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森と林業の本

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2020/06/30

民間地の生物多様性認証制度の創設?

環境省が、景観や生物多様性などを長期的な観点で保全するための認証制度をつくろうとしているらしい。

ここでポイントなのは、対象は民間所有の森林・土地であること。国公有地はすでに保護制度をかぶせているところが多い。国立公園のほか森林生態系保護地域だの原生環境保全地域だの、いろいろある。だが、そうした法的な枠組に入っていない森林や里山を当てはめることを想定しているようだ。そのための認証の基準や選定方法などをこれから検討していくのだという。

今年度から候補となる森林や里山に関して動植物の生息や景観の実態を調査し、2022年度から運用を始める予定だ。

もっとも、まず民間所有の森林などが、どこに、どれくらいあるのか、その管理状況を把握するところからスタートするらしい。日本には企業や個人のほか神社や寺も森林などを所有しているところが多いし、共有地などもある。環境省としては、これまで目を向けなかったそうした地域の自然保護を強化したい考えだ。そして認証地をつなぐネットワークを構成して生物が移動できるようにし、健全な生態系を保存したいという。

しかし調査方法も難しいし、認証基準や選定方法についても決めねばならない。しかし民有地となると、私権の制限につながるのかどうかも大きな課題になるだろう。とくに林業地などはいかなる判断をするのか。仮に現在の環境が素晴らしいと認定した後に、伐採できるのか。あるいは里山のように、水田や畑を始めとする農業地も含むと、常に人の手を加えることで維持される自然となると、単に「保護する」では済まない。それこそ農薬や除草剤の使用方法まで考えねばならない。
さらには森林認証制度との兼ね合いも出てきそうだし……なかなか前途多難な様子が目に浮かぶ(^^;)。

有識者や海外の事例を元に決定するそうだが、そもそも民間所有者が積極的に認証を取りたい、と参加を促すには、メリットがないと進まないだろう。むしろ認証を取得できない森林は二流のレッテル張られるぐらいでないと前向きにならないのではないか。
ただ、トキやコウノトリの保護のために里山を保全する自治体の条例もあるわけで、不可能ではないだろう。むしろ市民の意識を高めなければ効果を生まなくなりそうだ。

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タンチョウヅルのいる里山の風景も候補、かも?


その背景を探ると、国際的にも、法的に保護された区域以外の場所でも動植物や景観を守らないと全体の生態系を維持できないという考え方が広がっているらしい。それを日本に取り入れようというわけだ。

実は、日本の愛知県で開かれた生物多様性条約会議では、2010年より10年間の目標を定めていた。いわゆる「愛知目標」である。20もあって複雑なので、リンク先で見てほしい。ただ今年が目標の最終年となっているため、次の締約国会議では、新たな目標が議論される。そこで民間所有の自然の保護を入れることになりそうなのだ。環境省は、先んじて認証制度を創設して、国際的にアピールしたいのだろう。

さて、どうなるか。民間であろうと森林は公共財であり、社会資本であるという見方に立てば、何らかの枠組は必要だ。それを認証制度の形で行うのが適切なのかどうか……イヤなら参加しないだけ、とはならないか。

ともあれ、環境省が意欲的に取り組むのなら期待して見守っていきたい。

 

 

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