農業と経済」誌に『絶望の林業』書評
まったく唐突に、20代の頃の飲み会の時に出た話題を思い出した。小さな出版関係者の集まりだったのだが、そのうちの一人が学生時代のアルバイトで勉強を教えていた女子中学生のことを話した。その女子は、その後高校を中退してしまったが、最近縁があって会ったら、未成年なのにヤクザの愛人になっており、ヤクづけになっていた……というのだ。
それだけでも衝撃の告白なのだが、へらへら笑って話しているので、「なぜ助け出す手だてをとらないのか」と詰問した。直接会って窮状を知ったのならやるべきことはいろいろある。薬物中毒に陥っているなら尚更だ。すると、その男は困った顔をして「いやあ、そんなに可愛くなかったから」と言い訳をしたのである。瞬間的に切れかけた。二度と口を利かなかった。
閑話休題。拙著『絶望の林業』の書評が出た。『農業と経済』5月号である。出版してから8か月。まだまだ忘れられていないようで、有り難い。
筆者は、北都留森林組合の中田無双参事。これまでの書評で森林組合の関係者が書いたものはなかったと思う。
しかし、「林業関係者の間でも「あの本はもう読んだ」とこれだけたびたび話題に上がる書籍」と紹介されているが、それは知らなかった。失礼ながら、直接の林業関係者はあんまり読んでいないのではないかと思っていた。
それはともかく、さすがに林業の最前線におられる方なので、“林業を諦めないで”という気持ちがにじみ出ている(^o^)。「著者が指摘する諸課題~~本気で熱意を持って取り組んでいけば必ず解決していくことができる」。そのうえで「この本は、著者から林業界への熱い叱咤激励の本」と持ち上げくれている。感謝します。今後の取組に期待します。熱意があれば、必ず解決するはずだから。
せっかくだから、COVID-19がなければゴールデンウィークに開いて、林野庁長官と対決したかもしれないイベントの場で、ぜひ言いたかったことを記しておこう。
私が絶望するのは、林業を取り巻く諸課題そのものではなく、諸課題を解決する意欲が関係者に感じられないことだ。諸課題を解決する手だては十分にある。複雑でも少しずつ解きほぐせばいつか解けると私も思っている。だが、誰も解決しようと思っていないこと。リーダーシップを取るべき人が取っていないこと。そこに絶望するのだ。そして問いたい。本当に森を愛しているのか、と。(私の見たところ、過半以上の林業・木材関係者は森を愛していない。興味も持っていない。)
森も “そんなに可愛くないから” 放置するのか?
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心配しないて下さい。山を愛している木材関係者は沢山居ます。そして今後残るのは、その者達だけです。
投稿: 山のオヤジ | 2020/04/14 23:41
ええ。森を愛し、真摯に向き合っている人はいます。ただ人数的には圧倒的少数でしょう。
まさに、大恐慌でも来て、生き残る林業者はふるいにかけられることを期待します。全員残す必要はない。
投稿: | 2020/04/15 10:23
強く共感すると共に、ふるいの穴からこぼれ落ちない様に精進致します(笑)量より質の林業時代が参ります。
投稿: 山のオヤジ | 2020/04/15 21:17
いいね!!!!(笑)
投稿: | 2020/04/15 23:21