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森と林業の本

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2019/07/10

MMTは将来への先送りか、先食いか。

学生時代の記憶だから何年前だろうか。林学の授業で戦後の林政を学んでいたら、「将来の蓄積」を先食いする理論が登場したことがある。うろ覚えだけど、紹介しよう。

戦後は、戦災復興と高度経済成長による木材不足が顕著で、しかも日本の山ははげ山だらけ。一方で、そのはげ山に大造林が繰り広げられたか人工林面積は激増しており、それらが育つ将来は森林蓄積が非常に増えることが予想?期待?されていた。

木材不足対策として外材輸入が解禁されたが、やはり国産材業者にとっては日本の木がなければ利益を得られない。そこでもっと山の木を伐りたがっていた。そんなときに登場したのだ。将来は非常に多くの蓄積が生まれるのだから、その分を先に伐って木材を得ても、日本の国土の森林は減らないというわけだ。私は首をかしげつつも、十分に理論を消化できなかった。

果たして、こんな理論で政策が実行に移されたのかどうか知らない。ただ、今からすると森林蓄積は増えすぎたと嘆いていてるのであるが……。もっとも、この理論もおかしい。当時伐ろうとしたのも残された太い木であり、植林したての細い稚樹ではないのだから。生態系も生物多様性も無視しているし、森林資源は単なる足し算引き算では計れないものである。
素人的に考えても、将来育つ分を先に収穫してしまうことがよいこととは思えない。若いサラリーマンが、(将来得られるであろう)退職金分の金を先に使ってしまったら、どうなるのか。

 

なんだか同じような理論が経済界に登場している。「MMT」だ。アメリカ発の経済理論Modern  Monetaey  Theory=現代金融理論、現代貨幣理論である。

政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政破綻せず、インフレはコントロールできる。もっと借金して財政出動すべきだ

ようは赤字国債をどんどん発行して金回りをよくしろ、という理論である。デフレと財政赤字が経済回復の足を引っ張っている中で、もっと金を出させるために考え出されたように見える。
国債という借金がいくら増えても財政は大丈夫、借金は永遠に先送りできる、というわけだ。国は永遠に続くから、借金は永遠に先送り。あるいは(将来の)自国民なら踏み倒しても構わない?という発想か。とにかく、今の自分を豊かにしてくれという欲望が考え出すのだろう。

そんな過激な主張が、日本でも広がりつつあるようだ。いや、そもそもMMT自体が日本の財政事情をモデルにしているように感じる。「日本はあんなに赤字国債を発行しているのに財政破綻しないではないか。インフレどころかデフレではないか」と。

耳障りはよい。借金し放題を理論的に認めてくれるのだから。1000兆円を超える借金なんて返せるわけないから、永遠に先送りして、今の豊かさを享受しようよ、という悪魔のささやきのように思える。

なんか、リーマンショックにもつながったデリバティブ金融商品にも似ている気がした。債権を分解してリスクを取り除いたりリスクだけを集めた商品を作り上げそれなりのメリットをつくって販売すれば、どんな低所得者でも家を建てられる……というサブプライムローンみたい。今の所得が少なくても借金をし続ければ金回りをよくできるよ……。

日本の林業という小さな舞台で考え出された理屈は、世界経済まで応用できる優れたものであったのか? でも森林を先食いしたら、回復するまで数十年数百年かかる。一方で経済が破綻しても、その被害は人間社会だけで終わるか。さて、どうなるやら。

 

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コメント

ヨコワと杉の話、末期的MMTの話、うれしく賛同します。
今のままだと、カネがこけたら皆こけるのが目に見えています。
森はカネに関係ない資産であってほしいと願います。
金主主義の研究に取り組んでいます。
今読んでいるのは、「時間かせぎの資本主義―いつまで危機を先送りできるか」という本です。
またコメントします。

まさに時間稼ぎであり、未来をみない資本主義、刹那的資本主義ですね。今が豊かであって欲しいという、ある種の感情の赴くまま政治の末路です。
そこでは常に若者が犠牲にされる。

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