盗伐に判決&広島にも盗伐業者
全国版のニュースにはなりにくいが、宮崎の盗伐事件で逮捕されたブローカーや実行犯の裁判の判決が徐々に出ている。
国富町の山林を討伐したことで逮捕された日向市の黒木林産の黒木達也社長に対して宮崎地裁は、27日に懲役1年執行猶予4年(求刑懲役1年6カ月)の有罪判決を出した。執行猶予が付くのか、と思ったが、そもそも罪状はスギ計20本(21万5000円相当)を(従業員に)伐採させたというものだ。
この現場は私も訪ねたところだが、一面はげ山状態で、ざっと数ヘクタール、普通に考えたら1000本近くは生えていたはず。しかも黒木林産といえば地元でも盗伐で有名な業者で、各地に被害地はあるから実際は数万本を盗んだはず。だが、立件したのは20本だけなのである。金額にして21万円ぽっちでは、執行猶予を付けざるを得ないのかもしれない。ちなみに黒木被告は即時に控訴した。
そして16日には、討伐するための伐採届や売買契約書を偽造した山林ブローカーにも判決が出ていた。西都市の鈴木英明に懲役2年執行猶予4年である。こちらの罪状は、スギ1318本(237万8000円相当)である。こちらの方が重い。
この本数の差が解せないのだが……。法律家に聞いたら、警察や検察がよくやる手だそうである。窃盗をたくさん立件するのは手間だからちょっとだけにしておくのだ。有印私文書偽造なら、本数は文書で処理できるから増えてもかまわない。
そして、昨日まで訪れていた広島県三次市。車で走っていたら目の前に巨大なはげ山が見えた。急斜面がごっそりと伐られている。草は生えているから、もう年月は経っているのかもしれない。
同行している地元の業者に聞いたら「あの業者は、勝手に伐って、文句が出たら賠償金払って済ますんですよ。その方が安上がりだから」とあっさり盗伐業者がいることを認めた。ただし、賠償金で済ますというのは、盗伐ではなく誤伐だと主張するということだろう。(ただし、国道沿いのよく見える場所だから、半分ぐらいは伐採届をとっておいて合法にしておき、越境する手口だろう。)
雨だったし、車が走っている最中だったので写真も撮れなかったが、きっと広島各地にあるだろう。
浮かび上がってくるのは、盗伐は宮崎だけの特殊事案ではなく全国で起きている事実だ。私はそれを証明したいと思っているので、事例を集めている。もし、何か具体的な盗伐現場を知っていたら教えてほしい。
本当は、林野庁がやる仕事だろ……。
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コメント
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悔しいですね。執行猶予。
投稿: いいねではないが、ボタンが無いので。 | 2020/01/31 18:33
執行猶予でも有罪です。
「捕まったら、あらいざらいぶちまけてやる」と警察に脅しをかけていたそうだから、ぜひ盗伐の裏側をぶちまけてほしいですね。さあ、県や業界団体との密約があったのか、政治家が蠢いていたのか、裏取引の実態を明らかにしてもらいたい。
投稿: 田中淳夫 | 2020/01/31 21:41