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森と林業の本

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2019/08/29

マクロン大統領の3つの提案

Yahoo!ニュース「アマゾンは地球の肺ではない」を書いた後から、

NASAの調査による、アマゾンはトータルでは二酸化炭素を吸収している という記事を示す声を各所からいただいた。問い合わせも相次いでいる。

ま、これにマジに推論すれは、アマゾンは成長途上の若い森なんだろう、というしかない。成熟していないから、まだ成長余力がある(=二酸化炭素を吸収する)ということになる。さもないと原理的にありえない。それとも、まったく知られていない二酸化炭素を吸収する細菌が存在するとでも想定するか? アマゾン川の底に酸素発生装置が仕掛けられているとか? その前に調査結果自体を疑うことも必要だけど。

アマゾンに熱帯雨林が成立したのは数万年前らしく、数億年前から森林があったボルネオやアフリカ中央部と比べたら若い。とはいえ、それでも数万年経っても成熟していない森って、なんだ? 

おそらく、アマゾン自体が幾度も破壊されて再生を繰り返している森なのだろう。もともと樹種分布の偏りから、アマゾンの先住民が焼き畑をしたり、自分たちに都合のよい草木を植えて改変した証拠が示されているし、自然発火や洪水などで森は定期的に破壊されてきた。だいたい数百年ごとに焼けているというデータもある。そこからの復活途上の森を、NASAは計測したんじゃないか。

森林は一筋縄に行かないというよい証拠だろう。


ところでエマニュエル・マクロン仏大統領は、アマゾンの森林火災を受けて、3つの提案を示している。

1、可及的速やかに再造林できるよう資金を募るため、G7メンバーおよびその他の国々を結集すること。
2、これまでよりもはるかに強力な火災防止メカニズムを構築すること。
3、グッドガバナンスを見いだすこと。これまでよりNGOや先住民に参加してもらい、産業化された森林破壊プロセスを食い止める必要がある。

2と3に異存はない。問題は、誰がメカニズムを構築するのか、誰がグッドガバナンスを見出すのかという点だけど。それが成立する地盤がないままの絵に描いた餅。きれいごとの机上の空論になりかねない。

だが最大の問題は1だ。再造林を進めるというのだが……。

熱帯雨林の再生を行う技術は確立されていない。部分的にある樹種(その森の主要な木)を育てる手法を開発したというのはあるだろうが、複雑怪奇な熱帯雨林を人工的に再現するのは厳しいだろう。そんなことをしなくても、自然に芽吹く草木があるから、それを大切に育てるべきだ。集めたお金は、森を立入禁止するために使ってくれ。
日本でも照葉樹の森を作るといって、いきなり照葉樹の苗を植えても根付かないケースを聞くではないか。じっくりパイオニア種から育てて遷移させるのがもっとも確実な方法だ。

植林するには、苗や種子の調達の問題もある。

調達できる苗があり、育てる技術もわかっていて、植える経費を少しでも節約するために有用植物を植えた方がいいね、その方が先住民の暮らしにも寄与するから……というわけで、再造林するのはユーカリかアカシア、いや油ヤシが一番!てなことになりかねませんよ(^^;)。アマゾンを油ヤシの森にするのも再生かな?

なんだか、『絶望の林業』と構図が似てきた。できもしないプランを並べて、結局は従来の利権が守られるという……。絶望のアマゾン再生になりそうだよ。

 

 

 

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