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森と林業と動物の本

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2019年8月

2019/08/31

FLASHに宮崎盗伐記事……だけど

写真週刊誌FLASHに、宮崎県の盗伐に関する記事が掲載された。(それをYahoo!ニュースが転載)

中国が悲鳴「日本よ、『盗伐木材』を送りつけるな!」

「『日本から輸入している木材は、盗伐された違法品ではないか』と、中国の環境NGOが日本に弁護士を派遣し、調査しています。ここまで事態を放置した日本政府の責任は、非常に重いですよ」
2017年から衆議院・農林水産委員会で、森林の盗伐問題を追及している、共産党の田村貴昭代議士(58)は、こう憤る。

よしよし。私的には、狙い通りの展開だ。今後は、海外メディアからも発信される予定だ。日本で盗伐が横行していることを。いろいろなメディアが動きだしたのは、私の耳に入っている。「外圧に弱い」日本だから、拡散すべし。遠慮はいらない。たたけ。
 

ただ、内容を子細に見ると、ちょっとなあ……という点が散見される。なかでもジャーナリストの横田一氏のコメントとして書かれていることには、間違いが多い。

度重なる違法伐採で環境破壊を経験した中国は、2017年から中国国内での天然林の伐採を禁止しました。これにより、日本からの輸出高は、前年比で36%も増加。

私の記憶では、天然林の伐採を禁止したのは2000年ごろ。これを期に日本は木材輸出を始めたのだが、その最初に私は立ち会っている。輸出額の増加理由も、これだとするには無理がある。これはライターの勘違いだろうか。

「業界内では、『宮崎県産の木材の8割は違法品』といわれてい る。中国から『盗品はやめてくれ』と、悲鳴に近い訴えが増えています。国辱もいいところです」(林業組合関係者)

これも森林組合の間違いだろうなあ。8割というのも言い過ぎだと思うが、これは噂としてだからしょうがない。しかし、本当にこのコメントを取れたのだろうか。森林組合が直接輸出しているケースは多分、ない。これもライターの思い込み?
 

まあ、揚げ足取りをするつもりはない。とにかく、メディアはバンバン盗伐のことを報道してくれ。中国に馬鹿にされていると聞けば、頭が沸騰する輩もいるだろうが、それだけ効果がある証拠。なかには報道を恨む連中もいるだろうが、そんな輩こそ盗伐の共犯者だろう。最近は、木材だけでなく、薪やシイタケ原木用の盗伐もよく耳にするし、事実私の山でも伐られたことがある。それが悪いことだと思っていない人間が多いということだ。林業家を名乗るのなら、盗伐を恥と思うことが原点だ。

報道されるのがいやなら襟を正せ。自助能力がないと感じるから、外圧なのだ。

 

2019/08/30

イオンモールの素敵な店

雨の日はイオンモールを徘徊して……おっ、なんだかスッキリして素敵な店? と思って近づくと……。

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!!!

「閉店のお知らせ」付きであった。

ガランドウにするのが寂しいと思ったのか、イスとテーブルを並べてあるのだけど、これぐらいが素敵に見える。ほかの店(開店中)がゴタゴタしすぎなんだな。
イスが木製だからだろうか。落ち着いて座りたくなる。これがパイプイスだと素敵に見えなかったはず。

ついでに言えば、やたら館内放送が多いというのも頭が痛くなる。それも内容のない呼びかけやら、音楽やら。あれは頭を麻痺させて、深く考えさせないことでドンドン商品を買わせようということなのか、と思ってしまう。

世にあふれる過剰さを引き算したら、世の中が素敵になると思うんだが。

 

2019/08/29

マクロン大統領の3つの提案

Yahoo!ニュース「アマゾンは地球の肺ではない」を書いた後から、

NASAの調査による、アマゾンはトータルでは二酸化炭素を吸収している という記事を示す声を各所からいただいた。問い合わせも相次いでいる。

ま、これにマジに推論すれは、アマゾンは成長途上の若い森なんだろう、というしかない。成熟していないから、まだ成長余力がある(=二酸化炭素を吸収する)ということになる。さもないと原理的にありえない。それとも、まったく知られていない二酸化炭素を吸収する細菌が存在するとでも想定するか? アマゾン川の底に酸素発生装置が仕掛けられているとか? その前に調査結果自体を疑うことも必要だけど。

アマゾンに熱帯雨林が成立したのは数万年前らしく、数億年前から森林があったボルネオやアフリカ中央部と比べたら若い。とはいえ、それでも数万年経っても成熟していない森って、なんだ? 

おそらく、アマゾン自体が幾度も破壊されて再生を繰り返している森なのだろう。もともと樹種分布の偏りから、アマゾンの先住民が焼き畑をしたり、自分たちに都合のよい草木を植えて改変した証拠が示されているし、自然発火や洪水などで森は定期的に破壊されてきた。だいたい数百年ごとに焼けているというデータもある。そこからの復活途上の森を、NASAは計測したんじゃないか。

森林は一筋縄に行かないというよい証拠だろう。


ところでエマニュエル・マクロン仏大統領は、アマゾンの森林火災を受けて、3つの提案を示している。

1、可及的速やかに再造林できるよう資金を募るため、G7メンバーおよびその他の国々を結集すること。
2、これまでよりもはるかに強力な火災防止メカニズムを構築すること。
3、グッドガバナンスを見いだすこと。これまでよりNGOや先住民に参加してもらい、産業化された森林破壊プロセスを食い止める必要がある。

2と3に異存はない。問題は、誰がメカニズムを構築するのか、誰がグッドガバナンスを見出すのかという点だけど。それが成立する地盤がないままの絵に描いた餅。きれいごとの机上の空論になりかねない。

だが最大の問題は1だ。再造林を進めるというのだが……。

熱帯雨林の再生を行う技術は確立されていない。部分的にある樹種(その森の主要な木)を育てる手法を開発したというのはあるだろうが、複雑怪奇な熱帯雨林を人工的に再現するのは厳しいだろう。そんなことをしなくても、自然に芽吹く草木があるから、それを大切に育てるべきだ。集めたお金は、森を立入禁止するために使ってくれ。
日本でも照葉樹の森を作るといって、いきなり照葉樹の苗を植えても根付かないケースを聞くではないか。じっくりパイオニア種から育てて遷移させるのがもっとも確実な方法だ。

植林するには、苗や種子の調達の問題もある。

調達できる苗があり、育てる技術もわかっていて、植える経費を少しでも節約するために有用植物を植えた方がいいね、その方が先住民の暮らしにも寄与するから……というわけで、再造林するのはユーカリかアカシア、いや油ヤシが一番!てなことになりかねませんよ(^^;)。アマゾンを油ヤシの森にするのも再生かな?

なんだか、『絶望の林業』と構図が似てきた。できもしないプランを並べて、結局は従来の利権が守られるという……。絶望のアマゾン再生になりそうだよ。

 

 

 

2019/08/28

『絶望の林業』重版、出来!

たまたま見かけた新聞広告。「エコノミスト」である。

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絶望の日韓……。。。流行りか、「絶望」は?


