったから御破算かな?

いずれにしろ、今後は政策的に国有林も民有林も伐られて、全国にはげ山が増えるだろう。本当に林業の振興を考えるのなら、その時に森林が残っている地域こそ可能性がある。森が木材がなくなった、と言われ出した時代に、森林資源を保存していた山こそ、本当の意味で宝の山となる。

 

 

 

 

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コメント

戦後の一時期、林業で大儲けした時代がありました。当時で数百万円の収益があり、現在の数億円ということになります。億万長者が多数林業家で出たのだそうです。
山が荒らされ、木が事実上減少すれば希少価値が出てきます。それと海外からの輸入が困難になれば戦後の一時期と同じように、また今の億万長者も夢ではありません。ただし、戦後のように1ドルが360円という円安になる必要がありますが、たった半世紀で今のレートになったのですから、同じようにこれからの半世紀で円の価値がなくなり輸入する力がこの国になくなる可能性はあります。その時、やっと林業で大儲けできる時代となりますが、残念ながらそれには参加できません。
この国は持続性と平準化が特に苦手な特性があるのでしょうか。博打好きな国民性なのかもしれません。

長期展望を持って計画するのが苦手なんでしょうね。山に森がなくなったらなったで、どうするかその時に考えるんじゃないですか (゚o゚;) 。

博打は、常に逆張りが基本です。林業も逆張りすることをお勧めします。

こんなの出てましたよ。

うちの県の業者たち、特に木材系は浮き足立ってますけど、年間20町歩じゃインパクト無いような気がします。
正直、これで県としてやりたいですかと協議されても、どうぞご自由にとしか感じません。

国有林が多い県だと違った感想なのかもしれませんけどね。

作山で台湾にいました。このブログ、海外からはコメントできないように設定されているようで……というわけですが、台湾では現在林業をやっていません。山の木は全面的に伐採禁止なのです。
かつて伐りすぎて山を荒らした経験から決まったようです。つまり林業は実質的には禁止。(平野部でやっているとか)
ま、これも極端ですが、自国の森林を守るための決断なのでしょう。そして、海外から木材の輸入ができなくなったとき、台湾は宝の山を抱えることになります。
さて、国土の将来を考えているのは日本か、台湾か。(ここで台湾が国か?なんて無粋なツッコミはしないように。)

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