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森と林業の本

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2019/12/17

消える品種のナショナルコレクション

今期の朝ドラのタイトルは「スカーレット」。なぜ信楽の陶芸家の話がスカーレットなんだろうか、と思っていたのだが、スカーレットは「緋色」という意味のよう。緋色は陶芸の窯の中の色なんだろう。

ところで「ドグラス・スカーレット」という花を知っているだろうか。カーネーションの1品種なんだが……。

日大正時代に、日本で初めて赤いカーネーションとして作り出されたそうだ。さらにそこからドグラス・ファンシーなどの品種が作られたという。作り出したのは、土倉龍次郎。日本のカーネーションの父と称される人物であり、その父は山林王・土倉庄三郎。

龍次郎の足跡を感じたくて、この花を見てみたいと願っていたのだが、カーネーションの研究者に聞くと、そんな品種はとうに姿を消しているそうだ。まったく保存されていない。そもそも鑑賞用の花卉の世界では、毎年のように新たな品種が次々と生み出されるが、売れなくなった時点で消えていく。それらを保存しようという努力もなされていない……のだそうだ。

だからドグラス・スカーレットは当時こそ大人気で話題となったそうだが、すでに消えてどんな花だったかさえ記録に残されていない。せめて何と何を掛け合わせたのかぐらい記録していたらよいのだが……。

こんなことを思ったのは、先日の朝日新聞に「ナショナルコレクション制度」を紹介していたからだ。これは植物の品種を保存のための認定制度だそうである。2年前に日本植物園協会が作ったそうだ。もっとも原形は、イギリスの「ナショナルプラントコレクション」らしい。
保存と言ってもすべての品種は無理だから、分類学上の特異性があるとか、成育環境、利用方法、歴史的背景などテーマのある品種で、データを揃えて申請して、審査を合格すればコレクションに加えられる。実物を保存なり継承するわけではないが、データがあれば再現の可能性もある。また申請者が保存できなくなった際に継承者を探すこともできるだろう。

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龍次郎は数多くの新品種を生み出したとされるが、一つも残っていない。寂しいような、彼らしいような。

 

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