本日、『絶望の林業』の版元から連絡があって、重版が決まった。

重版と言っても部数はしれているが、発売から実質3週間であり、ほとんど書評などマスコミにもネットにも紹介記事が出ていない時期の重版は珍しいし有り難い。あえて言えば、『「森を守れ」は森を殺す』の出版時と同じ状況。あの時代はまだインターネットではなくパソコン通信の時代だったし、ネット書店もなかった。店頭で目にして購入する人が多かったようだ。何より本がよく売れていた前世紀だからね……(遠い目)。

思わず編集者と電話で話したのは、「なぜ売れるんだろうね?」(^o^)オイオイ

正直、さして売れるとは思っていなかった。いや、今も半信半疑。そのうち売れ行きがピタリと止まるに違いない、というミョーな自信があるヾ(- -;)。そもそも林業人は人口は少ないし山村に住んでいて簡単に本屋で買えないし、そもそも林業を論じることが好きな人は少ないから。
これまでの本のタイトルに「森林」「森」を多用してきたのは、「林業」と付けたら売れないと言われていたから。それをストレートに入れてしまった。さらに価格も高め。売れる要素がない。

が、最初に言われたのは、タイトルが強いこと。「絶望」という言葉にインパクトがあったようだ。このタイトルは、「前書き」で触れた通り、当時の私の口癖だったのだが。しかし、林業に「絶望」をくっつけると意外な結果。この先、絶望シリーズが始まるかもしれない。

だが、それだけでは無理だ。

ならば、なんだ。

なんにでも「絶望」したいのか。「日本スゴイ」の裏返しの「ダメな日本」を読みたくなった。
一般人が「業界の裏側」に興味を持ったのか。他業種の不幸は蜜の味……を覗きたい気分。
1年以上前から続けたネットの前宣伝が効いたか。なんしろ、まったく書いていない時期からタイトルだけはブログで紹介していたからね。
実は、世の人の一時の気の迷い? 真夏の夜の夢だった。 (゚o゚;) 

ともあれ感謝。こうした本が売れるのは、逆にとれば林業に興味を持っている人が多いということだ。絶望を知って、オレが、私がなんとかしようと思う人が出るかもしれない。。。。やめとけ。絶対に無理だから(笑)。

 

2019/08/27

インスタとカッティングボード

飛騨で見かけた木工品。

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カッティングボードである。何人もの木工家の作品が並べられている。これこそが、今の売れ筋とか。

近年は高い家具はあんまり売れず小物に人気が移っている。まず器。次にカトラリー(フォークやスプーン、箸など)だった。そして、今の売れ筋はカッティングボードなのだそう。ようは、まな板なのだが……。
どんどん加工度が減っていき、ほとんど「板」やん、と思ってしまった。把手が付いているところに新味があるというか、わずかな腕の見せ所?

だが、ちょっと違った。そもそも使い道も単なる食材を切るまな板ではなくなっているのだ。

そう、この売り場の写真のように、カッティングボードの上に料理を乗せて「見せる」ものになっているのだ。従来の皿やトレイ、あるいはランチョンマットの役割を果たしている。もちろんアウトドアなどで持ち運びのできるまな板としての使い道もあるのだろうが、切った食材ををそのまま並べて食べるわけだ。

これが流行る一因が、インスタグラムらしい。つまり、カッティングボードの上に並べた料理を写真に撮るとインスタ映えするというわけ。実は切るのは別のまな板で、盛りつけだけがカッティングボードになりつつある。

だから木工家も、板に把手を付けるだけでは失格。料理を盛りやすく若干の窪みを持たせるとかの工夫もいるし、何よりデザイン的要素が重要となる。わざと樹皮や節を残したり、木目や色もこだわる。形も四角ではなくナチュラルな曲線にしたり……。センスが問われる。飛騨、高山では木工を学ぶ場が多く、そこから巣立って独立する木工家も多いわけだが、彼らにとって日常的に売れる貴重な商品アイテムになっていた。

まな板でなくカッティングボードと名を変え、役割も変え……もはや商品としても新たな存在になっている。インスタというか、画像で他人に見てもらいたい欲求が新たな商品を生み出すのか。

見習わなくてはならん業界は多いはずだ。

2019/08/26

宮崎県警本部長の交代

宮崎県警の本部長が交代したそうだ。新本部長は、阿部文彦氏(49)。

なぜ、こんなローカルニュース?に注目するかというと、やはり盗伐のメッカ! 宮崎県の対応現場であるということ。

この阿部氏、前歴は警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課長。主にサイバー犯罪対策の担当だった。兵庫県警察本部の警備部外事課長、警備課理事官や薬物銃器対策課の指導官……なども勤めている。

なんか場違い?のように感じるだろうか。しかし、上記の役職の多くが生活安全課関係なのは、ちと面白い。盗伐、つまり森林窃盗や詐欺もこの部署の管轄だからだ。そして、より面白いのは、東京大学農学部出身であること。農学部から警察庁に入った人も珍しいと思う。だから農林業に詳しいとは言えないが、それなりに若いころは関心を持っていただろう。

Ffl

ま、それだけなんだが(^^;)、実は宮崎県警や地検では、動揺が走っているという情報が寄せられている。

これまで悪質だったのは、盗伐だけではなく、その被害届を受理しない、してもほとんどの案件を速攻で不起訴にする県警、地検の対応だと言われているからだ。そして、阿部氏の赴任は、警察庁が宮崎県にメスを入れるためだと。……うがちすぎかもしれないが、もし、警察庁がそれほどの覚悟があるなら幸いだ。

実は不受理や不起訴は、盗伐だけではないらしい。私の所に寄せられたのは、まったく別の事件である。自分の(夫婦共有)財産の名義を勝手に書き換えられたケースでも、被害届を受理しないのだそうだ。あきらかな有印私文書偽造なのに、その証拠となる文書の開示もさせない。
どうやら、盗伐だから被害届を受理しない……という見立ては必ずしも正しくなかったかもしれない。県警ぐるみで被害届を受け取らず、不起訴にして事件発生を隠す体制なのかもしれない。となると……これは法務局案件? 仕事したくないのか、事件の数を減らしたいのか。宮崎県の闇は深い。

いや、本当に宮崎県だけなのか。盗伐も近隣の鹿児島や熊本、大分でも発覚し始めた。また京都からの告発もある。おそらく、まだまだ各地にあるはず。東北などはかなり臭う。もはや、日本社会はここまで来ていたか、と思わせる。

さて、新本部長のお手並みを拝見したい。今後、盗伐事案がどれほど立件されるか注目しよう。宮崎県が盗伐の取り締まりでも日本の最先端を進んでほしい。

 

2019/08/25

Y!ニュース「アマゾンは「地球の肺」ではない……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「アマゾンは「地球の肺」ではない。森林火災にどう向き合うか」を書きました。

実は、このアマゾン火災のニュースは幾度もネットで目にしていたが、忙しいさなかだったので無視していた。そして飛騨高山の「聖地巡礼」に出かけていた。するとメールが来たのである。Yahoo!ニュースの編集部から。

この記事について、何か書きませんか? コメントを付けませんか?

うううむ。聖地か、アマゾンか。。。。

ま、現地で何か考えたわけではないが、忙しいので(^^;)、そうだなあ、帰ったらコメントぐらい付けようかなあ……と思っていた。

昨夜は帰りついたものの疲れていたので無視。そして今朝、さあて、どうするか。

コメントを付けるのは、意外と面倒だ。元記事に準拠しないで勝手な自分の思いを書くのは本来の意味のコメントにならない。

ええい、と自分の記事として書くことにした。

早かったよ。おそらく15分~20分くらいで仕上げたのではないか。いつもは原稿をイジイジといじって時間をかける私が、たまには早書きするのだ。昔の新聞記事を書いていた時の感覚に近い。まあ、えてしてこうした早書きの方がよくできていたりするのだが。内容的には、昔から唱えていた「森林は地球の肺ではない」論を基調にすればよいが、結論はどうするか? やはり「手を付けるな」だな。。。

さあて、飛騨で見てきたこともイジイジしつつ書こうかな。

 

 

 

2019/08/24

飛騨高山名所巡り

昨日、今日と飛騨高山を訪れていた。

飛騨と言えば、飛騨の匠と呼ばれる大工や木工の聖地。近頃は広葉樹のまちづくりなども売り物にしており、森と林業、そして木材の話題が尽きることはない。そこで私も聖地巡りをしてきた。

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まず訊ねたのが、飛騨市図書館。いわずと知れた、「君の名は。」で重要な秘密を解きあかすシーンの舞台。

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これも外せません。飛騨古川駅。渡り廊下から眺めないと、この駅はわからない。

