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森と林業と動物の本

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2020/05/23

「日本の林業は日本社会の縮図」

「日本の林業は日本社会の縮図」。これは『絶望の林業』のあとがきの最後の言葉である。文字通り1冊の本の締めくくりの言葉。

これは、実はさほど早くから意識したわけではなく、あとがきを書いているうちにそういうフレーズが浮かんで、まさに最後に付け加えたのであった。
で、なぜこの言葉を今頃引っ張りだしてきたかと言えば、今日会った人に、ここを強調されたから(^^;)。

彼はコロナ禍の中、東京からやってきた。古くからの友人で、かつて彼もライターだった(優秀なルポルタージュも出版している)のだが、今は建設業界で働いている。そして、いうのだ。「建設業界もまったく同じ」と。『絶望の林業』で記した問題点の多くが当てはまるらしい。補助金づけから始まって、ブツギレの業界、労働者の安全問題、欺瞞の視察旅行……。

聞けば、視察旅行には、コンサルや業界誌記者も同行させて、自分たちは酒飲んで、名所旧跡見て回って、そしてそのコンサルか記者に報告書を書かせて提出するだけ。当然、コンサルは、自分の仕事に都合のよいように内容をでっち上げて書く。記者も業界批判はしない。それを視察の参加者は読むことさえしないという。視察報告書を専門に書くコンサルタントがいるとも聞いた。

たしかに林業界・木材業界も一緒かもしれない。業界誌記者は、絶対に視察を批判的に書かないだろう。そして視察者は、視察先で見聞きしたことを自身が実行に移すことはないだろう。

ともあれ、建設業界も不動産業界も、そのほかいくつもの業界が同じような状態だというのだから、日本社会って、どこに救いはあるの?

そして、言われたよ。第3部の「希望の林業」の項目はいらないね、と。希望より、最大級の絶望で締めくくるべきだった、と。(泣)。(泣)。

Photo_20200523232701

やっぱり、続編は『超絶望の林業』かなあ。

ところでネットに最近書かれた、『絶望の林業』の書評も見つけた。こちらもある。今でも読んで、書いてくれる人がいることに感謝。

 

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書評・番組評・反響」カテゴリの記事

コメント

この国がここまでダメになったのは最近の問題ではありません。
戦後この国が豊かになりだした時から始まったのです。戦後海外からの救済で取り組んだ国の復興の時代ではよかったのですが、経済が復興し国の財政が豊かになりだした途端、この国の問題が再発したのです。国の各省庁の仕事が予算の分捕り合戦に終始し始めたのです。
まともな国は予算より決算が重視されます。税金がいかに使われたのかの結果が大事なのですが、この国は決算などほとんど関心がありません。つまりはいかにごまかしてでも予算を取るかが能力があるかの判断基準となります。
林業では林野庁が予算を作ります。そして林野庁のほとんどの仕事は来年の予算をどうするかです。去年より少しでも増やそうとします。長期的に林業をどのようにするかなど関心はないのです。その時のトレンドで予算が通りやすい名目を作りいかに財務省と折り合いをつけるかのみです。
毎年の予算時期に予算折衝と称する行事をマスコミも含めて大々的に報じています。このことがこの国をいかにダメにしているかを分かっていないのです。予算は形式的な見直しが3年ごとにあり、その時々に名前を変え目新しさを捻出しますが、どんどん内容は悪くなっていきます。
今の国は政策があって補助金があるのではなく、補助金のための政策なのです。
予算に比べ決算は全く話題にもなりません。この国がダメになっていく理由は根本のところにあるのです。ごまかしの予算案を能力なしの財務省の主計局が審査するのですからどうしようもありません。そしてどうしようもない予算により税金が使われその結果を誰も見ない。つまりはこの国は単に短期的な税金の配分のみを望んでいることにあります。それによりどうなったのにはどうでもよいのです。それが海外の国との大きな違いです。そして結果じり貧となっていくのです。

そうですね。各業界の問題点も、最近生まれたものではなく根っこを見ると何十年も前からあったもの。それが近年顕出したにすぎません。

予算も、目標なとなしに金をばらまくために組んでいると言ってもいい。それが役に経つ立つ立たないなど、官僚は興味を持っていませんから。自分の任期中の実績づくりじゃないですか。その澱が溜まって、国が劣化していく。

たしかに決算を厳しくして、効果が出なかったものは来年度から打ち切りにし、それを提案した官僚を左遷したら、少しは緊張感が出るかもしれませんね(笑)。

その補助金の為に、同じ場所で5年毎に行われる公社造林間伐事業。高額な単価の為に50%に近い搬出間伐を指導する森林組合。誰も後に続く者の事や治山の重要性を考えずに、今の儲けだけに走る事が多い様に思われます。作業する者も、機械代や従業員の支払いに追われ未来を考える暇もありません。そう、戦後高度成長期に向かう中で、植林しておけば何とかなると言う無責任な計画の結果が出て来ている訳です。生産過多の現状を解消する事が、この時代に生きている者達の使命になると思います。考えましょう。行動しましょう。何度刈っても、したたかに延びる植物の様に生き抜きましょう。…しかし、草刈りには疲れますわ…

田中淳夫様

 ご無沙汰しています。谷です。
 官界と業界とメディアの癒着関係に深く同意します。小生は、要は、楽屋と舞台の関係が日本では際だっていて、舞台上の芝居がおおやけになるのだが、実際の社会活動は楽屋で行われる、という二重構造が顕著で、それのあぶり出しが重要だと思います。
 黒川東京高検検事長の賭博常習行為を背景とした辞職に関しても、政治的態度を異にするやにみえる産経と朝日の両新聞の社員と取材相手の黒川氏が「楽屋」で親しく雑談しながら、紙面という舞台では自社の観客におもねった内容を披瀝する、茶番を演じていたわけです。官房長官記者会見でも、記者クラブという楽屋があることで、記者会見という舞台が茶番になっていることが明らかになってきました。
 いずれにせよ、舞台裏の楽屋を含めた会話・議論・判断が必要です。「絶望の林業」の内容に賛否両方があると思いますが、楽屋に踏み込んでいただいた重要性は指摘したいと思います。


コロナ禍でもっとも大きな教訓は、国に期待してはダメということではないでしょうか……。

といっても政府だけが悪いのではなく、日本社会全体の宿痾が浮かび上がってきました。
黒川問題にしても、自粛要請下に賭麻雀という馬鹿げたこと以上に、新聞記者が相手というのが情けない。
もし私が参加するなら、麻雀卓を囲みながら黒川氏にインタビューし、翌日の新聞ですっぱ抜いてやるのに(笑)。それができない時点で記者失格です。

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