ロボットのプロトタイプはSFにあり
最近、NHKの深夜でアニメ「未来少年コナン」が再放送している。1978年放映のテレビアニメだが、宮崎俊が演出をしていたことから改めて注目を集めているようだ。
さて、それを見ていて気がついた。当時、乗用型の土木機械、いやロボットが登場していたのだ。
ようは人間が乗って操縦して動かすロボット。鉄腕アトムのような人工知能AIによって自分で考えて動くロボットではなく、また鉄人28号のような遠隔操作でもなく、人間が乗るものの車両型の重機ではなく二足歩行し、人間のように腕を動かすことで、現場の複雑な条件にも対応できるという設定。
この手のより具体的なロボットとして登場するのは、映画『エイリアン2』のパワーローダーだろう。コナン版とよく似て乗用で操縦する人間型重機といったところか。これでエイリアンと戦った。さらに映画『アバター』にも登場していた。
このパワーローダーを映画で見て、実際に作ってみようとした人たちがいる。それが株式会社ATOUN。そこで林業にも使える「着るロボット」を作っていることは、私も記事にした。これは山登りが楽にできるものだ。
この会社の発表会があったので行ってきた。
そこで見たのは、こんなもの。まずはプロトタイプNIO。パワーローダーそのものだ。まだコクピットはないけれど。こちらは「着る」のではなく、まさに装着してロボットに歩かせ人間のパワーを増大させる機械だ。これは100キロの荷物を持ち上げることもできる。巨大重量物を運搬できるから、建設現場だけでなく、災害現場でも使えそう。ただし操縦は難しくて、ニュータイプでないとなかなか習熟できないというのだが……。こちらはガンダムの影響?
さらに見つけてしまった。林業用ロボットTABITOを。
急斜面をすいすい登り、重量物を運搬できるのだ。実は林野庁と組んで開発中。甲冑みたいに身につけ、足の力を増大させて急斜面を登れる。しかも背中の荷物の重みも下に逃がすから重くない。
ただTABITOくんは、まだ18キロあるらしくて、凸凹斜面を歩いたらバランスをとるのが難しいらしい。。。。ここにもニュータイプ人材が必要だ。ロボットより人間を進化させねば。
ATOUNでは、SCI-FIプロトタイピングという理念を打ち出している。サイエンスフィクション(SF)のアイデアを現実に、という発想だ。まさにコナンやエイリアン2で出たアイデアの実現を目指しているわけである。
これは、現在の科学技術を少しずつ改良したり進展させて新しいものを発明する(フォアキャスト)ではなく、先に遠い目標を設定してから、そこにたどり着くように今を進むバックキャストの手法である。その目標にSFを採用するのだ。
そこで、はたと思いだした。実は、60年前に同じことをやった科学者がいたことを。アメリカのラルフ・モシャーだ。軍用ロボットを作っていた男である。ちょうどテレビでも紹介されていた。
1960年代に、装着型ロボットを開発し、人が重いものを持ち上げられるようにしたのだ。アイデアは古くからあったわけだ。現実はSFよりも早かったのか。モシャーのアイデアの元に何かSFがあるのかもしれないが、最初に思いついたのは誰なのか今となってはわからない。
ただし、モシャーのロボットはものにならなかった。巨大な腕は700キロもあって、とても装着して動けないから。当時の技術では軽量化も馬力増もできなかったのだ。しかし今なら……強力な電池と軽量マテリアルを駆使したら、かなりの線まで行くかもしれない。
とはいえSFの世界の実現をめざすのなら、もっとエネルギー源と素材を革新する必要がある。現在のリチウム電池では、まだまだ力足らずのように思えるし、もっと小さく長持ちさせてほしい。常温核融合による原子力電池……とかなんとか(笑)。素材もチタン以上に軽いものが求められるかも。炭素繊維やセルロースナノファイバーも候補だろう。SFだったら、架空の技術や素材が登場させられるのだが。
大風呂敷を広げないと、革新的イノベーションは起こらない。
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