お腹をすかせたら、古川で食べるのは……。

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君の名は……ではなつ、君のそば……。駄洒落かい! おろし蕎麦をいただく。ま、蕎麦はおいしかった。

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なんと、この酒も商品化? 口食酒ではなく、口神枡であったか。。。

あ、もちろん、「君の名は。」の聖地だけではない。朝市も覗いてきたし、朴葉味噌も食べた。高山ラーメンも飛騨牛だって。

これが正しい飛騨の楽しみ方であろう。

 

2019/08/23

毎日新聞奈良県版に『絶望の林業』

毎日新聞の奈良県版に、『絶望の林業』出版の記事が掲載された。

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なかなか大きい……写真が(^^;)。

戯れ言として話した「林業界での仕事がなくなることも覚悟で」書かれてしまった(^^;)。いや、戯れ言というより「こんな林業界の仕事なんかなくてもいいや」という気分を語ったのである。

なお中見出しにある「大和森林物語」とは、現在毎日新聞に連載中の記事のこと。

ちなみに来月だが、奈良県内でこんな講演も行う予定。まだ先だが、先行発表。

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2019/08/22

Yahoo!ニュース「ニイタカヤマに初登頂したのは誰だ」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「ニイタカヤマに初登頂したのは誰だ? 知られざる探検家を探れ」を執筆しました。

これは、台湾取材による土倉龍次郎ネタの第2弾。

というか、ある意味偶然だ。台湾で知り合った謝英俊氏より、送られてきたメールで得た情報なのである。なんたって、龍次郎が玉山(新高山)に登っていたかもしれない、そしてそれは初登かもしれない、と知らされたら……もう、一瞬身体が震えましたよ。

これまで「伝説」だったことが、「現実」になるかもしれないのだから。

それから情報交換するとともに、こちらでも文献を探して調べてみた。国会図書館まで行ったのだよ。すると、おぼろげながら可能性が見えてきた。(もっとも、戦前の台湾に関する日本語文献は日本より台湾に多く残されている。謝さんの発掘がなければ気がつかなかっただろう。)

もっとも、まだまだ十分な裏取りはできていない。今回の記事は、むしろ世間に「どこに情報あるか知りませんか~」という呼びかけでもある。

「台湾林業の父」「台湾発電の父」だけでなく「台湾の探検家」という視点も必要になってくる。長野義虎についても調べなくてはならないし、ほかにも森丑之助や鳥居龍蔵など関係者が増えていく。どんどんテーマが広がってしまうのである。

 

せっかくだから土倉家(龍治郎系)に残されていた台湾先住民高砂族の写真を初披露。結構貴重である。場所や年月はわからないのだが、多分探検の合間に撮ったものだろう。

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2019/08/21

切株の上の……メルヘン

暑くて運動をしなくなったら、身体がなまってしまった。

そこで一念発起。森を歩こうと思ったが,たいていのコースは経験済みだ。どうも既視感のあるルートは面白くない。いままで歩いたことのないコースは……と考えて選んだのが、野崎観音へのお参り。落語の「野崎参り」で有名だが、実は浄瑠璃にもなった悲恋の舞台でもある。ここまで行くには、生駒山を登って大阪側に下りて、また登る……ということになる。道は知らないがきつそうなコースだ。

覚悟を決めて、まずは生駒山の飯森山に登り、そこから下りていくのだが……その山道で見かけたのが、切株。

 

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折れたのか何かで処理したのだろうが、中途半端な高さの切株だ……と思ったら、その上に何かある。これは、「切株の上の生態系」シリーズで使えるような植物が生えているのか?

が、近づくと意外なものがあった。

 2_20190821221701 ン? これは……。もっとアップすると。

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なんと。コケの小屋に住むコビトさんがいたではないか(^o^)。

このポーズは何か楽器でも弾いているのか?

なかなかやるねえ。こんな造形を森のアチコチに設置したら楽しいだろう。よく子供たちを森に連れて行って森林環境教育~!とか言っているが、実は森に入れば子供はすぐに喜べるわけではない。何か引っ掛けるネタがいるのだが、そこにこんな造形をいっぱい森の中に仕掛けたら夢中になるのではないか。

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チェンソーアートでも、切株に彫るスタンプカービングというのがある。

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以前、我が家の庭にも異空間への入口を設置したことがある。ミョーな遊具を置くのではなく、想像力をくすぐる作品がほしい。

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これを森全体に広げられたら楽しいと思うのだよ。。。

ちなみに久しぶりの登山はメチャきつかった。暑さと急坂にやられてへたりました。

 

 

2019/08/20

檜タイルマットの製造地は……

ホームセンターに寄ると、やはり木製品チェック。ホームセンターは消費者に直結しているから、イマドキの木製品動向を知るにはなかなかよろしい。

で、今回見つけたのは、檜タイルマットであった。

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見た通り、ヒノキの板を正方形に張り合わせたものをタイルと呼んでいるようだが、これを並べると簡単にフローリングをヒノキにできます、という商品だ。裏に滑り止めのゴムも張られている。

これを見て、すぐに思い出すのか西粟倉村の「ユカハリ・タイル」だろう。スギのほかヒノキのタイルを売り出してヒット商品になっている。理屈は一緒。寸法などは比べていないが、ほぼ同サイズに見える。

西粟倉製は、パテント押さえていなかったのか。いや、簡単すぎてパテントにならなかったのかもしれないし、別の手法で張り合わせたり滑り止めを付けたら回避できるのかもしれない。

ともあれ、これを作っているのは……。裏のラベルを見る。

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わはは。想定通りだった。ベトナム製。ヒノキは日本から輸出して、加工を向こうでやっているのだろう。

値段も、郵送料なども考えないといけないが、かなり安い。3分の1近く? 出来上がりは……私の目でチェックしたところは、遜色なかった。細かな加工も丁寧にやっている。ベトナムは木工王国だ。ぬかりはないと見た。

こういう事態は十分予想された。というか、私は日本のヒット(木工)商品は、遠からず海外で真似されて逆輸入される時代だと思っていた。もはや日本は、消費国であって、生産国としては落ち目なのだ。

では、これを防ぐ手だては? ないのである。特許を取れるものはよいが、単純な構造・発想の商品では該当しないし、特許を押さえる代金を支払い続けるのが厳しいケースもあるだろう。

いや、一つある。

それは、次々と新製品を出していくこと。常に流行の最先端を押さえ、同時に製造元をブランド化すること。真似する時間を与えない。似非商品が出たころには、次の商品に軸足を移していること。そのうち、次々と人気商品をつくる製造元そのものが価値がつく。それが差別化となる。

それしかないわなあ。製造品質や、価格で張り合っても勝てないよ。でも、肝心のアイデアとデザイン能力を失いつつあるのが日本の現実である。

 

2019/08/18

銘木揃いの住宅のお値段

初対面の人からSNSで誘われて、大和郡山市の建築現場に行く。

ここで使われる木材をコーディネートしたのだというが……。もう、銘木がてんこ盛り。

まず外装側壁。

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これ、スギの赤身?しかも和釘。

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仏間の框には、黒柿を入れている。

天井には太い曲がり松の梁が入っているし、すごい伝統的和風建築か、と言えばそうでもなく、洋室もある。

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これはダイニングキッチン。扉やカウンターはアパの大木だ。フローリングはカリン。ほかにも国産材だけでなく外材も含めて銘木がてんこ盛り。トイレにはクス。30種は超えるんじゃないか。わざと和室に外材も使っているし、国産ヒノキも巨大節のあるものを利用していたりする。部屋数も2階を含めて数多い。

なんとも贅沢な家……とても下々の人間には手が出せない豪華な住宅。と思いかけたが、聞いてみると、施主は30代のサラリーマン夫婦だという。普通にローンを組んで建てているのだそうだ。私の想定では4000万円前後か。

