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2020/03/24

「油ヤシ記事」から考える林業の犯した愚

22日の朝日新聞の1面トップに油ヤシ問題の記事が掲載された。それは2面にも続く大きな扱い。1、2面をぶち抜く記事って、通常は大スクープのはずだが、内容的にはいま改めて新事実が出てきたような記事ではなく、知っている人は知っている、油ヤシプランテーションが熱帯雨林を食いつぶしている話である。
なぜ今、これほど大きく扱うのか。記事には「環境転換点2030」というロゴが入っているから、何かキャンペーンがあるのか。

Img001_20200324211401

ちなみにネットでは、こちら。ドローン映像まで載せている。また本紙記事より分量も長いし写真も多いようだ。紙面では省略した部分がかなりありそう。

この記事を書いたのは、神田明美記者。私は以前会ったことがある。たしかスウェーデン大使館だったと思うが、ブリーフィングの際に隣の席だったので少し話した。その際は、環境はともかく森林問題に興味があるとか詳しいようには思えなかったのだが、その後すぐにボルネオに行って、いきなり熱帯雨林問題を書き出した。その後、朝日環境フォーラムでも見かけたかな。

今回の取材先はインドネシアだが、幾度も通って熱帯雨林問題が得意分野ぽくなっている。潤沢な金と時間をかけて取材できて、デカい発表舞台もあって羨ましいという面もあるのだが、基本的にどんどんやってくれ、という気持ち。私はメジャーな情報は扱わない、手を引くというスタンスだから、この手の記事はお任せしたい。フリーランスは常にニッチを狙うのだよ。

ちょうどWEBRONZA「論座」にも、「パーム油の何が問題なのか?」という記事が載った。(これも朝日系の論壇だから、やっぱり朝日新聞あげてのキャンペーンか?)

 

ここで私の立ち位置を記すと、単にパーム油を批判し、企業を批判し、それを消費する市民を批判しても意味はないと思っている。その点は、Yahoo!ニュースに「グリーン・ライ(環境の嘘)をつくのは誰だ」という記事も書いたとおり。

パーム油は油脂としては非常に優秀で、ほかの植物からの油脂生産よりもマシな面がいろいろある。そして消費者はそれを求めているという点で、いくら批判しても空砲にしかならない。
また誤解もあって、油ヤシプランテーションすべてが熱帯雨林を破壊して開いたわけではないし、パーム油によるバイオマス発電も、本来は廃油(パーム油を精製する際に出た非食用部分)を燃料にするものだった。それなら問題にするほどのことではない。だが、現実には始まれば大量に必要となり、廃油だけでは絶対に足りなくなる。結局、食用油も含めて燃料にしてしまうのは目に見えるからケシカランのだ。
これは木質バイオマスエネルギーでも同じだ。本来は廃材や製材葛を熱エネルギーに変えて利用するものだった。ところが、熱より発電に傾斜し、さらに燃やすために伐採する、そのため補助金や割り増し電気代を出すという本末転倒の政策になっていることを批判する。

油ヤシプランテーションの問題は、油そのものではなく、経営の問題だ。労働問題など多方面にあるが、一つ上げよう。
油ヤシは植えて15~20年もすると収量が落ちる。だから植え替えるのだが、その際にやっているのは、これまでのプランテーションを放棄して、新たに天然林を伐り開いて(焼いて)土地を確保する企業が多い。その方が安上がりで簡単だからだ。老いて巨大になった油ヤシは伐採しても、その幹の搬出だけでも大変だし、処理が非常に面倒だ。すぐ腐って悪臭を放つし、使い道もない。目先の利益を追って森林を安易に消費している。

油ヤシプランテーションの拡大は、日本の拡大造林を連想させる。戦後、大造林を推進したが、もう植えるところがなくなったときに、造林政策を転換させずに、それならと天然林・里山林を伐って造林する土地を確保したのである。結果的に、不成績造林地を増やし、育林を放棄し、生態系も景観も破壊し、増やしすぎた人工林そのものが問題となった。そしていま、持て余している。
本来、造林ははげ山をなくし緑化と木材生産の両面で価値のある手段だった。だが手段の暴走が、造林と人工林そのものの価値を落とした。その愚を熱帯で繰り返しているように感じる。

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とりあえず取り組むべきなのは、新たに伐り開かず、プランテーション面積を今以上に増やさないこと。すでに農地としたところを持続的に循環させて再利用することだろう。それだけで、かなりの問題が抑え込める。そして生産量ではなく、商品の質を上げ価格も上げること。安すぎるパーム油は無意味な使い道を助長するが、高価格になれば生産量を伸ばさなくても利益は伸び、大切に使うだろう。

それは、日本の林業でも同じである。

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