Y!ニュース「輸出木材の保管費用もコロナ禍対策…」を書いた裏事情
Yahoo!ニュースに「輸出木材の保管費用もコロナ禍対策?輸出拡大をめざす農林産物の怪しげな内容」を執筆しました。
実を言えば、最初に問題視したのは有林水産物の輸出額を5兆円へ! の方だった。ただ農業や水産業は専門ではないので、Yahoo!ニュースにはどうするかな、と迷っていたところに「コロナ禍対策に輸出木材の保管費用」の項目を発見。
これは昨年の日本農業新聞の記事と合わせたらイケる、と踏んだ次第。
もともと統計の数字なんぞを読み取って分析するのは苦手だったはずなのだが、『絶望の林業』を執筆する際に七転八倒したので、少し馴れたかな。デスクワークでできる貴重な実証となるし。せっかくだから図表を。
同じ縮尺にしたら、5兆円が飛び抜けるので、多少変形してある。まあ、馬鹿げた目標値だねえ。
改めて林産物の額の小ささを実感。目標の中でも4%くらいしか占めない。ただ水産物の輸出額や内訳までは手が回らなかった。そこは残念。
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以前輸出についてコメントした者です。田中さんならこの補正予算についてコメントすると思っていました。私もこの10億円は以下三点の理由で近年まれに見る愚策と感じます。
1. 田中さんご指摘のように4月になった時点で誰も困っていない用途限定で予算をつけてしまったこと。直接林野に確認しましたが国内向けの費用にも輸出する製品保管費用にも使えないとのことです。
2. 市場原理を大きく歪める結果になるだろうこと。この助成の目的は「商流の維持」とあります。確かに2月3月の一時期、COVID-19によるロックダウンにより輸出先の中国で貨物が滞留しましたが、中国の事情を理解し中国のCOVID-19への対応を見ていれば、事実の積み重ねから何が起こるかは類推できました。つまり今回助成を受けるのは、商売センスがないトレーダーの商流です。みなリスクを取り勝負している。その市場で自身の怠慢により発生した費用を税金で10億円も拠出し補填するのは私は理解できません。
3. 国が丸太を輸出することに直接税金を投じること。私の知る限り世界的にも珍しい行為です。一方ではお題目のように「付加価値」と唱える中、これまで市場原理にのっとって商売が行われていたことを国が税金を投入してバックアップする。
まったく絶望感しかありません。
投稿: シュンスケ | 2020/05/08 23:50
ありがとうございます。ホント、なんでこんな愚策をこともあろうにコロナ禍対策で出してくるのか不思議です。
木材需要が落ちて雇用が危ないのなら、たとえば育林で仕事をつくるのならまだしも、なぜ輸出原木なのか。
政策立案能力が、これほどないとは。。。
もちろん根本的に、商取引に国が税金を投入すること自体がおかしいですが。
投稿: 田中淳夫 | 2020/05/09 09:54
怠慢で商売センスは無いけれど、役所に圧力をかけるチャンネルは豊富にある、なんていう人がいたりするんでしょうか。
そして役所は世の中に必要とされている事が何かを知るのに、そういう圧力をかけてくる人しか窓が無い、とか?
投稿: ジャーマンスープレックス | 2020/05/10 09:25
まったくの想像ですが、ロビー活動した業者がいるのでしょう。そして、何か対策を考えないといけない担当者が3月ぐらいの現場を訪ねて、これは使えるな、と思ったのではないか。いや現場を訪ねてもいないかもしれない。移動が制限されているだろうし(笑)。
自分で考える能力がないと、周りの人の意見を丸飲みしてしまうものです。首相が典型ですが。
投稿: 田中淳夫 | 2020/05/10 10:06
本件、巡り巡って国内産業向けの丸太費用にも適用されることになりましたね。あまりに現実離れかつ国内の需要減退の影響の方が大きくなり方向性を修正した形になりました。
結果としてはよかったのですが、元々ロビー活動があったのかと思いきや、そうではなかったようです。
投稿: シュンスケ | 2020/05/31 00:54
どうも内情を伺うと、林野庁内でも部署が縦割りで、「コロナ禍対策を考えろ」と命が下ったものの、国産材の担当者にアイデアは出ず、たまたま木材輸出担当者が思いついた案だけを採用した、というところでしょうか。そこに横の連携はなく、木材輸出だけが突出した支援を受けることになった……。
まあ、後追いで(業界内の批判もあって?)国内の在庫対策にも適用することにしたのではないですか。
投稿: 田中淳夫 | 2020/05/31 09:30