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2019/07/14

宮崎県の盗伐業者、ついに逮捕

宮崎県の盗伐業者が逮捕された。これはWedge7月号の記事冒頭で取り上げた宮崎県国富町の事例の当時者である。私は、新幹線に乗り換えるホームで聞いた。思わず小躍りしたよ(笑)。

ここでは一報を伝えたNHKの記事を紹介しておく。

逮捕されると、会社名や社長名をようやく書ける。日向市の素材生産業者「黒木林産」社長、黒木達也容疑者である。実は、私は以前から合法・違法にかかわらず素行の悪い会社として聞いていた。南九州に広がる100ヘクタールを超える皆伐を行ったり、各地に広がる荒っぽい作業を行った業者としておそらく10年以上前から知られていたはずである。

もっとも今回の容疑で立件されたのは7本の無断伐採にすぎない(立件するのは面倒なんだなあ、と改めて思う)。しかも容疑は森林窃盗であるが、本当は有印私文書偽造とか、詐欺罪にも相当するはずだ。今回の現場だって実際に伐られたのは何百本にも及ぶし、さらに多くの盗伐事案を合わせたら何千本、ほかの業者の行った盗伐を含めたら何万本にもなる。まさか7本分だけで済まされたら、たいした罪にならないだろう。あっさり執行猶予がついて釈放されるのではないか。そんな程度で幕引きをさせてはならない。


もう一つ重要なのは、この黒木林産が宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会(県素連)の「合法木材供給事業者」に認定されていることだ。しかも国からも県からも助成金も受けていた。この金で林業機械を購入しているのである。早くから問題のある企業とされていたにも関わらず、しっかり「合法木材供給事業者」に指定したのは結局のところ宮崎県であり国であるのだから話にならない。宮崎県は「本県の伐採業者のイメージダウンにつながりかねない」とコメントしているが、何をか言わん、すでに昔からイメージは地に落ちているよ。もちろん林野庁も。「意欲と能力のある林業事業体」(森林経営管理法や改正・国有林管理経営法に対応できる事業体)の中にも、盗伐を疑われている業者がたくさん入っている。これを精査して追放しないと、やり得にしかならない。

もしかしたら、盗伐ができなくなったら宮崎の木材生産量はガクンと落ちるのではないか。。。

 



「盗伐か誤伐かわからない」という言い訳は通用しない。だから「境界線が明確でない問題」「所有者が不明問題」とは基本的に関係ない。

3_20190714171101

なお宮崎県の盗伐業者は「我々は逮捕されない」と豪語していたと言う。なぜ、そう口にできたかも興味深いが、同時に「逮捕されたら、全部しゃべる」と(警察側に)脅しをかけているとも聞く。つまり、裏でつながっていたことを話されたら困るから逮捕できるまいと思っていたのではないか。ま、警察も甘くない。逮捕しても全部しゃべらせない(笑)。都合の悪いことはカットするだろう。

この1件だけで収束を図ることのないよう監視を続けたい。

 

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

贈収賄、灰色どころじゃないですね。

本当は、贈収賄や警察との癒着も暴いてほしいところです。

こんな輩が大きな顔をして素材生産が出来る宮崎県。警察もあてにならないって?
明治初期かぁ?(笑)

こうゆのには、政治家がからんである、
私のしってらのは、りっけん民主党関係者でさねん。

はて、宮崎県には立憲民主党の国会議員はいませんが。

自民党議員ならたくさんいて、農林族が並んでいますねえ。実際に盗伐事件を握りつぶしたという自民党の某副大臣の名も噂されていましたね。それに歴代の林野庁長官が知事などを務めることも多い土地柄です。

他が不正をしているから、自分もやらないと損だ…と言う思考にはならない。
馬鹿正直と言われても、適切な森林整備を行う事を目指す❗
宮崎県の真面目な業者がそう考えると同じく、我々もそう考える。生き方の問題だ。負けるな❗

宮崎県だけでなく、全国的に林業関係者のモラルハザードが進行していると感じます。とにかく木材を出せば金になる、としか考えない業者が増えたのではないか。森林整備なんて頭の隅にも置いていない。
そのようにしたのは、結局のところ、行政の施策です。

盗伐の問題と、再植林に関する罰則規定がはたらいていない問題は密接に関わっているはずだと思うのですがその辺りはどうなのでしょう。
また問題の大きさで言えば、国有林の材積量算出(つまり国の財産としての計上量)の方が規模としては遥かに上な気がします。こちらについてはいつかメスが入るのでしょうか。

盗伐は盗伐、犯罪行為ですよ。しっかり監視して罰則を与えないから跋扈する。再造林も、ちゃんとしたか確認してしていなかったら罰則を与えるのが筋です。
現実は、伐採届も出すだけ、終了後の確認もしない。一つの伐採届でどこをどれだけ伐っているのか、伐採後はどうなっているのか、足を運んで確認する制度にしないと蔓延しつづけるでしょう。
しょせん、この手の輩に倫理を求めても無理だから。

法を犯す者には厳罰を与え資格を剥奪し、適正に森林整備を行う者には提出書類の簡素化やデータ貸与等の出来る限りの協力して行く事。これが国を含めた行政の役目だと考えます。地元で作業を行う者は、地権者を裏切る事なく適切な森林整備を行う事は当たり前です。例の輩は他の地域からやって来る無法者じゃないでしょうか?行政は今後、作業を行う者の厳重なランク分けをするべきですね。

逮捕されたのは宮崎県日向市の業者ですが、隣県はいうに及ばず、宮崎には遠くから業者が殺到しています。聞いただけでも、愛知県や静岡県の業者が来ていたとか。ようは、宮崎ならいくらでも伐れる(盗伐もできる)、そして金になる、と知られているのですよ。

そもそも山の所有者探しや境界立会いなどが複雑になってきてるからこうなる。まず国が地主に対して相続登記などをちゃんとさせること。伐採業者も楽になり言い訳がなくなるし、所有者にも多少なり責任感が生まれる(自分の山があそこにあるんだという意識)。これだけで盗伐はだいぶ減ると思う。そして、悪い奴ら(楽して人の山を切ってる奴ら)はちゃんと捕まえて罰を!じゃないと金を掛けて面倒なことをコツコツやってる真面目な業者が馬鹿みたい。

所有者不明や境界線不確定も問題ですが、今宮崎で頻発しているのは、完全な「勝手に皆伐」、つまり盗伐です。所有者がわかっていて(伐採を許可せず)、ちゃんと地籍調査も済んだ山林が、伐られているのですから。
これは明確な犯罪行為です。

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