四手井綱英氏を「殺した」……
四手井綱英・京都大学名誉教授の『森林はモリやハヤシではない』を、たまたま古書店で見つけた。94歳の時の出版である。
私が林学に興味を持ったのは四手井氏の本を読んだからなのだが、この本は知っていたが今まで読んでいなかった。それで手にとったののだが……。
その中に「私は二度殺された」というページがあった。短いエッセイだが、いやな予感がして、そのページを開いた。
これ、一度は私のことだ……。
20年以上前に『「森を守れ」は森を殺す!』を出版した際、初版が上がってきてすぐに気づいた。四手井氏に触れた部分に「故」を付けてしまったのである。まだその頃は、80代始めではなかったか。すぐに謝りの手紙を書いて、謝罪にうかがった。ちょうど会った場所(イベント会場)が畳の部屋だったので土下座した(-_-;)。
実は、執筆中に中尾佐助氏が亡くなっていたのである。四手井氏と並ぶ「今西錦司のベンゼン核」と呼ばれた学者の一人。私も取材に行ってお会いしたことがあって気にかかっており、その影響か四手井氏に「故」を無意識に付けてしまったらしい。そして校正も通してしまった。
冷や汗の思い出であるが、それを本人がエッセイに書いているとは思わなかった。ああ、今も冷や汗が出る。
でも、この記事によると、朝日新聞も「殺していた」らしい。少し気が紛れる(^^;)。
もう四半世紀前の恥ずかしい思い出を今頃振り返ることになるとは思わなかった。はぁ~。
その四手井氏は2009年11月28日に亡くなった。ちょうど10年経つか。今は「故」を付けてもよいわけだが、もう付けません……。
« 大台ヶ原の森林鉄道と土倉道 | トップページ | 女性に頼まれたら……「中島彩、テレビ出演」の件。 »
「取材・執筆・講演」カテゴリの記事
- Wedge ONLINEに「保持林業」の記事を書いた裏事情(2025.06.19)
- Y!ニュース「万博リングの木材の素性…」を書いた裏事情(2025.06.09)
- 米報道へのコメント(2025.06.08)
- president on lineに「早くも万博リングの…」を執筆した裏事情(2025.06.07)
- gooブログの終了(2025.05.21)
プロでもそんな失敗があるんですね。(汗)
私も若い頃四手井さんや、今もお元気な只木さんの本を読ませていただき森林や林業に益々興味を持ったものです。
投稿: スギモト | 2019/11/13 23:16
我が家の本棚にも四手井さん、只木さん、筒井さん、藤森さん、村尾さん……林学界の大物の本が並んでいます。
投稿: 田中淳夫 | 2019/11/15 11:04