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2019/11/03

最新宮崎盗伐事情。ヤバイのは森林組合か

このところあまり触れなくなった盗伐問題。決して忘れているわけではなく、しつこく追い続けていくつもりだ。そこでイッパツ。

やはり入ってくる情報の多くは宮崎県だ。

6月7月と摘発が相次いだので、少しはおとなしくしているかと思いきや、まだ盗伐は納まっていない模様。(発見された盗伐現場は伐られたのは1、2年前だろうということで、摘発後に伐ったかどうかははっきりしないものも多い。)

まず詳しいレポートとして、FoE JAPANのレポート「日本にもあった違法伐採! 波紋広がる宮崎県の盗伐事件」を紹介しておく。現在まで3回続いているが、今後も出るだろう。私が取材した場所や話もあるが、こちらの方が詳しい。(私の場合は掲載誌の都合もあったし……取材が手抜き(^^;)だったって? いや、まあ、そう思ってくれ。)

FoE JAPANHは、これまで基本的に海外の違法伐採問題を追求してきた団体だが、日本国内にも目を向けたことは大きい。なぜなら即世界に発信されるからだ。今後は、日本の木材に違法伐採の可能性が高いことを世界中で知れ渡るだろう。

そして私が最近得ている情報で目立つのは、森林組合の盗伐である。これまでは森林組合の名が出ることはあっても、やはり中心は民間の素材生産業者だった。それが、このところ森林組合に勤めていた人から「うちもやっていたよ」という証言が出るようになってきたのだ。

森林組合が無謬だというつもりはサラサラないし、私もそれなりに批判してきたが、少なくても森林所有者の集まりであり公的な役割も持っていた。しかも造林・育林も担当することが多い組織である。それが、かなり大規模な盗伐を繰り返しているようなのだ。まだ詳細は明らかになっていないが、すでに動き出したメディアもある。そのうちガツンと大きな記事が出るのではないか。

それに、これは全国に通じる問題だが、造林補助金の詐取も指摘されている。(合法的な)伐採跡地に再造林するため支出される補助金だが、この金を受け取りつつまったく植えずに放置しているケースがあまたあることが知られだした。山奥の現場なんか誰も調べに行かないと思っての犯行だろう。事実、所有者だけでなく、再造林を前提に伐採届を受理した自治体も、誰も伐採後にその山に足を運ばない。そして数年後言ってみたら、何も生えていなかった……。

そういう際の言い訳は「シカやイノシシが食べてしまった」だ。いや「植えたけど根付かずに枯れた」と言っても、その嘘を証明するのは難しい。その場合、一度は植えたから罪にはならない。補植する義務もない。私自身は、そんな誤魔化しが全国の皆伐現場に蔓延していると想像している。

なお、当たり前だが、盗伐現場でも再造林が行われていない。こうしてはげ山が増えていく。

 

やはり、今の林業現場に必要なのは、伐採届の受理時と伐採終了後に現場に足を運んでチェックする検査体制の確立だ。そして再造林の終了を届けられても現地に足を運び確認するべきだ。もちろん担当者は、フォレスター的な森林知識と権限を持っていること。残念ながら林業関係者に性善説は通じない。徹底的に性悪説に則って巡検すべきではないか。

Photo_20191103212301

宮崎県某所をグーグルマップで見ると、道から奥に分け入って広く伐採した現場が多い。こういうところは世間から見られずに伐りたい放題なんだろうな、と思わせる。

Photo_20191103212701

道沿いに、ここまで山をズタズタにしている現場は、逆に合法的なんだろうな、と思わせる(笑)。いや、(泣)。

 

 

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コメント

全国の森林組合がヤバいのではないでしょうか。
地元では、組合員との契約書を偽造し、交付金を詐取した事が新聞記事に載りました。しかし、事件にはなっていません。
上部組織と県の隠ぺい体質が無くならないと、日本の林業は良くならないと考えます。これを機会に、ガツン!ガツン!ガツン!とやってもらわないと真面目な林業家が困ります。性悪は一生直りませんから、厳罰を与えて退場してもらいましょう。

「交付金を詐取」しても事件化しない……これが、警察も巻き込んで現状を変えたくないという行政の意志を感じますね。本来なら詐取された行政側が告発すべき。今までどおり、ルーティンでやっていたら仕事が増えないから。

首里城再建の木材調達が難しいらしいですが、どうやったら調達できると思いますか?

告発義務を忘れた振りする行政が林業成長産業化総合対策とか、恥ずかしい事を言ってはいけません。根本からガラッと変える事が利益の還元に繋がり、林業と言う生き方を伝える事が可能となります。あ…それって、総入れ替えになりますな。

ようは「面倒くさいことはやりたがらない」というのが行政マンの特性ですね。やっても評価されないし。そして数年待てば、異動するから責任から逃れられる。
一生、今の部署にいると思えば、やらざるを得なくなるはず。

私の所有している岐阜の山林でも地元の木材業者による盗伐そしてその後そこに林道まで造り補助金までもらつっています。警察署に補助金詐欺と盗伐の被害届を弁護士を通して出しましたが2年たちますが先月警察署に行きましたが出した山林の地図に証拠能力がないと言われましたこの地図は業者が補助金申請のために県に出している地図ですが何を出せばいいのか今は警察も信用出来ません

岐阜県でもですか! いよいよ盗伐は広がりが見えてきましたね。私の感触では、多分全国で起きているはずです。皆伐が多い地域ほど多い。そしなバイオマス発電所や合板工場のある地域ほど。

警察が動かないのも、補助金もらって盗伐しているのも宮崎と一緒か。被害届を受理しましたか?
声を上げないとどんどん拡大します。

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