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森と林業の本

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2020/06/02

所有者不明土地に関する「管理措置請求制度」って何?

妙な制度を目にした。「管理措置請求制度」。知っている人はいるか?

所有者不明土地に関する項目で、民法の改正に向けて法務省が新設を目論んでいるらしい。現在はまだパプコメ対応しているところだが、そんなに遠くないうちに現実に決まるのではないか。

所有者不明土地問題は全国の悩みだが、とくに山林に関してはやっかいだ。宅地や農地以上に持ち主も、境界線もはっきりしない有様だから、今後の施業などに大きな影響がある。そこで考えられている「管理措置請求」とは何か。

中間試案はこんなもの。

例に上げられているのは、現在使用されていない隣地における崖崩れ、土砂の流出、工作物の倒壊、汚液の漏出、悪臭の発生その他……などにより、自分の土地に損害が及びそうなときは、隣地の所有者にその問題事由の原因を除去させ、または予防工事をさせることができる、というもの。で、やらないとこちらでやってしまうよ、という規定らしい。

適用するのは、隣地の所有者に対して問題原因の除去または予防工事をしろと通知したにもかかわらず相当の期間内に異議がないとき、あるいは隣地の所有者が誰かわからず、その所在も知ることができない場合、公告をしてそれでも相当の期間内に異議がないとき……だ。

一方で「急迫の事情があるとき」という項目もある。この時はさっさと問題撤去ができてしまう。

この急迫の定義がわかりにくい。典型的事例として挙げているのは、暴風により高い位置にある隣に繁る樹木が傾いて、自分の土地に向けて倒れそうになっているなど危険な状態になっているとき……などが考えられるているようだ。裁判などの手続きを踏む余裕がない場合である。

問題は、その措置をとる費用だ。これは、隣地所有者の負担とするとしつつ、条件次第で減額する可能性とか、そもそも折半する……などの案が出ている状態でどんな形にするか、試案では決まっていないみたい。ただし、所有者が不明だったのなら、実質的に費用を支払わすことは無理ではないか。見方を変えると、全部費用を自分が被る覚悟があれば、隣地を勝手にいじってもよいということを法律で認める制度と理解することもできる。

いずれにしろ、山林の所有者不明土地では、この制度、何かと使えそうだ。逆に言えば、勝手に使われてしまいそうな山林所有者にとっては恐いかもしれない。何十年ぶりに山を訪ねたら「急迫の事態だった」という理由で伐採されているかもしれない。本当に所有者不明、連絡先がわからなかったのか、ちゃんと調べたのか、ということを証明するのも大変だが。

現在の所有者不明土地問題を多少とも解決するためには、こんな制度も必要なのかもしれない。でも、役人(おそらく市町村)がこの制度を知るのに時間がかかりそうだし、内容を熟知して適切に運用するのは大変だろう。わからぬまま許諾をだしたら恐い。

またまた現場に負担をかけそうだ。やはり専門家を置かないとなあ。

 

 

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