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森と林業の本

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2020/06/24

除草剤を巡るアレコレ

私は、農薬や除草剤を嫌う人は、喫煙はもちろん胃薬も風邪薬も頭痛薬も飲むな、と言っているんだが、こんなニュースが飛び込んできた。

カリフォルニア州サンフランシスコの裁判所は、独バイエルなど3社が発売したジカンバを使った除草剤について、登録を無効とする決定を下した。多くの農家は、この除草剤の散布を前提に、ジカンバに耐性を持つ遺伝子組み換え作物の作付けを進めてきただけに、突然の決定に大混乱に陥っている。

こうした記事が世界中に配信されると、おそらく除草剤や遺伝子組み換え作物の反対派は「見ろ! アメリカも除草剤禁止に舵を切ったぞ」と狂喜乱舞するんだろう。ちゃんとニュースを読まずに……。ちなみにバイエル社は、モンサント社を吸収合併しているのだが、今はもう存在しないモンサントの名を連呼するのも反対派の特徴(笑)。

もともと、この除草剤は、スーパー雑草対策として開発された。アメリカでは、農家がグリホサート系の除草剤(だいたい「ラウンドアップ」ですな)を使ってきたことで、2000年代に入るとグリホサートに耐性を持つスーパー雑草が次々と出現していたのだ。
そこで「スーパー雑草」に対抗する「スーパー除草剤」としてジカンバ系の除草剤が登場したわけだが、この薬剤、周囲に飛散しやすい。そのため散布した周辺の農地で作物がどんどん枯らしてしまうという事件が多発したわけである。この被害に対する裁判となり、登録抹消、つまり新たに売買できないようにしたわけ。この除草剤が人体に危険なのかどうかは別問題で、私にもわからない。

ちなみに、ほかにもスーパー除草剤はいくつかあるので、そちらはどうなるかよくわからん。すでにほかの除草剤をつくっている会社の株価が高騰しているという情報もある。
むしろ問題は、アメリカ産農産物の収穫量に対する影響だろう。大豆や綿花のジカンバ耐性品種のシェアは約6割に達するそうで、その畑の雑草対策が上手くいかないと収穫量が目減りする恐れがある。今度は穀物メジャーの株価が変動するだろう。

付け加えておくと、私は除草剤を無害だ、危険性まったくなし、というつもりはない。ただ人体に対する影響や残留性の問題は、ほぼクリアされている。地下水にも浸透しないし、多くの種類は数週間で分解して効力がなくなる。
ただ憂慮すべきは、生態系への影響だろう。この点は、私も相当ていねいに対応すべきと思っている。今のところ目に見える被害は出ていないが、将来的に新しい危険性が出現する可能性がゼロとも言えない。だから慎重に使うのに越したことはない。風邪薬だって飲み間違えたら体調を悪化させるだろう。

以前、超微量の化学物質が、動植物にホルモン剤と同じように働くという「環境ホルモン」公害が一世風靡したことがあった。しかし、結果として事例のほとんどが否定された。今や死語になっているが、また同じことが指摘されるかもしれない。

林業地の造林後の下刈りでも、除草剤を使うことへの反対が強いが、日本以外の国では普通に使っている。それを嫌がるのはかまわないが、代わりに人力に頼り、過酷な労働を低賃金でさせることを前提に考えるのがよいことなんだろうか。人手が足りないから、外国人労働者を入れるという動きもイヤらしい。

ようは雑草の対策法の一つとして除草剤は、使う量や散布の仕方、時期……などを見極めるべきなのだ。アメリカのように飛行機やドローンで散布するのは、やっぱり気色悪いね。周囲に飛散するから必要量をはるかに越える量を撒くし、隣の作物を枯らすこともあるだろう。

さて、アメリカ産大豆や綿花の価格が、来年以降、高騰するかもしれない。文句言わないように。

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