銘木を探して取り寄せて使うととてつもなく高くつくが、在庫を上手く使えば十分収まるそうだ。これこそ適正価格。
銘木・役物の名で時価になりがちな日本の不合理な流通価格を見直すことはできるのではないか。

 

「喪失の国、日本」で知る木の文化

ブックオフだったかで見つけた古書『喪失の国、日本・エリートビジネスマンの「日本体験記」』(文春文庫)。

Photo_20190818100201 M.K.シャルマ著 山田和訳

インド文化というか、インド人のメンタリティを知りたくて購入。日本は近年、インド経済圏に食い込もうとしている。だが、中国人も音を上げるインドビジネスの厳しさに、日本人が太刀打ちできるのか? ちょうどカシミール地方で起きている不穏な動きも気になるところ。多文化が混濁?しているイメージのあったインド文化だが、今やヒンズー至上主義が席巻しているらしい……が、私は肝心のヒンズー文化をよく理解していない。新たな世界のホットスポットだけに注視したい。……という気持ちであった。

これは1990年代前半に日本に滞在したインド人の記録なのだが、訳者の奇跡的な著者との出会い、余りに詳しい日本社会の描写などから想像するに、訳者の意訳?部分が相当入っている気配はする。原著は私家版だとかで、他者が確認することもできないだろう。ただヒンズー教徒インド人のメンタリティを知るには恰好の書となった。

一つ一つのしぐさや思考方法がここまで違うのか!と感動するほどで、カーストの文化?も、いかに根深いか思い知る。一つ一つを取り上げても侃々諤々の議論ができそうだが、まず奈良を訪れた際の感想を紹介したい。

おどろいたことに、いたるところに鹿がいた。牛も、馬も、ラクダも、象もまったく見かけなかった日本で、突然鹿があふれているのを見て、私はどう理解していいのかわからず、佐藤氏に「これは食用か」と訊ねて笑われてしまった。」

この一節だけでも楽しい(^o^)。奈良の鹿に関しては、「インドだって牛が町中を歩いているじゃないか」という声があるのだが、発想が違う。

その後、法隆寺や中宮寺などを訪れて、日本人の樹木への深い理解に驚嘆したという。

日本は、思想と美学のすべてが木への解釈と共振している国なのである。
インドでは、大樹の樹上はジャッカルや魔物の棲む所だが、日本では神が降りる場となっている
インドやヨーロッパでは、古くから「生命樹」という紋様が愛された。しかし日本では生きた樹木そのものが愛された。抽象と具象との差は大きい。日本では、樹木は生活の中に「生命」のイメージをもって深く浸透し、精神世界で大きな規矩の役割を果たした。
日本人が木を生きたまま捉えようとした証拠は、「白木」と呼ぶ塗装されていない状態を好むことにもよく現れている。

その後、大阪に行くが、コンクリートだらけで「木の文化」の片鱗も見られず、別の国みたいだと、不協和音を感じている。

そして日本の木の文化を論じる。

日本人はこの二千年、何を作るにも木を用い、木と向かい合って生きてきた。木と相対する無限の時間の中で、人生と美とを学んだ。木の中に神を見、木の中に心を見た。木は人生の教師であり伴侶であった。そのような木との交感の中に、日本文化が生まれたのだと私は考える。」

さて、どうだろうか。本当に2年足らずの滞在だったインド人がここまで深い考察ができるのか?なんか日本人が望んでいる日本文化論ぽくないか?……という疑問はさておき、インド的視点を知るつもりで読めば興味深い。

ちなみに、彼の滞在中(1992年~)にインドではヒンズー至上主義者がモスクを焼き討ちするアヨーディヤー事件が起きる。それは各地に飛火し、パキスタンの核保有へと広がり世界を震撼させたのだが、それについて彼の見解も面白い。ただ、当時は過激派の犯行とも言えたが、今や国の指導者が同じようなことを口にするのだから、現在の方がより深刻だろう。

著者は、当初日本の文化に感動していたのだが、やがて幻滅し始め、インドと日本の文化的狭間に落ち込んでいく。そして文明社会への危惧・絶望を強めていった……らしい。

若干古い本(初出2001年)だが、インドとの結びつきを強めようとしている今だから読んでも面白いのではないか。

 

 

2019/08/17

林野庁マンガ「女神コウリン」

突然だが、ブログのデザインを変えた。と言っても、これまでの図案テンプレートが、来月には使用できなくなるかもしれない、という案内が来たから。うちのが該当するかどうかもはっきりしないが、ここ数年変えていない気がしたので、新しくすることにした。もっとも、従来のテンプレートの流用だから、あまり変わらない。そのうち思いっきり斬新にしようかと思うが……。


さて、林業界の広報にもイラストやマンガが多用され出した。とくに林業マンガがよく登場する。これは、たまたま林野庁の女性職員の中にマンガを描く人がいたからだ。その一つが広報誌RINYAで発表された「お山ん画(おやまん が)」だ。その紹介もした。

これを描いているのは平田美紗子さんだそうだが、今年4月に北海道森林管理局に異動したそう。こちらの企画課事業企画係長なのだが、本庁の林野図書資料館にも籍を残すとか。これはマンガを書き続けるだめだろう(^^;)。

で、今回連載を始めたのが「林業のススメ」
テーマは高性能林業機械(通称コウリン)に焦点を当てている。そして主人公?が「女神みどり」という女性。つまり「女神コウリン」。降臨でも光臨でもない。その機能を解説しながら、林業の現場を紹介する。。

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ほかにも何種類か、林業マンガを書いているようだ。詳しくは、林野庁ホームページのイベント情報欄


最近は、さまざまなニッチな職業をマンガに取り上げるのが流行っているのだから、林業を舞台にしたマンガが登場してもよいはずなのに、イマイチありませんね。書き手が林業を知らないのか、取材も難しいからか。
ちなみに私も林業マンガの原作を提案したことがある。調べたら10年も前だった。

せっかくだから、誰か『絶望の林業』をマンガ化してくれないかなあ。いかに林業界が理不尽で不条理で危険で、暗黒面に満ちているかを描く。タッチは絶望感の溢れる諸星大二郎みたいなのがいいわ。

 

 

2019/08/16

『絶望の林業』をHP掲載

ふと、『絶望の林業』をホームページに掲載していないことに気づく。

最近は、わりと放置状態だが、私のホームページもあるのですよ。実は二段仕込みで趣味と仕事の両方なのだが、「仕事館」にはこれまで出版してきた著作を紹介している。そこに『絶望の林業』を追加することにした。

森林ジャーナリストの仕事館 絶望の林業

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あわてて作ったので、何の工夫もない。背景を珍しい紫にした程度(^^;)。
ただ「目次」は全部載せたうえに、「はじめに」を全文掲載。ここでしか(無料で)読めないから、ご笑覧あれ。
ここを読んでから本物の本を手にとるかどうか決めていただいたらよい。

今後、手直しを続けようと思うが、まずは告知しておく。さらに無料で読める章を入れようかと思案中。

なお、趣味の「安楽椅子探検家のヴァーチャル書斎」もよろしく。今後は、こちらにも力を入れていく所存だ。趣味を仕事にして、両方を合体させようという魂胆。

 

2019/08/15

森林オフィスとリゾートオフィスの違い

台風直撃の日。不思議と生駒は雨も風もほとんどない。やはり霊山に守られているなあ~と思った1日であるが、ここ数日は帰省していた娘のアテンド係(^o^)。そして、本日、東京にもどる日でもあった。
帰る夕刻の新幹線便の動向を探る。「無理なら、もどってきていいんだよ~」と何度も繰り返しつつ、娘を見送る。そして娘は道中をLINEで実況。幸い、どこの電車も止まることなく、無事に走ったようだ。


世間はお盆であり仕事は休みだろう。私も、娘の帰省中はほとんど仕事をしない。が、そんなときでも仕事したくなるオフィスはないか。

そこで、私が講演などで時折使っている写真。

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森林オフィス……と呼んでいいいと思うが、ようは森の中に儲けられた半地下のオフィスだ。

