違法伐採対策「timflow 」と一知半解
先日、奈良で 某会合があって出席した。ここで総合商社の木材調達部門の方が話をすると聞いたからである。
木材調達と言っても基本は外材の話なのだが、話されたのは伊藤忠建材の元担当者で、現役の社員の方も参加されて補足してくれた。
そこでは北欧の話が多かったが、ルーマニアの建材の話を出た。ルーマニアと言えば、私はYahoo!ニュースに「原生林を破壊したルーマニアの木材が日本の住宅に化ける事情」という記事を書いている。そうか、オーストリアのシュバイクホファー社の建材を輸入しているのが、伊藤忠建材であったか。
ただ、そこで紹介されたのが、違法木材対策としてルーマニア政府が実施している「timflowチムフロー」である。
伐採地から製材、そして輸出までの木材流通を監視するシステムだ。申請された伐採量と入荷量を把握して違法材が流入しないようにする手法である。ちょっと森林認証制度CoC認証に似ている。
私は、本当に機能しているのか、4,5年前から実施しているというなら、なぜ今も違法木材が問題になっているのか質問した。
その当たりは宿題となったが、実際にシュバイクホッファー社は現地でもかなり評判が悪いらしい。それを輸入したらアカンでしょう。
もっとも、日本にはチムフローに相当するような木材管理はないのだから、ルーマニア以下である。ちなみに日本の「合法証明」はクズである。泥棒に店番を頼むようなもの。
気になったのは、海外の木材調達では、どこでも違法木材が話題に上がっているという点だ。それは北欧でも同じとか。今や発展途上国だけではないのである。そして「日本でも起きているらしい」とWedgeの記事を持ち出されたが、「あ、それ書いたの私です」。(笑)。
ともあれ、違法木材の横行とその対策はどこの国でも課題のようだ。日本では対策そのものが取られていないわけだが……。
ちなみに出席者は建築系の人が多かったのだが、そのためか「日本の森は伐らないから荒れている」という意見の元に「だったら、もっと伐ってほしい。国有林の保安林を外して伐らないのか」という意見が出たのには驚いた。「盗伐でもいいから、伐ったら森がよくなるんじゃないの」とまで。
単純に日本は木が余っている、だったらしゃにむに伐れ、盗伐だっていいじゃないか、という発想になるのか。おぞましい。
商社にしても、国産材を扱いたい気持ちはあるようなのだが、なぜ国産材が十分に出回らないのか事情をほとんど知らないらしい。価格も「日本の山は急峻だからコストがかかる」と単純化してしまっている。南ドイツやオーストリア、スイスなどの林業地は山ばかりだよ。北欧だってノルウェーは山がちだし。そんな感覚的な情報で国産材業界に手を出したら、痛い目に合うだろう。
木材商社が当地の林業事情に詳しいわけではないわけだ。
結局、一知半解というか、勉強不足も甚だしい。そして反知性というか無知性な意見が飛び交うのも虚しい。
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