日本の林業は、ESG投資かダイベストメントか
ESG投資というのが、ようやく日本で注目され始めた。これは環境、社会(責任)、ガバナンス(統治)を重視した投資である。
環境や社会に与える影響や、法律などのルールに従った事業であることを投資の基準とするもので、投資も、そうした分野に目を配りながら案件を選ぶことで社会をよくしていく原動力にする……という意味がある。
欧米では森林(林業)に対する投資も、このESGに適合しているという。つまり林業は環境をよくし、社会責任を果たし、企業内統治もしっかりされているものと見られているのだろう。森づくりは地球環境(生物多様性、地球温暖化防止など)に寄与する産業と認められている。
日本では、森林への投資などゼロに近い。投資してもリターンがほとんど見込めないからだ。莫大な税金(補助金)を投入しても、ブラックホールのように吸い込んで外に何も出さないからだ。注ぎ込んだ税金以上に稼いだ例があるのなら教えてほしい。
だが、ESG投資の理念からすれば、日本でも森林が投資対象にならないか……と思っていた。長期的に見れば社会貢献や排出権などの面からプラスになる要素がある。チャンスだ! と思っていた。
そう期待していたのだが……世界はさらに進んでいる。
今や「ダイベストメント」だそうである。これは、ESG投資の裏返しで、「投資撤退」を意味する。環境や社会に悪影響を与え、ルールを守らないところには投資しないという方向性だ。地球環境や社会、健康を脅かしかねない企業への資金供給を止め、持続可能なビジネスへの転換を促す。規制強化などで業績が将来悪化する恐れがある企業のリスクを指摘するという意味もある。
世界でダイベストメントを表明した機関数は900を超えるとされ、その運用資産総額は7兆ドル(約800兆円)にも上るそうだ。しかも、これは急速に膨らんでいる。なんたって1年前は6兆3000億ドル(約700兆円)足らずだったのだ。ぐいぐい伸びていることを感じる。
今のところ、ターゲットは石炭火力発電やタバコだそうである。結構な力を持っていて、ダイベストメントの対象に選ばれると、企業は事業を展開するのが不可能になる。かなりの数の石炭火力が撤退に追い込まれた。また古くは、アパルトヘイトを行う南アフリカにダイベストメントを仕掛けられて、南ア政府はギブアップしている。
この理念からすると、日本の林業はダイベストメントに相当しそうだ。だって、明らかに森林環境を破壊し、地域社会を破壊し、違法伐採が横行しているからである。もともと投資はなかったけど、今後も投資してはダメな案件というわけだ。
日本の林業は、世界の潮流であるESG投資が回ってくる前にダイベストメントの波に飲み込まれてしまうのだろうなあ。
« カルピスの日に思う台湾総統選 | トップページ | 麦わらストローが商品化! »
「政策・行政関係」カテゴリの記事
- 国有林の増伐計画と予算要求(2024.11.26)
- FSC30周年に寄せて考える(2024.11.14)
- 「スマート」なモデル地区(2024.11.05)
- 台湾の街路樹(2024.09.29)
- バイオマス燃料の調達(2024.09.01)
コメント