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これは、内部から外を見た様子。仕事場としては、極めてスタイリッシュというか、人工的な清潔・便利さを追求しているが、窓?の外には里山の木々の風景が広がっている。こんなオフィスが身近にあれば飛びついてしまう。

残念ながら、この写真の施設はスペインにある模様。でも、日本でもつくれば人気を呼ぶのではないか。サテライトオフィスとして売り出せないか……という提案用に使っている。

それに似た施設が長野県信濃町に生まれたらしい。ノマドワークセンターだ。安らぎの森オートキャンプ場内にあり、自然の中で仕事のできるリモートオフィスというコンセプトである。運営は埼玉県のNPOだ。

もっとも、上記の森林オフィスほどスタイリッシュではなくて、ようは遊休の体験施設を改造したもの。施設内にはコワーキングスペースや会議室、3Dプリンタや各種工作機をあるラボを揃え、wifiも完備でネットで仕事ができるということだが……あんまり詳しい内容は掲載されていない。ノマド(遊牧民)のように移動するビジネスマン狙いのよう。リゾートオフィスとでも形容すべきか。

ただ、私の感想としては、ここでは仕事したくならないなあ。やっぱりリゾート施設ぽい。周りは遊ぶところばかり。多分、滞在したらだらけるだろう(笑)。

オフィスなんだから、仕事モードにハマるオフィス・デザインにしてほしい。リゾートで仕事というのは矛盾している。あくまで仕事環境としての自然(森林)を取り込んだ環境。。。どこか本気で森林オフィスをつくれないだろうか。

 

 

2019/08/14

サバイバル植物、玄関編

拙宅の玄関前の石に草が伸びてきた。

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どこから生えたのか。

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これが根元。完全に石から生えている。正確に言えば窪みがあるのだが、とくに深くもなく、さほど土も溜まっていない。せいぜい5ミリぐらいか。だが太い茎。どうやら窪みの底にひびが入っていて、そこに根を伸ばしたらしい。しかし、少々引っ張っても抜けないほど、しっかり生えている。一時は高さ50センチくらいになっていたが、折り取ったのにまた復活するのだから、たいした生命力だ。

これぞ、久々のサバイバル植物に認定しよう。

2019/08/13

空撮・謎の帯状皆伐?

友人のカメラマンが、九州へ空撮に行き、そこで見かけた写真を送ってきてくれた。

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なんだかわかるだろうか。佐世保市里見町上空だそうである。よく見ると、貯水池?上の森が妙な形に伐られている。

拡大してみよう。

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見事に列状に伐られている。ただし間伐というには幅が広すぎる。さらに拡大すると……。

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おそらく伐採地の幅は数十メートルになる。跡地に造林も行われている。
あえて言えば帯状皆伐だろうか。漸伐……順次、皆伐をしていくやり方かもしれない。これぐらいの幅があれば、苗にも光が射し込んで生長するかもてしれない。複層林化を狙っているのだろうか。ただ伐採跡地に植えた部分は一部ではげているから、成績はあまりよろしくないように思える。植えた本数も少なめ。疎植だろうか。
これを施業として行ったとは思いにくいので、何かの実験地だろうか。主体は、長崎県かな。簡単に検索してみたが、この伐採地に関する記載はネットでは見つからなかった。

せっかくだからグーグルマップでも見てみた。

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かなり整然と、意図的に伐採したことがわかるね。さて、なんだろうか。ご存じの方は教えてください。

 

2019/08/12

思い出す、ガダルカナル島の旅

昨夜,NHKスペシャルで「激闘ガダルカナル悲劇の指揮官」を放送していた。

南太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島。太平洋戦争の構図が変わった南洋の島だ。日本軍が建設し完成直前の飛行場をアメリカ軍に奪われ、それを取り返そうと派遣されたのが一木支隊。先遣隊916人が1万人を超すアメリカ軍に攻撃を仕掛け、全滅した。ま、その裏で陸海軍の思惑の違い(というより足の引っ張り合い)や情報の途絶までグダグダの内実が示されるのだが……。

私がガダルカナル島を初めて訪れたのは30数年前。かつての激戦地は、現在ソロモン諸島の首都ホニアラになっている。飛行場もホニアラ国際空港だ。ここに降り立った時は、やはり感慨深いものがあった。当時はヘンダーソン飛行場と呼んだような気がする。アメリカ軍時代のままの名前である。ちょうどアメリカ軍との死闘が始まった8月だった。
これはメラネシア一人旅であり、私の目的はまったく別のところにあったのだが、否応なしに過去の戦争と向き合う旅だった。

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ガダルカナル島レッドビーチ。アメリカ軍の上陸地点。日本軍の血で赤く染まったから……と言われているが、実は血と全然関係なく、単に地点名を色で示しただけであった。だが、ここで多くの人が亡くなったのは間違いなかろう。海辺に残されていたのは、重機関銃の残骸だろうか。

ホニアラの沖合、サボ島やツラギ島の間の海は鉄底海峡と呼ばれている。当時の日本軍、アメリカ軍の船が多数沈没しているからだ。
そこをモーターカヌーで渡る際は、ちょっと緊張した。この海の下に幾多の艦船が……と、途中でエンジンが止まって遭難しかけた(^^;)。海底から呼ぶ声がしたって? そ、そんなあ……。

「日本製のエンジンなんだからお前が修理しろ」とほかの乗客から無理難題を言われたが、エンジンのプラグを外してみたら真っ黒だった。それを磨いたらなんとか火花が飛んで動き出した。今の電子制御のエンジンなら手も足も出ないが、思えば牧歌的?なエンジンであった。

当時のソロモン諸島は、独立後日は浅く、貧しいが平和であった。日本企業もそこそこ進出していた。大洋漁業の子会社ソロモンタイヨー。そして木材商社が幾つか。私は彼らのお世話になりながら旅を続けたのである。

その後2度目に訪れたときは、ホニアラも少しファッショナブルになっていて、商店が増えていた。発展しているように見えたが、実は貿易収支は赤字に転落、各国の援助漬けが始まっていた。
その後さらに経つと、民族間の争いが激化し、とうとう中国人商店街が焼き討ちされる事件が起きた。さらにニューギニアのブーゲンビル島独立紛争にも巻き込まれて治安も悪化する。日本企業も撤退が相次いだ。

幸い、現在は落ち着いたようだ。日本大使館も置かれたし、観光も盛んになっていると聞く。主にダイビングが人気だ。

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ソロモン諸島は、南洋材資源の最後の宝庫であるが、さほど量もなければ質もよくない。それに住民の所有意識が高いから、下手に伐採したら首を狩られる覚悟がいる。冗談抜きに争議が頻発する。

でも、中には黒檀の木もあるようだ。時折、黒檀による彫刻が並んでいる。街の土産物店に売りに行く島民がいるのだ。これは戦闘カヌーの舟首に掲げるものだ。
また石の像もつくられていた。こちらは西部ソロモンのムンダのもの。技術的にはさほど上手くないが、味のあるプリミティブアートだろう。ちなみに右の黒檀の首は、「ソロモンくん」と名付けている。

ソロモンに興味のある方は、拙HPの「ナンバワン、ソロモン」を見てください。

 

2019/08/11

アルキメデスは戦争を止められない

映画「アルキメデスの大戦」を見た。

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面白かった。簡単に紹介すれば、戦艦大和の建造を数学で止めようとする話である。具体的には、天才数学者が建造費予算の嘘を見破って計画を白紙にもどさせそうと、本当の建造費を数学を駆使して暴こうとするのだ。(それ自体が軍人に乗せられて行うのだが。)

