アニマルウェルフェアと森林認証
手元に「オルタナ」59号が届いた。この季刊誌は「サステナブル・ビジネス・マガジン」と名打っているが、今回の特殊は「アニマルウェルフェア」。
アニマルウェルフェア。ご存じだろうか。動物福祉と訳すが、ようは家畜やペットはおろか、動物園や実験動物、野生動物までの扱い方の指針である。単なる動物愛護とは違う。家畜は人が利用したり食べるために屠畜するわけだが、それは認めている。医学などの実験に供される動物も認める。だが、その扱い方は、死に至るまでに苦痛やストレスをできる限りかけないようにする。
すでに世界の潮流となっており、ESG投資の指標にもなっている。だが、日本ではほとんど知られていないのではないか。
それを雑誌が特集で取り上げるのは珍しいので、
実は日本でそれを広げるチャンスがあった。それがオリンピック・パラリンピックだ。なぜなら選手に供する食事(主に肉や卵など動物性食材)は、このアニマルウェルフェアに則したものでなくてはいけない、というレガシー?というか取り決めがある。具体的にはGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理) という基準を通ったものしか使えない。これには環境とか安全、有機畜産食材など幅広い基準があるが、その中にアニマルウェルフェアも入っているのである。だが、日本の農畜産物にGAPを取ったところはほとんどない。
このままだと東京オリンピックに日本の食材が使えない、と色めき立ったが、なんのことはない。政府はやってくれましたよ。JGAPという日本だけの基準を作って、これを通ればOKにしたのだ。で、その日本の基準とはスカスカ。たいていのものは合格する。見事なレガシー破り。
同じことを木材でもやっている。オリンピックの施設や設備、紙など木質製品は、いずれも森林認証を取得した木材しか使えないというレガシーがあった。だが、あっさり反故にする。東京五輪施設は、認証取っていない木材もOKにしてしまったのだ。おそらく認証材は数%しか使っていないはず。おかげで熱帯雨林を破壊して収奪した木材の疑いの濃い木材も使われている。それを追求する声もほとんどない。
まあ、こんな国なんだ、と呆れるしかない。
ちなみに私は、獣害対策に関するアニマルウェルフェアの記事を書いた。シカやイノシシの駆除にも動物福祉は適用されるのだよ。
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