北の国の養蜂異変を考える
先日、京都市の総合地球環境学研究所で開かれた「バイオリージョンに立脚した社会の実現と新たな農林漁業体系の構築」というワークショップに顔を出してきた。
なんか難しいタイトルなんで内容は省略(・_・?)。気になる人は、リンク先を見ていただきたい。
私は、10人の演者の中の一人、北海道中川町の高橋直樹さんの「少量多品種多用途の森づくり ~森の恵を分け合う仕組みづくり」に興味があったから参加したのである。(朝イチバンの発表だったので、私も早起きして、2時間かけて行きました。京都市と言っても北の端にあって遠い。。。)
中川町の展開する林業を、私は注目している。それは発表にもあったとおり、現在日本政府が推進している大規模化・画一化の流れから一線を画した戦略を展開しているからだ。その点は『絶望の林業』の中の「希望の林業」でもちょっとだけ触れたが、トップランナーに位置づけている。そこで具体的な現状を聞きたくて訪れたのだ。
ただ引っかかったのは、それらの構想全般ではなく、その一部、非木材林産物、養蜂の話である。
中川町は養蜂が盛んだ。「森の蜂蜜」として売り出している。正確に言えば、その周辺の中頓別から富良野までは北海道の養蜂の中心地と言ってもいいと思うのだが、そこに異変が起きているという。
養蜂で食っていこうと移住してきた人が、上手く行かずに撤退せざるを得なくなっているというのだ。
具体的には、採蜜の量からは十分自活できると睨んでいたのに、肝心の蜜が高く売れなくなったから。そして、価格下落の原因は、蕎麦の蜜・花粉が混ざってしまうからだという。蕎麦の蜜は、日本では好まれないのだ。(海外では、むしろ蕎麦蜜は高い値がつく。)ほかの蜜に蕎麦が混ざるだけで価格が落ちてしまう。
そんな日本人の嗜好自体がオカシイとも思うのだが、由々しき事態である。
その原因は、急激に蕎麦栽培が増えたこと。農政のプロジェクトが始まり、蕎麦に補助金が出るようになって栽培面積が激増しているらしい。
農業収入を上げるために始めた蕎麦栽培(補助金目当てだと意味ないが)が、養蜂を圧迫するというジレンマ。いやはや、人と森の生態系は複雑で何がどう影響するのか読みきれない。
私は養蜂に関心がある。銀座で養蜂をしている同姓同名の田中淳夫さんだけでなく、私自身も養蜂もしくは受粉昆虫としてのミツバチに注目している。それどころか来年2月には、なぜか無謀にも研究者と養蜂業者の集まりであるミツバチ科学研究会で講演することになってしまった。何を話すか今から悩んでいるのだが、この北国の養蜂事情も取り入れたいところである。
さて、午後はワークショップを抜け出して、日本生態学会の事務局へ向かった。……と言っても事務局に用事があるのではなく、家主とだべっていただけ(^^;)。そこに巣くう魔性のネコも見たかったのだが、姿を見せなかった。
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