もちろんフィクションである。実際の「大和」建設に際して、そんな動きがあったわけではなかろう。ただ、建造計画の議論の場に、理性と感情の対立はあっただろうとは思わせる。簡単に言い換えると、巨大戦艦は必要なのかという理性と、欲しいという軍人的欲求の対立だ。もっと言えば数字=科学=理性vs感情(巨大なもの、美しさかっこ良さ、古くからの伝統……)でもある。

実は、小中学生の頃の私はミリタリーマニアであった。だから戦艦大和や零戦に憧れた。やっぱり世界一の大きさと巨砲を備える戦艦、無敵の空戦性能……といった言葉に弱い。加えて兵器ならではの「美しさ」もある。

だが年を経て知識が増えると、戦艦大和がまったくデタラメな欠陥軍艦であることがわかってきた。工学的にも技術的にも戦術的にも経済的にも、まったく使い物にならない代物であった。だいたい艦内電話も故障が多くてあまり通じず、溶接技術も未熟(というより、機械が要求精度に達していない)な当時の日本に、巨艦を建造する能力があったのかどうかも怪しい。
さらに自慢の46センチ砲を撃とうとすると、周辺の副砲はおろか対空砲火さえ止まってしまうなんて戦闘艦にあるまじき構造だ。どんな設計思想なのやら。しかも命中率の低さは目を覆わんばかり。照準は目測なのだ。40キロ以上先の的を目で狙う。人間の技量を訓練で上げても誤差の修正範囲ではないか。対空砲火もまったくの役立たず。ほとんど当たらない。そもそも攻撃機の高度まで弾が届かない。
一方で不沈戦艦どころか、魚雷戦を意識していなかった。艦砲決戦のつもりだったから、喫水線の下に爆弾(魚雷)が当たることはあまりないと想定していた。しかも1本魚雷を食らったら舷側の鋼板がめくれ上がり、しかも反対側の舷側に注水するから、速度がガクンと落ちる。すると2本目3本目の魚雷や爆弾をくらい、確実に餌食になる代物だ。
何より燃料をバカ食いするから、出撃さえあまりできないとは……。もちろん航空戦の時代を無視した艦隊決戦の発想こそ馬鹿げている。
……とまあ、幼き頃の「巨大で美しい兵器」への憧れを「科学」「理論」の知識が打ち砕いてくれたのだ。

映画の中には「巨大で美しい軍艦ができたら国民は勘違いする」という意味の言葉が出てくる。まさに、私の記憶・感覚と一致する。
映画が描いたのは、今風に言えばフェイクニュース対理性の戦いではないか、と私は思いついた。
 

『絶望の林業』で書きかかったのは、もっと理論的に、科学的に林業を行え、ということだ。
地球温暖化防止のために間伐をする? 花粉症対策に間伐をする? 伐期が来たから皆伐する? 大面積皆伐をしても、森林全体の生長量以下だから大丈夫とはどんな生態学の知識を持っているのか。(持っていないからアホなのか。)
材価が下がっているときに生産量を増やすという経営のイロハを無視した政策。純益以上の補助金を注ぎ込んでいるのに「儲かった」と思ってしまう能天気な計算能力。
伐期とはなにか。間伐とはなにか。言葉の意味さえまともに理解していない林野官僚。
CLTが林業を救う? バイオマス発電が林業を活性化する? セルロースナノファイバー? 早生樹植林? 
まともなマーケティングもできなければ商品開発もでたらめ。
自身の頭で考えて判断しない(させない)林業現場。技術も「身体で覚える」のであって、頭は使わない。
そして役立たずすぎる法律と好き放題に運用する行政と司法。

それらを指摘する数学ならぬ科学的な知見はある。一つ一つ、論破できる。

だが、フェイクニュースで煽られた感情は、常に理性より強い。映画でも史実でも、戦艦大和は建造されたのである。そして撃沈されたのである。
日本の林業も非科学的政策の元に沈没していくのだろう。

戦争も林業も、理性的に行えない。それが日本人か。。。
 

2019/08/10

もう一つの「働き方改革」を

朝日新聞8月7日の「経済気象台」に、こんな記事が。

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このコーナーで林業を取り上げるのは稀だろうが、なかなか含蓄深い言葉が並ぶ。筆者は「第一線で活躍している外部の経済人、学者」だというが、林業についてそれなりの情報を持つ様子だ。果たして誰だろうか。

舞台は北海道のようだが、「持続的に森林を管理するのが本来の林業である。それを無視して切り尽くし、その後、同時期に同じ樹種を植えるという目先の対応のツケが回ってきた。

そして持続的な林業を行っている林業家と、彼が語ったエピソードを紹介しているが、そうした人がいかに例外的で珍しいかということを暗に語っている。

そこで働く人たちが自分の仕事に誇りを持てる働き方とは何か考える

昨今語られる「働き方改革」とは、残業を減らすなど労働条件の見直しを意味して使われている。それも大切……というより、当たり前のことだが、もう一つの働き方改革が必要ではないか。それは誇りを持てる仕事にするための働き方を模索することだ。

最近の林業を職業と関わっている人は、本当に今やっている施業方法が正しいと思っているのか。疑問は持っていないのか。持続的な森林経営になっていると言えるか。そして誇りを持っていると自信を持って他人に語れるか。

森林所有者、もしくは組織のトップに問いたいのはもちろんだが、その下で働いている人にとっても同じ。疑問を持っても下手に上司に進言して不興を買うと困る、同僚とも人間関係が悪くなる、もしかしたら給与や待遇、出世に響く……だから言われた通りにやっている……人も多いのかもしれない。あるいは「そんな難しいことは考えない。俺は木を伐るのが好きなんだ」「今儲かればいい、将来はそのときのこと」と言い聞かせて思考停止に陥っているか。
それって、自分の目先の事情のために森に犠牲になってもらう、ということだからね。そんな働き方が、果たして「誇り」になるのだろうか。

 

 

2019/08/09

同じことを語りつつ正反対?『森と人間と林業』

『森と人間と林業』(築地書館)が刊行された。著者は、村尾行一氏。村尾先生、これが最後、これが最後と言いつつ次々と新しい本を出すのだから……笑)。『間違いだらけの日本林業』『森林業』に続く第3弾だ。

ちなみに発売日は、7月31日になっている。拙『絶望の林業』とかぶっていること(笑)。校了日も、ほぼ一緒。この夏は、林業本の出版ラッシュか?(改めて『絶望の林業』は、奥付けを見ると、発売日が8月17日になっていたよ (゚o゚;) 。)

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目次も引用しておこう。

まえがき

序章 日本林業の心理と行動
1 森との永遠の会話
2 大きなチャンス
3 「木材栽培業」の不条理
4 日本林業、こうすれば復活する
5 日本林業近代化の道
第1章 森と木の文明史的意義
1 木材活用の意味するもの
2 木材の長所
3 木材の新用途
第2章 日本林業の基本問題と基本対策
1 日本林業はこれから伸びる
2 林政が目指す方向とは
3 「外材問題」の所在
4 「木材革命」が折伏した役物信仰
5 好況時代
6 「拡大造林」の原罪
7 乾燥の勧め
8 林業における流通の意義
9 里山の意味と意義
第3章 ドイツ近代林業前史
1 近世林業の誕生と破綻
2 近代林業の曙
3 ターラント学派の限界
第4章 ドイツ近代林業の個性
1 ドイツ近代林業の確立
2 「合自然的かつ近自然的林業」とは何か
3 近代都市における森とは何か
4 近代林業の経済的メリット
5 「多機能林業」
6 「フリースタイル林業」
7 「恒続林施業」
第5章 林業人はいかにして育てられるか
1 林業は「人」なり
2 初等教育と「森の幼稚園」
3 中等教育
4 零細林家と林業作業員の育成制度
5 上級林業人と高等林業人の育成制度
6 ドイツ語圏の「フォレスター」
7 日本林業と担い手問題
第6章 森へ行こうよ
1 ドイツ人にとってのウアラウプ
2 最も人気のある滞在地は森
3 森での歩きのレクリエーション
4 森の宿
第7章 日本林業で実践されていたドイツロマン主義林業
1 回顧
2 接点
3 暁鐘
あとがき

