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森と林業と田舎の本

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2019/08/11

アルキメデスは戦争を止められない

映画「アルキメデスの大戦」を見た。

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面白かった。簡単に紹介すれば、戦艦大和の建造を数学で止めようとする話である。具体的には、天才数学者が建造費予算の嘘を見破って計画を白紙にもどさせそうと、本当の建造費を数学を駆使して暴こうとするのだ。(それ自体が軍人に乗せられて行うのだが。)

もちろんフィクションである。実際の「大和」建設に際して、そんな動きがあったわけではなかろう。ただ、建造計画の議論の場に、理性と感情の対立はあっただろうとは思わせる。簡単に言い換えると、巨大戦艦は必要なのかという理性と、欲しいという軍人的欲求の対立だ。もっと言えば数字=科学=理性vs感情(巨大なもの、美しさかっこ良さ、古くからの伝統……)でもある。

実は、小中学生の頃の私はミリタリーマニアであった。だから戦艦大和や零戦に憧れた。やっぱり世界一の大きさと巨砲を備える戦艦、無敵の空戦性能……といった言葉に弱い。加えて兵器ならではの「美しさ」もある。

だが年を経て知識が増えると、戦艦大和がまったくデタラメな欠陥軍艦であることがわかってきた。工学的にも技術的にも戦術的にも経済的にも、まったく使い物にならない代物であった。だいたい艦内電話も故障が多くてあまり通じず、溶接技術も未熟(というより、機械が要求精度に達していない)な当時の日本に、巨艦を建造する能力があったのかどうかも怪しい。
さらに自慢の46センチ砲を撃とうとすると、周辺の副砲はおろか対空砲火さえ止まってしまうなんて戦闘艦にあるまじき構造だ。どんな設計思想なのやら。しかも命中率の低さは目を覆わんばかり。照準は目測なのだ。40キロ以上先の的を目で狙う。人間の技量を訓練で上げても誤差の修正範囲ではないか。対空砲火もまったくの役立たず。ほとんど当たらない。そもそも攻撃機の高度まで弾が届かない。
一方で不沈戦艦どころか、魚雷戦を意識していなかった。艦砲決戦のつもりだったから、喫水線の下に爆弾(魚雷)が当たることはあまりないと想定していた。しかも1本魚雷を食らったら舷側の鋼板がめくれ上がり、しかも反対側の舷側に注水するから、速度がガクンと落ちる。すると2本目3本目の魚雷や爆弾をくらい、確実に餌食になる代物だ。
何より燃料をバカ食いするから、出撃さえあまりできないとは……。もちろん航空戦の時代を無視した艦隊決戦の発想こそ馬鹿げている。
……とまあ、幼き頃の「巨大で美しい兵器」への憧れを「科学」「理論」の知識が打ち砕いてくれたのだ。

映画の中には「巨大で美しい軍艦ができたら国民は勘違いする」という意味の言葉が出てくる。まさに、私の記憶・感覚と一致する。
映画が描いたのは、今風に言えばフェイクニュース対理性の戦いではないか、と私は思いついた。
 

『絶望の林業』で書きかかったのは、もっと理論的に、科学的に林業を行え、ということだ。
地球温暖化防止のために間伐をする? 花粉症対策に間伐をする? 伐期が来たから皆伐する? 大面積皆伐をしても、森林全体の生長量以下だから大丈夫とはどんな生態学の知識を持っているのか。(持っていないからアホなのか。)
材価が下がっているときに生産量を増やすという経営のイロハを無視した政策。純益以上の補助金を注ぎ込んでいるのに「儲かった」と思ってしまう能天気な計算能力。
伐期とはなにか。間伐とはなにか。言葉の意味さえまともに理解していない林野官僚。
CLTが林業を救う? バイオマス発電が林業を活性化する? セルロースナノファイバー? 早生樹植林? 
まともなマーケティングもできなければ商品開発もでたらめ。
自身の頭で考えて判断しない(させない)林業現場。技術も「身体で覚える」のであって、頭は使わない。
そして役立たずすぎる法律と好き放題に運用する行政と司法。

それらを指摘する数学ならぬ科学的な知見はある。一つ一つ、論破できる。

だが、フェイクニュースで煽られた感情は、常に理性より強い。映画でも史実でも、戦艦大和は建造されたのである。そして撃沈されたのである。
日本の林業も非科学的政策の元に沈没していくのだろう。

戦争も林業も、理性的に行えない。それが日本人か。。。
 

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コメント

46インチじゃなくて46センチですよね。

わ! その通りです。直しました(^^;)。
46インチだと口径1メートル超しますね (゚o゚;) 。失礼しました。

台風とお盆が過ぎて、やっと観てきました。
フィクションではありますが、ずしりと残った感想は田中さんの結語「戦争も林業も理性的に行えない。それが日本か!」でした。
軍部がおかしかった。林野庁もおかしい。しかし、世間全体の非理性的、迎合的、権威に忖度的、マスコミの「ジャーナルなしの無思慮の広報」にも問題があると思いました。
後になって、「実はおかしいとは思っていた。反対だった」といっても、間違って積み重ねてしまった時間は取り戻せないと思います。
黙ってないで「個の反乱」を口に出して実行して行きたいと思います。
田中さんの乾坤の一撃「「絶望の林業」が林業者の理性を動かしてくれるよう祈ります。

そうですね。誰かに責任を押しつけて「それが……でなければ上手くいった」というものではありません。全体が狂っていることを自認しないと。そのうえで「個」のもの申す力が必要だと思います。

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