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2020/01/19

木材流通をブロックチェーンで

先日、速水林業の速水さんにお会いして、いろいろ話す中で、「木材流通にブロックチェーンを使えないかと考えている」という構想が出た。

ブロックチェーンとは、暗号資産、いわゆる仮想通貨で使われる技術で、私なりの理解で極めて大雑把に言えば、情報の流れの中の各ステージごとにブロックと呼ぶデータの単位をつくって連結した上でデータを保管する。理論上、このデータは書き換えはできないし、誰もが目にできるので監視されていることになる。すると中央統制なしで、信用を得られるのだ。これを日本語では「分散型台帳」という。

これを木材のようなブツの流通に取り入れたらどうなるか。トレーサビリティが確保でき、おそらく違法適法かの判断もできるようになるはず。面白い。そもそも通貨とは信用の元に交換可能なわけだが、その信用を作るのは基本、中央政府である。それに対してブロックチェーンは分散型ネットワークとして、中央の管理者がいなくても誰でも情報にアクセスでき監視することで信用を担保する。

これ、理論や技術的なことは専門家に任せるとして、政府や何か公益法人的な管理団体をつくって統制させるのではなく、誰もが見られる情報にすることで、誰もおかしなことができなくなるという仕組みである。

……と言っても、電脳空間の理論を木材という物の流通に? と具体的なテクニカルの面で想像しにくかった。これは仮想通貨のような電子情報で成り立つものならわかるが、実際に形あるブツでできるのか。

ところが、すでに行われているらしい。仮想通貨ではなく、実際のブツで。それも水産物である。

三菱ケミカルとNTTデータが、ブロックチェーンによる魚の輸出の実証実験を昨年11月に手がけた。三重県や鹿児島県の養殖場で水揚げされたマダイやブリを中国の大連や北京向けに空輸したのだ。そこでブロックチェーン技術を応用したという。魚を詰めた発泡スチロールの函に貼られたQRコードを基に、いつどこを経由して届けられたのかを書き込む。すると現地の業者や客も確認できる仕組みを作ったのだ。

魚でできたのなら木材だって(^^;)。木材で応用すると、生えていた山や伐採業者、日時、そして流通工程までQRリーダーさえあれば、誰でも読み取れる。これで産地はおろか、ちゃんと伐採届を出しているのかまで監視して盗伐をなくすというのばどうだろう。

 

なぜ魚の輸出でこれが採用されたかというと、(トレーサビリティさえしっかりしているのなら)「倍の高値でも買いたい!」との声が現地にあるからだそう。中国は日本産水産物を欲しいのだけど、本当に日本産かどうか信用が担保されていないのだろう。「高値で買いたい!」中国人期待の日本産水産物のカラクリ

残念ながら国産材を、それほど欲しがっている人がいるようには思えず、高値は期待できない。しかし流通履歴を全部公開し、それぞれの業者が取っているマージンまで読み取れるようにしたら、林業家-木材業者間の疑心暗鬼は解消するのではないか。プラットフォームを整備することで、生産者への還元額も適正化できるかもしれない。

以前にも立木にICチップを付けて、その後伐採搬出、製材まで情報を書き足していく発想は以前にもあったが、信用の担保が弱かった。もしブロックチェーン技術で応用したら、可能性が広がるだろう。

 

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コメント

https://gemba-pi.jp/post-197153
鳥獣管理を勉強、活動している齋藤と申します。こちらのURL記事にございますが、ご承知のとおり鹿等の駆除個体の流通がまだまだな状況の中でプロックチェーン試験導入をしている模様です。森林保全、農地被害の抑制、マネタイズによる一次産業活性化がなんとか成ればと思っております。

ジビエでも実験をやっていますか。意外と多くの分野で試しているんですね。
ただ、難しいだろうなあ。何より当事者にやる気があるかどうか。

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