内容というより、私が読み取った点を紹介するが、前半は、ドイツ林業の変遷を追いかけつつ、いかに方針を転換してきたかを描いているが、そこで日本が「いつの」ドイツ林業を学び、本家が転換してからも昔のままの理論を振りかざして続けているかということが浮かび上がってくる。本家?が先に進んでいるのに、分家の日本は駄々をこねて100年ほど昔のまま座り込んでいることがよくわかる。
その結果、いまだに単一同樹齢林の育成と、大面積皆伐を繰り返す断続的な林業を続けているのだ。

次に感じたのは『絶望の林業』でも取り上げた林野庁の姑息さをより鋭く突いていること。具体的な例を引くと、

「新たな森林管理システム」の徹底批判の中でも指摘するのは、一見、国は都道府県を飛ばして山林にもっとも近い自治体(市町村)に権限を譲るように見せて、実は林野庁が瑣末な事柄まで指導(通達、準則、課長解釈、課長補佐指導、係長説明……)を行い、実質的に林野庁の直轄事業にしてしまいかねないこと。

森林林業白書2017年版にあるオーストリアのフォレスターの業務説明に、「林業経営の集積・集約化」というありもしない業務を付け加えた我田引水。さらにスイスのフォレスターの業務を説明する文面に、もっとも肝心の「造林育林業務」を含めない姑息さ。いずれも、日本のフォレスター(林業マネジメント者?)に合うようにこっそりいじったのだろう。

ただ拙著と決定的に違うのは、悪いのは人間なんだから、人間が変わればすぐによくなるよ、という明るい未来、見通しを語っていることだ。理想の恒続林や持続システムなんて、すぐ作れる、ドイツはそうだった、というのである。
その点私は、人間が悪いんだから、よくすることは不可能だ、日本人には無理だ、絶望だ、と結論づけている(笑)。私の語る「希望の林業」は、できるもんならやってみな、と突き放しているのだから。

同じことを語って正反対の結論にたどり着く。さて、どちらを信じるかな。

2019/08/08

Yahoo!ニュース「動物園のライオンの餌に……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「動物園のライオンの餌に害獣の駆除個体を与える深い意味」を書きました。

この記事は、本当は6月に書く予定だったのが、ズレにズレて遅れに遅れて、真夏になってしまった。ま、腐るネタではないので。

意外と悩んだのが、「環境エンリッチメント」という言葉。最近は「アニマルウェルフェア」という言葉が流布しているから、それとの違いは何?と思ってしまった。
アニマルウェルフェアは、オリンピックの食材に求められたりして知られるようになった。「動物福祉」という訳語もあるが、動物(野生も飼育下の家畜や動物園、実験動物までのものも含む)の福祉的扱いを示す理念的な感じである。その点、エンリッチメントの方が、動物園の実践という点でより具体的とでも言えようか。

そんなに記事には関係ないのだけど。

 

2019/08/07

書店で『絶望の林業』見つけた

書店で『絶望の林業』を見つけました、というメールをいただいた。場所は三省堂成城店。

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なんと、ネットでも購入していただいているのに、改めて買っていただいた。感謝。
が。どこにあるの? という戸惑い(笑)。送っていただいた写真でも、なかなか難問だったりして。

「背表紙、目立ちません」とのこと(^^;)。

そのとおりだなあ。表紙カバーのデザインはわりと気に入っているが、背表紙はグレーのためかイマイチ目に飛び込んでこない。帯を原色にしたらよかったかな。

ちなみに私も見つけました。こちらはイオンモール四條畷内の未来屋書店。

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隣が真っ赤な帯……(^^;)。これに負けている。赤に目を引かれてから横の緑を見てください、というか。
平積みされるほどの部数ではないから、背表紙に気をつかうべきであったか。

ともあれ、順調にスタートしたようだ。Amazonでも一時期品切れ表示が出たが、今はまた復活。
発売当日は売上順位802位、ノンフィクション部門で94位だった。

林業という狭いゲットーもとい、業界の中でどこまで健闘するか。

 

 

2019/08/06

ハチミツとメープルシロップ

今夜のテレビ番組案内に「田中淳夫」出演という文面があったことに気づいた人は何人いるだろうか。

「マツコの知らない世界」という番組に「田中淳夫」は出演したようだ。

もちろん、私ではない。同姓同名の、もう一人の田中淳夫さん(^^;)。

ちなみに私は、マツコ・デラックスという芸人がまったく受け入れられない。テレビに顔が映った瞬間にチャンネルを変えるほどダメ。理屈抜きのほとんど生理的に受け付けない。それなのに、せっかく「田中淳夫」さんが出るのだからと、我慢して我慢して、顔を伏せながら見た。

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もちろん出演したのは、株式会社銀座はちみつの田中淳夫社長。私も面識がある。一緒に並んで写真も撮った(笑)。私に、たまに「ミツバチのこと話してください」という依頼があるが、私もミツバチや養蜂のことを記事にするが、それは間違い。逆に銀座の田中さんのところに「森林ジャーナリストとして」取材に行った人もいるようで、お互いたまには入れ代わってもいい。

ま、そんな話はともあれ、現在は都市の屋上養蜂が広がっていることを紹介していた。と言っても、たいして深くなくて、単に各地のハチミツを味わって喜んでいるだけのような番組だった。

もしかしたら勘違いする視聴者もいるかもしれない。屋上で養蜂やってハチミツ採って売れば儲かるぞ、と。
それはあり得ないだろう。屋上でどんなに巣箱を多く並べてハチミツを採取しても量的にはしれている。それを売ってもたいした販売額にはならないはずだ。なかには価格を100グラム3500円なんてつけている商品もあったが、それでも赤字ではないか。

だが、屋上ハチミツはブランディングにもってこいなのだ。だからハチミツをそのまま売るというよりは、ハチミツ入りのケーキなど関連商品を開発することが大切だ。実際、銀座のハチミツというだけでかなりのブランドである。ほかの地域でも都会の屋上で採蜜したことが特徴となりブランディングできる。

 

それと同じ構造なのが、秩父のメープルシロップだろう。山にあるカエデから樹液を集めて煮詰めるとメープルシロップになるわけだが、その量たるや、わずか。ところが、今や秩父駅前の土産物店には「秩父の楓樹液」を売り物にした商品が並んでいる。サイダーにデニッシュパンに、ゼリーにさまざまな洋菓子。実際の含まれている樹液はわずかだろうが、秩父の山に生えているカエデから採れた樹液であることがブランド化している。町の価値を上げて、落とされる金は馬鹿にならないだろう。

銀座のハチミツに、秩父のメープルシロップ。どちらも自然資源であるが、この戦略を学ばないといけない。素材を素材として売っていてはダメなんだよ。あ、これ、素材(木材)をそのまま売って損している連中に言っているんだけどね。

2019/08/05

違法伐採対策「timflow 」と一知半解

先日、奈良で 某会合があって出席した。ここで総合商社の木材調達部門の方が話をすると聞いたからである。

木材調達と言っても基本は外材の話なのだが、話されたのは伊藤忠建材の元担当者で、現役の社員の方も参加されて補足してくれた。

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そこでは北欧の話が多かったが、ルーマニアの建材の話を出た。ルーマニアと言えば、私はYahoo!ニュースに「原生林を破壊したルーマニアの木材が日本の住宅に化ける事情」という記事を書いている。そうか、オーストリアのシュバイクホファー社の建材を輸入しているのが、伊藤忠建材であったか。

ただ、そこで紹介されたのが、違法木材対策としてルーマニア政府が実施している「timflowチムフロー」である。

伐採地から製材、そして輸出までの木材流通を監視するシステムだ。申請された伐採量と入荷量を把握して違法材が流入しないようにする手法である。ちょっと森林認証制度CoC認証に似ている。
私は、本当に機能しているのか、4,5年前から実施しているというなら、なぜ今も違法木材が問題になっているのか質問した。

