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森と林業の本

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2019/09/30

「超学際的研究」の時代……のツボ

森林に関することは何でも扱う……森林生態学から樹木葬まで……と私は公言しているが、何もすべての分野に詳しいわけではなく、苦手な科学的分野もある。その一つが水文学だ。
幸いというか、縁あって人間環境大学の谷誠先生(特任教授)と知り合って(メールだけだが)、森林と水に関する記事を書くときにお世話になってきた。

その谷先生から、「水文・水資源学会」で発表した資料を送っていただいた。

学際・超学際からみた洪水流量の研究の方向性」である。超難しいタイトルだ(笑)。それでも幾つか抜き出して紹介する。

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極めて大雑把に私が説明すると、これまでいくつもの学問分野をカバーする「学際」という考え方があったが、今後は学問分野だけでなく社会分野も含めて考えていかねばならない「超学際」的な研究が必要だ、ということだろうと思う。そして、それを水文学に当てはめると……どうなるか。現在のような地球規模の問題となる気象変動の時代になると、大雨時の河川の洪水流量をどのように考えるか、というテーマである。

激烈化の進む気象に対応しようと、現在の政府は「国土の強靱化」を打ち出している。ようするに土木工事によって、堤防の嵩上げ、治水ダムの建設、河川流量を増加させて速やかに排水……などで対抗しようとしているわけだ。

しかし、それが可能なのか? 自然界の動きはわからないことだらけのうえ、莫大な資金が必要なだけでなく技術的にも限界がある。生物多様性や人間社会への影響も考えると、強靱化だけで完全に洪水を防ぐのは現実的ではない……というか無理。そこで、「超学際的」に考えてみる。

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ダムや河川改修に加えて、森林・林業の再生、農山村の生活、弱点の自覚と住み方の分散・変更……など社会的な課題を加味して研究すべき、というのである。

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これは学問分野だけではなく法律の壁を越える必要もあり、縦割り行政をも超越しなければならない。その点では、極めて政治的な研究となる。そもそも地球環境問題とは、科学を包含した政治的なものであるのだけど。

当然ながら、これは洪水など水文学分野に限ったことでなく、今後はすべての自然科学でも超学際が求められるだろう。研究から一歩踏み出した、政策づくりと言えるかもしれない。

なお、この説明の1ページに、このような内容もある。なんと! 拙著『絶望の林業』が登場する。……これが今日のエントリーのツボだ。書きたかったのはこれか(⌒ー⌒)。

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なお、スライド全ページは、こちら

水と森林 谷誠ホームページはこちら。

 

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コメント

谷誠先生のご紹介で参りました。熊谷と申します:
一応名刺代わりに:
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/pr-yayoi/69yh.pdf
ということをやってる「森林愛好家」です。
ご活躍拝見させていただき、色々と勉強させていただきました。素晴らしい仕事をされていると思います。
また、勉強させていただく機会があると思います。よろしくお願いいたします。

これは恐縮です。谷先生に続いて、「愛好家」どころか「超」専門家に登場していただきありがとうこざいます!
こちらこそ、勉強しつつ悩みつつ、筆を進めている最中です。
よろしくお願いします。

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