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2020/03/22

小松左京『イッヒッヒ作戦』で知った森の奥深さ

新型コロナ肺炎の蔓延で、よく引き合いに出される小説が、小松左京の『復活の日』だろう。新型インフルエンザ(実は細菌兵器だった)のパンデミックで地球が滅んでいく壮大なSFだ。

私も、高校生の時に読んだシーンを覚えている。静かに、深く、インフルエンザが流行し、社会が、国が、世界が滅んでいく描写は鮮烈で、今も脳裏にいくつものエピソードが浮かぶ。映画化されて、後半の南極基地からの復活がクローズアップされた作品になってしまったが、本当は前半の病魔の描写がすごい。

が、実は私が小松作品ですぐに思い出したのは、短編『イッヒッヒ作戦』なのである。こちらは快作、怪作である。早くから気になっていたのだが、ようやく書庫から、この作品を収録している文庫本を見つけ出した。

Photo_20200322232201『最後の隠密』に収録

おそらく1960年代に執筆されたと思われるが、舞台は(おそらく)アフリカの独立間もない小国ボロボル共和国。そこに学術調査の下働きで訪れて居ついてしまった日本人“ジジ”(あだ名)が主人公であるが、このボロボルを併合せんとして隣国アリアリアが大国の支援を受けて侵略しようとしている。しかし人口わずか20万人のボロボルがまともにぶつかって勝ち目はない。国際世論も興味を示さない。

そこでジジは、この国で微生物を研究しているドイツ人のカールと策を練って、生物兵器作戦を展開するのである。

何をしたか。アリアリアの進軍コースにある砂漠とジャングルに、ノミやダニ、ダニ、ブヨ、蚊……などを撒いたのだ。さらに相手の兵舎に忍び込んで、給水タンクにアメーバ赤痢や寄生虫卵を放り込む。戦闘機の操縦席には水虫菌ときた。かくしてボロボル領内に入ってきた時には、アリアリア軍はボロボロ。全身疥癬にまみれ、下痢・嘔吐に悩まされ、すでに戦意ゼロ状態。そこに毛ジラミ爆弾を打ち込む……。

かくして戦わずして勝つ\(^o^)/。しかも、ボロボルのジャングルにはこれらの病気の特効薬があるので、この特許を押さえて、大儲けするのである。おかげでイッヒッヒと笑いが止まらない。

まさに『復活の日』のパロディのような小説だが、結構含蓄がある。何より森林には未知の微生物・病原菌がウジャウジャいること。その治療薬も同じ森林内にあること……そこに国際政治の裏側もひっかけてひねった、短編ながら怪作であった。こちらの作品も、深く私の脳裏に刻まれたのであった。

 

現在、世界中を悩ませている新型コロナウイルスの発生源はどこかわからない。コウモリではないかとかいろいろ言われているが、ようは自然界に昔からいた種が、人間が触れたことで変異を起こしたのか環境に過適応を起こし、爆発的に増加したのだろう。自然界のバランスを崩せば、どこかしらに異常が発生する。この小説では「ボルボロ領ジャングルのたたり」とされているが、コロナウイルスは何を人類に教訓として与えてくれるだろうか。
小松作品は、笑わせながらも「森を舐めるなよ」と教えてくれたと思っている。

 

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