その当たりは宿題となったが、実際にシュバイクホッファー社は現地でもかなり評判が悪いらしい。それを輸入したらアカンでしょう。
もっとも、日本にはチムフローに相当するような木材管理はないのだから、ルーマニア以下である。ちなみに日本の「合法証明」はクズである。泥棒に店番を頼むようなもの。

気になったのは、海外の木材調達では、どこでも違法木材が話題に上がっているという点だ。それは北欧でも同じとか。今や発展途上国だけではないのである。そして「日本でも起きているらしい」とWedgeの記事を持ち出されたが、「あ、それ書いたの私です」。(笑)。

ともあれ、違法木材の横行とその対策はどこの国でも課題のようだ。日本では対策そのものが取られていないわけだが……。


ちなみに出席者は建築系の人が多かったのだが、そのためか「日本の森は伐らないから荒れている」という意見の元に「だったら、もっと伐ってほしい。国有林の保安林を外して伐らないのか」という意見が出たのには驚いた。「盗伐でもいいから、伐ったら森がよくなるんじゃないの」とまで。

単純に日本は木が余っている、だったらしゃにむに伐れ、盗伐だっていいじゃないか、という発想になるのか。おぞましい。

商社にしても、国産材を扱いたい気持ちはあるようなのだが、なぜ国産材が十分に出回らないのか事情をほとんど知らないらしい。価格も「日本の山は急峻だからコストがかかる」と単純化してしまっている。南ドイツやオーストリア、スイスなどの林業地は山ばかりだよ。北欧だってノルウェーは山がちだし。そんな感覚的な情報で国産材業界に手を出したら、痛い目に合うだろう。
木材商社が当地の林業事情に詳しいわけではないわけだ。

結局、一知半解というか、勉強不足も甚だしい。そして反知性というか無知性な意見が飛び交うのも虚しい。

 

2019/08/04

長野でお会いした人々に

次世代森林産業展2019では、多くの人に出会った。交換した名刺だけでも数十枚になる。それを整理していて、名刺ファイルを改めて購入しないといけないことに気づいた。

講演が終わってから、あるいは書籍販売ブースで声をかけてくださった方々。そこでちょっとした自己紹介と意見交換をしたわけで、それなりにためになる情報がいっぱいあった。私が紹介した「絶望」の次の「希望の林業」にすでに取り組んでいますという人もいれば、アドバイスを求められるケースもあった。皆さん、熱心だ。こうしたイベントに参加する人は、基本的に意識が高いのだろう。

ただ、ここで皆さんに感謝するだけで終わっては私らしくない? ので、あえて苦言を呈しておこう。

話した中には、宮崎の盗伐問題に言及する人が少なくなかった。講演でも触れたし、何より私がここ1~2か月、もっとも力を入れて取り組んできた報道だからだろう。なかには宮崎県から来られた方もいた。それなりに気になる情報ではあったようだ。

そこで気になるのは、みんな自分事に置き換えていないように感じた。「うちの地元では起きていない」とか、「関東が管轄なので九州のことはわからない」といった言葉ばかりが出る。自分の担当区域でなかったら平気なのか?

本気で盗伐が悪いこと、林業界にとって由々しき事態だと認識していたら、いや森林が無残な状況に陥っている点に怒りを感じていたら、自身の管轄を超えて憂慮すべきだし、自らのできることを考えるべきではないのか。本当に自身の地元で起きていないと言えるのか。単に声を上げる人がいない、上げた声を誰かが握りつぶしているからだとは想像しないのか。実は、私は未確認ながら宮崎以外の各地でも盗伐まがいのことが起きていることを耳にしている。
それとも管轄外の地域のことに口をはさんだら縦割り社会では許されない行為として追求されるのを恐れているのか? それが自身の出世や給与に響くから……?

盗伐の蔓延は、確実に宮崎県のイメージを落とし、さらに日本の林業を貶めている。世界から「そんな国」として見られるようになるだろう。それでも、「自分には関係ない」と目を背けているのか。

盗伐だけではない。日々日常の業務で環境を破壊しているケースを認識しているのか。
林業現場の安全管理がデタラメで多くの死傷者を出していることをどれだけ認識しているのか。
何の役にも立たない施策を展開して、税金を無駄遣いしていることに吾に返ることはないのか。

結局、自分が日本の森を(いや地球の環境を)守る一人なのだという意識が希薄なのではないか。自身の立場の維持と森林環境を天秤にかけ、結局は森林に目を伏せて犠牲になってもらうわけだろう。

これが、私が林業に絶望する理由の大元である。

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数少ない、次世代森林産業展で撮った写真。

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善光寺余談

長野では、ほとんど次世代森林産業展会場(と夜の飲み屋)だけしか足を運んでいないのだが、さすがにそれではマズいと駆け足で寄ったのが善光寺。

そこで月並みの参拝観光をしたのだが、ちょっとだけ気づいたこと。

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本堂のフローリング……と呼ぶと妙か。ともかくケヤキだろうが、この分厚さ。柱も目につくのはケヤキであった。

ただ内陣のフローリングは針葉樹かも。

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この浮き上がった節が素晴らしい。幾人もこの上を歩き、節以外は磨耗したのだろうが、それが自然のデザインになっている。
ちなみに内陣の撮影は禁止だった。この写真を撮った後で気づいたよ。まあ、仏像などは撮っていませんから……。

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善光寺最大の行事とかの回向柱。7年に一度立てるのだそうだが、10本並んでいて、それが順々に朽ちている。つまり7年ごとに木が朽ちていく様子を目にできる回向、じゃない趣向。本当に最初からここに立てたのか、後から移動させたのかはわからないが、木質の腐朽性実験地になっていて面白いと思ったのであった。

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70年前の回向柱?

2019/08/02

『絶望の林業』を超えて……

「次世代森林産業展2019」から帰った。

でも2日間会場に張りついたのにほかのブースも展示もほとんど見ていないし、数あるセミナーもほぼ聞いていない。
その間『絶望の林業』の販売をみっちりやりました。セミナーと会場のブースで120冊完売です。よくやりました。これは記録的でしょう。自分を褒めてあげたい(^o^)。いえいえ、販売に協力してくださった皆さまのおかけです。

具体的に手伝っていただいたのは、アクセスインターナショナルという会社の方々。ここでは「フォレストジャーナル」の創刊をめざしていて、拙著の販売とともに創刊準備号の配布を行っていた。こちらにとっても、無料のフォレストジャーナルを配りつつ、拙著に話を誘導するという戦法なのであった(⌒ー⌒)。

ところで、このフォレストジャーナル創刊準備号。

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このような表紙なのだが、ページを繰って最終項を開くと、こんな記事がある。

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希望の林業\(^o^)/。私の連載が始まります。絶望を超えて希望は見つかるのか?

 

 

2019/08/01

完売!次世代森林産業展

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次世代森林産業展。初日朝からの講演会、予想を大きく裏切り、150人以上立ち見も出て入場お断り状態に。

おかげさまで3日間で販売するつもりの『絶望の林業』70冊プラスアルファがほとんど午前中で完売しました!

ありがとうございます。午後がヒマで…名刺も尽きて、脳疲労を起こして身体もあまり動かず。。。

 

でも、明日明後日参加予定の皆さん、ご安心?ください。急遽版元から50冊取り寄せました。明日午前中に届きます。価格も本日と同じ2000円ポッキリ。

フォレストメディアワークスのブースで販売します。しかも「forest journal」も無料プレゼント。

さらに、日本林政ジャーナリストの会のブースでは、築地書館コーナーでは林業本がズラリ並びます。そこには『樹木葬という選択』『鹿と日本人』が販売。こちらも消費税抜きの割引価格です。

ご来店お待ちしています(^o^)。

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